更年期世代のメンタルケア

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

更年期症状に、ストレスは大敵とされています。長引く「コロナ禍」に更年期症状が重くなったように感じる女性が50%もあったという調査結果も出ています。更年期症状の原因となる自律神経の乱れは、ストレスが加わることで悪化する可能性があります。そこで今回は、更年期世代のメンタルケアについてのお話です。

コロナ禍の更年期事情

更年期と閉経期を合わせて「メノ期」と呼びます。日本人女性の閉経年齢の平均は約50歳。働く女性およそ3000万人のうち、45歳から54歳のいわゆる「更年期世代」はおよそ4分の1を占めます。
一方で2020年自殺者数では、無職の女性は微減、男性は職の有無に限らず減少しており、働く女性の自殺増加が顕著でした。

そうした中、株式会社協和では2020年9月に20~60代の女性681名(うち更年期世代の40~50代が75.6%)を対象に、コロナ禍での更年期症状に関してアンケート実施しています。
その結果、更年期による継続した不快症状があると答え方は71.5%。そのうち2人に1人が「コロナ禍により更年期による不快症状が重くなった」と答えています。

女性ライフクリニックの院長で産婦人科医の対馬ルリ子先生は、
「コロナ禍の影響で、取り巻く環境が悪化し、更年期の症状がひどくなっている女性が増えています。特に、不眠、尿漏れ、便秘、頭痛、肩こりなどの症状を訴える人の増加が目立ちます」
主な原因はコロナによる『ストレスの増加』です。人の体は過度なストレスにさらされると、一時的に女性ホルモンの分泌が減少してしまいます。すると、自律神経が乱れ、更年期症状で見られるような体の不調を招くことになるのです」と警鐘を鳴らしています。

更年期世代のメンタル不調

医師で予防医療スペシャリストの桐村里紗先生によれば、
更年期の女性ホルモンの変化は、気分の落ち込みや不安感の一因となる可能性があります。メンタルの安定に欠かせないセロトニンの分泌をサポートする女性ホルモン・エストロゲンの分泌が低下し、自律神経のバランスが崩れることで、メンタルも落ち着かなくなります。
加えて、これまでできたことができなくなる、心身の衰えを感じるなど、ネガティブな変化が訪れることで、メンタルを直撃します。

更年期によく見られるメンタルの不調

では、「更年期うつ」「更年期ブルー」とさえ言われる症状はどういったものでしょうか。個人差はありますが、代表的なものは

気分の落ち込み/意欲の低下/集中力の低下/食欲の低下/不眠/漠然とした不安/自信の喪失・・・などです。

先の桐村里紗先生は、

「多くの人は、自分の内側よりも外側ばかりに目を向けています。でも、心の変化を感じたら、その心の声に耳を傾けてみてほしいのです」と以下のように教えてくださっています。

◆感情のゆらぎ
更年期のはじまりの数年間は、ホルモンのアップダウンが感情をアップダウンさせる可能性があります。

喜んだと思ったら、次の瞬間は怒りや不安、苛立ちへと変化する可能性があります。感情の変化に、自分も周りもついていけなくなり、摩擦を生むかもしれません。
特に、感情をぶつけやすい家族に対して、ひどい言葉を投げかけてしまって後悔したことはありませんか?
でも、それは自分の本心ではなく、女性ホルモンの影響による一時的な感情のゆらぎかもしれません。

◆抑うつと不安
女性ホルモンの変化は、メノ期に起こりやすい抑うつや不安感の原因になっているかもしれません。本格的なうつ病や不安神経症と区別がつきにくいものですが、特定の理由がないのに精神的に不安定になる原因は、メノ期の場合、女性ホルモンの変化かもしれません。

ホットフラッシュなどの更年期症状は、自律神経の乱れによって起こります。自律神経の乱れが、精神的な乱高下の原因になり、不安定さにつながる可能性があります。
また、身体的な更年期症状も気分に影響を及ぼす可能性があります。自律神経の乱れや不快な症状によって、不眠にもなりやすく、不眠が原因で抑うつやイライラに悩まされることもあります。

更年期の女性ホルモンの乱高下が終わり、閉経期となると、女性ホルモンが低値のまま安定します。自律神経の乱れによる精神的なアップダウンからは解放されるでしょう。
ただし、女性ホルモンは、不足すると抑うつ的になるセロトニンの分泌を後押ししているホルモンです。女性ホルモンが低値になることで、気分が低空飛行のまま上がらなくなってしまうこともあります。

メンタル不調のケア方法

体の変化だけでなく、さまざまなストレス要因が重なりがちな更年期世代。精神的な症状を重くしないために、日頃から意識できることはあるのでしょうか?

東京歯科大学 准教授 市川総合病院産婦人科 医長の小川真里子先生は、「女性ホルモンを増やしたり、閉経を遅らせたりすることはできませんが、日々の生活のなかで、ストレスに上手に対処したり、メンタルの不調をやわらげたりすることは可能です」とおっしゃっています。また、

 いちばんに押さえておきたいポイントは、無理をしないことこの世代は、どうしても頑張ってしまう人が多いように感じます。年齢的に責任も大きくなり、仕事が面白くなる時期でもあるので、つい朝から晩まで働いてしまうようなこともあるでしょう。ですが、体調によってはフレキシブルに働ける勤務体制を整えたり、仕事量を減らしたり、無理のない働き方を考えるようにしたいですね。

 家族や身近な人の理解や協力を得ることも大切です。更年期に入って急に何も手につかなくなってしまい、例えば、毎日の献立が考えられない、家事ができない、なんてこともよくある話です。そんなとき、『疲れたよね』『今日はやらなくていいよ』と声をかけてくれる家族や、まわりのサポートがあると、ぐっと心が楽になるはずです。

 また何かあったときすぐに受診できる、かかりつけ医を持っておくこともおすすめします。信頼関係があれば、ちょっとした悩みやストレスも話しやすくなります。人生の心強い味方だと思って、頼るようにしてください」

 更年期を中心に女性の健康にまつわる情報を発信している『日本女性医学学会』のサイト https://www.jmwh.jp/ では、全国の専門医を検索することができるので、参考にしてみるといいかもしれません。

さらに小川先生によると、最近人気の「推し活」など、趣味や好きなことに時間を使うことも、メンタルケアに有効なのだとか。「自分のために時間を使い、喜びや幸せを感じることは、精神を安定させるホルモン、セロトニンの分泌を促すことにつながりますただし、『趣味を探さなくちゃ』と、頑張ってカルチャースクールに通いはじめ、そこでの人間関係に逆に落ち込んだりする人がいるのです。やりたいことがあればやってみる、くらいの気軽な気持ちで十分。無理をせず、楽しむ時間を増やすことを意識してみてくださいとのこと。

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以上、エゴレジ研究所から更年期世代のメンタルケアについてご紹介しました。ストレスが大敵である更年期世代の女性にとっては、ストレスをためないこと、ストレスを長引かせないでしっかりリリースすることが大切です。まず、日々の生活で無理をしていないか、頑張りすぎていないか、見直してみましょう。そして、日常生活で少しでも気づいた不調があれば、ひどくなる前に医療機関で相談することも選択肢に加えてください。また、漢方処方やアロマによる症状緩和も検討の余地ありでしょう。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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