頑張っている人へ――「いい加減」のススメ

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

あなたは頑張り過ぎて心をすり減らしていませんか。「いい加減」と聞くと手抜きとかチャランポランなイメージを持つ人が多いようですが、「いい湯加減」に使われるように丁度良いという意味も含まれます。何事においてもちょうどいい、最適化されたという意味あいならまんざらネガティブな言葉ではないでしょう。そこで今回は、頑張っている人にとっての「いい加減」についてのお話です。

頑張っている人へ。

仕事でもプライベートでも、何か目標を掲げてそれを達成しようとする場合、誰もが頑張ってしまいがち。人によって頑張る度合いは個人差があるとは思いますが、頑張れば頑張っただけ達成は早まる、と思っていませんか?コツコツ努力するよりも、がむしゃらに頑張った方が、さらには死に物狂いになってなりふり構わず没頭する方が目標は早く達成出来る・・・そう思っている人もいるのではないでしょうか?

あなたは頑張りすぎていませんか。たとえば以下のようなことに思い当りませんか。

  • 途中で投げ出さない(無理だとわかっていても)
  • 一番を目指す(誰にも負けたくない)
  • サボることができない(時間がかかってもキッチリこなしたい)
  • 他の人のことまで気になってしまう(ほっておけない)
  • 楽なやり方を取り入れられない(自分流へのこだわり)
  • 他人に期待して裏切られた経験がある
  • 妥協できない(期待に応えたい)

何のために頑張るのか・・・それは何か目的を達成するための努力のはずですが、いつのまにか頑張ること、それ自体が目的になっていませんか。

本来の目的からそれてしまうと、何のための努力なのかもあいまいなままに、ただただ頑張ってしまいます。

物事がうまくいかないと、あんなに頑張ったのにどうして・・・と結果を受け入れられないでいます。つらい思いをしたのだから、良い結果になるべきだと考えてしまうのです。真面目な人ほど思うような結果が出ないと、努力が足りないからだとさらに自分を追い詰めてしまいます。自分を追い込んで苦しい思いをしたことと、良い結果が出ることはイコールではありません。

大切なのは、自分の「力量」を知っておくということです。みんな自分の力量に見合ったことしかできないのですから、課題や問題がそれを大きく超えるものであった場合は、たとえ無理をして頑張っても対応しきれずに、あるいは結果を出せずに、逆に多大な迷惑をかけることになります。自分自身も「できない」ことへのあせりや苛立ち、悔しさや情けなさといったことに悩まされることにもなりかねません。

そのような事態に陥らないために必要なのが、「いい加減」を心得るということなのです。つまり、「いい加減」とは自分の持っている「力量」のこと、そして「いい加減」を知るとは、自分の力量を的確に把握しているということなのです。「いい加減」は、“極端ではない”、“過剰ではない”「良い加減」なのです。

「頑張るということは決して無理をするということではない」と茂木健一郎先生も指摘されています。「頑張る=無理をする」のイメージがあるものの、実はそうではなく、無理をしない範囲で頑張ることはできると気づかせてくれます。疲れて休んでも、人よりも仕事が遅かったとしても、それは頑張っていないわけではないのです。

頑張りすぎる人は、自分の限界を見極めて自分のペースで仕事をやれば、それは十分に頑張っている証拠だと心に留めておきましょう。

「いい加減」は人によって違います。誰かとの比較ではなく、自分にとって適切なところを知ることです。頑張りすぎてしまうあなただからこそ「いい加減」を意識してみましょう。

自分にとっての「いい加減」

何かを始める時、何かを変える時、自分にとってのちょうど良さ、「いい加減」とはどの程度か自分の力量をしっかり把握しておきましょう。
また長いスパンでの目標に向かっているなら頑張ることと同じくらい大事なのが、継続できるかどうかということです。はじめと同じくらいまたはそれ以上のモチベーションを維持しながら粛々と継続できるかどうかも目標を達成するためには必要な要素です。そのために「いい加減」をキープするためのポイントを押さえておきましょう。

◆まだやれると思うところでやめる

無理を重ねて「やり切る」よりも、「また明日も頑張ろう」という続きをする余裕を残しておくほうが人は継続しやすいものです。また、あえてキリの良くないところで中途半端にやめることによる「ツァイガルニク効果」も期待できます。ツァイガルニク効果は簡単に言うと「続きが気になる現象」のことです。やりかけのことがあれば「まずはやりかけのことから」と始めることができます。始めるとき、動き出すときなど、何事も「0(ゼロ)→1」が一番エネルギーを使います。その負担を軽減しておくことで続けやすくなるのです。
また脳は取り入れた情報同士や、過去に蓄積した情報などを「つなげる」のに時間がかかります。その時間を意図的にとること(=やりかけで止める)ことで、脳の中の情報が組み合わさり思わぬアイデアが生まれたりします。よく「一晩寝たらいいアイデアが浮かんだ」「寝て起きたら解決策がひらめいた」なんて言うのは、この脳の働きが大きいと言えます。

◆楽しみながらやる

仕事、家のこと、趣味。何においても自分なりの楽しみを見出さなくては継続することは難しいものです。人と共有できなくても自分が楽しめることが肝要です。継続して頑張る力の本質は楽しむことです。「楽しめる人」はドーパミンを味方にしています。「楽しい」と感じてドーパミンが分泌されると、記憶力、集中力が高まり、モチベーションもアップします。頭が活性化され、脳のパフォーマンスが飛躍的に高まるのです。「楽しむ」ためには、意識して肩の力を抜いてみることです。ほどほどに手を抜いたりすることを覚えることも大切だと思います。

◆好奇心のアンテナ

たとえ楽しみを見いだしながら目標に向かっていても、継続の過程においては壁にぶつかることもあるかもしれません。そんな時、ひとつのものばかりを見つめていては、やはり行き詰ってしまいます。常日頃からあれ「いいな」とか、「面白そうだな」と感じるアンテナを大きく広げ、いろんなものに目を向けておきましょう。
そうすることで、息抜きになることはもちろん、新しいヒントやアイデアが見つかることもあるかもしれません。

以上、エゴレジ研究所から、頑張っている人にとっての「いい加減」についてご紹介しました。自分に無理のないスタンスで自分らしくいられるのが「いい加減」。一生懸命になるあまり、無理を重ねて体を壊してしまったり、心をすり減らしてしまったりしてはもともこもありません。気持ちにも体力にも余裕を持って、そして長い目で目標を見据え、楽しみながら続けること。余計な力が入っていないから良い結果も付いてきます。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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