代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
人の健康管理において「水」は大切な役割を担っています。成人の体は約60%が水でできています。特に脳は、80%が水分です。そのため、水を飲むことで、脳の働きの活性化や老化予防ができるのです。水を飲むと30秒後に血液に届き、そして、1分後には脳に届きます。つまり、水が一番先に行き着くのは、体にとって一番重要な脳なのです。それだけ、脳は水を必要とするのです。今回は脳の活性化に効く水の科学的な研究結果を紹介し、水を飲むこと(水分補給)の健康効果についてご紹介します。
水分と脳の関係
水分摂取と脳機能の関係は非常に密接していると言われています。一般的には、身体の水分量の2%ほど低下したら、のどが乾くと言われています。多くの人が「のどが乾いたら水分摂取をしよう」と考えるのではないでしょうか。身体の水分不足は、もちろん集中力や記憶力の低下はもちろん、覚醒状態にも影響を与えてしまいます。そのため、のどが乾いたら水分を取ろうとするのは、生命維持のために重要なサインを脳が出しているということがわかります。
では「のどが乾いたら」というタイミングははたして適正なタイミングなのでしょうか?
のどが乾くという「2%の水分量」の消失は、どのくらいでしょうか。
60kgの人で考えたら、なんと約720mlの水分量になるのです。つまり、のどが乾いたと感じた時は、720mlの水分が足りなくなっていますから、水分を取ってくださいと脳が急いで私たちに教えているということになるのです。
一般的は、この2%程度の水分消失では、一気に集中力の低下が起きていると言われています。この隠れ脱水の状態を避けることが、思考力や集中力・記憶力の維持と向上に非常に大切なことだと言えるのです。
水分補給の知的パフォーマンス研究結果
科学誌『Frontiers in Human Neuroscience』に掲載された研究(2013)があります。
イースト・ロンドン大学とウェストミンスター大学の研究者たちは、次のような実験を行いました。
まず成人34人のボランティアに水を飲ませず一晩過ごしてもらい、翌日の朝、その実験参加者を二つのグループに分けて、片方のグループにだけ水を飲ませてから、全員に知的作業を行わせました。
知的作業に集中する前に約0.5ℓの水を飲んだ人は、飲まなかった人と比べて、14%反応時間が速くなることを発見しました。のどの渇いた人に対して、この実験を繰り返したところ効果はもっとはっきりと見られました。
「わずかな水分不足も、わたしたちの知的パフォーマンスに影響を与えています」と、研究グループのリーダー、キャロライン・エドモンズはコメントしています。これは、私たちがまだ水を飲みたいという刺激を感じていないときでもあてはまるそうです。
また子供の場合はその結果はもっと顕著に表れ、水を飲むことで大人よりもさらに記憶力と集中力を向上させたという報告もなされたようです。
脳が働き続けるためには、私たちにとって欠かせない、基本的な物質である水が必要なのです。
「水分補給」のしかた
人の体はそれぞれ異なり、その活動レベルによっても異なるので個人差はあります。日本では、一日に摂取する水分量は「体重×0.3」くらいを目安に食事以外の食間に飲むよう心掛けることが推奨されています。
水分補給が目的なので、カフェインを含まないものが望ましいようです。また、一気に飲むと、吸収されずにすぐに排泄されるので、飲むタイミングを考え、コップ一杯程度をゆっくりとこまめに摂るのがいいとされています。大切なのは、一日を通して十分な水分補給ができていることです。
よく「お茶を大量に飲んでいるから大丈夫」とか「水の代わりにコーヒーを飲んでいる」と言う方もおられますが、 脳のためを考えて行動するなら水分補給は水そのものを摂取することをおすすめします。なぜなら水以外の飲み物の場合、水分補給という点では問題はないのですが、さまざまな成分が溶け込んでいるため、体内で消化・吸収するのに時間がかかり胃腸への負担もあるからです。またスポーツドリンクや清涼飲料水を摂取しているという場合も大量の糖分や添加物が含まれているためあまりおすすめはできません。
どちらかといえば、おススメはミネラルウォーターや炭酸水。
ミネラルウォーターには、ストレスで緊張し固くなった筋肉をほぐしてくれるマグネシウムや、イライラを鎮めてくれるカルシウムなどのミネラルが含まれています。
炭酸水には血中二酸化炭素の濃度を上げる作用があり、それにより体内の疲労物質が減るといわれています。また炭酸水に含まれる二酸化炭素は副交感神経に働きかけて、私たちをリラックスさせてくれます。
併せて参照ください。
「飲む水」「聞く水」「見る水」…お水のお話あれこれ | 神楽坂女子倶楽部|「遊び」×「学び」×「自分磨き」 (kagujyo.info)
水分補給の健康効果
◆脳の活性化
脳の機能がきちんと働くためには、適切な水分量が必要となります。脳の細胞には、水分とその他の必要な要素が、絶妙で正確なバランスを取っていることが大切なのです。
まずは、朝起きた時の一杯の水。脳が最も水分を欲しているのは、1日のうちのこの時間。7~9時間の睡眠後、汗をかいていなかったとしても体の水分は失われています。深く呼吸するたびに水分が逃げ、それらが積み重なることで朝の脳は水分不足になってしまうのです。朝、水を1杯飲み脳の働きを最適化しましょう。
◆集中力アップ
水分不足を一番に察知するのは脳です。そうなると、脳は資源を保持しようとするため、注意力がなくなります。記憶力も鈍くなるでしょう。物事に集中するのが難しくなり、刺激に素早く反応できなくなります。
できれば水は45分ごとに少しずつ飲みましょう。注意力が持続するのはこのくらいの時間だからです。
◆感情のバランスをとる
水には気持ちを穏やかにしてくれる「鎮静効果」があります。なぜなら興奮して脳に集まった血液を、胃や腸に流してくれるからです。それによって緊張した心や身体がほぐれていきます。
また水を飲んで老廃物を体の外に出し、基礎代謝を上げることにより新陳代謝もよくなります。すると自律神経が整い、気持ちも穏やかになります。水をこまめ飲むことで、細胞は活発さを維持し、ストレスや不安感を抑えるような良いバランスを保つことができます。
◆睡眠の質を高める
寝る前にグラス1杯の水を飲むことで、夜中に目が覚めてトイレに行きたくなることがあるかもしれません。しかし、この簡単な習慣に慣れることが大切です。寝る前にグラスに半分でも水を飲むことで、ずっと質の高い睡眠をとることができます。
水によって、脳への血液循環がよくなり、酸素や水分が脳に行きわたるようになり、脳を落ち着ける効果もあります。
◆記憶力アップ
水分不足になると、どれだけ軽いものであっても、ホルモンバランスの乱れにすぐにつながってしまいます。つまり、水分が足りないことによって様々な機能障害が起きてしまい、生命維持に大切な多くの基礎部分に影響するということです。
その結果として起こりうることのひとつに、認知スピードの低下があります。物事を記憶するのが難しくなったり、話の結論を予想しにくくなったり、長期記憶の能力も低下したりします。いつ適度に水分補給ができるよう心がけることが大切です。
以上、エゴレジ研究所から「水分補給」の健康効果についてご紹介しました。水はいつでも簡単に飲めますが、意外にも1日に必要な量を取っている人は少ないようです。水分が不足すると血液がドロドロになり全身に栄養素が運べなくなります。そうすると徐々に疲れがたまってきます。その疲れによって、さらにストレスを感じて悪循環なんてことも。ストレスを回避するためにも、疲れる前に水分を補給しましょう。最近疲れやすいなと感じているなら、意識して水を飲むことをオススメします。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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