体を温めると心も温まる

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

寒い中、缶コーヒーや、温かいものを持ってホッとした経験はありませんか?温かい飲み物や食べ物を体にいれると「身も心も温まる」とよく表現されますが、実はこういった「身体の感覚」が無意識にその人の推論、判断、行動に影響を与えることはご存知でしょうか。そこで今回は、心と体の不思議な関係についてのお話です。

身体化された認知の実験

コロラド大学のローレンス・ウィリアムズとイェール大学のジョン・バーグは、41人のボランティアを対象にして、身体的な温かさ(または冷たさ)を経験すると、本人がその影響に気づかないうちに、対人関係の暖かさ(または冷たさ)の感覚が高まるという仮説を検証しました。サイエンス誌に掲載された心理学の分野では有名な研究(Williams & Bargh, 2008)です。

まず前提として、この研究に協力した被験者は研究の目的を知らない状態で実験に参加します。
実験室に一人ずつ案内される途中、さりげなくコーヒーを被験者に与えます。このとき、被験者は「ホットコーヒー」を渡されるグループと、「アイスコーヒー」を渡されるグループに分けられました。

実験室に入室後、被験者は実験者から「ある架空の人物」について10の評価プロフィールを提示され、この架空の人物について印象評価を行います。
途中で手が温かいコーヒーカップに触れたグループの被験者は、冷たいコーヒーカップに触れたグループに比べ、架空の人物を「温かい」(寛大で思いやりがある)と評価しやすいということがわかりました。
「手が温かい(皮膚感覚)」という極めて物理的な感覚が無意識に他者への印象評価に影響を与えているということを明らかにしたのです。もちろん被験者はこの実験の目的を知らないので、このような評価は無意識のうちなされているのです。物理的な温かさを体験すると、その影響に本人が気づかなくても、対人的な温かさの感情が高まる可能性があることを示唆しています。

これは「身体化された認知 (embodied cognition)」といわれる現象の一つで、他にも視覚(明るい・暗い)、運動(重い・軽い)といった様々な身体感覚において同様の現象がたくさん報告されています。

「温かいまなざし」とか「冷たい言葉」と言われますが、ここで「温かい」「冷たい」とは、比喩表現です。実際に目の温度が高いのではありませんし、言葉を発した人の体温が低いのでもありません。しかし、根も葉もない比喩ではなく、温度と心は密接に関係しているというのが「身体化認知」学説です。

心と体をつなぐ島皮質

私たちの思考や行動は、知らず知らずのうちに身体感覚の影響を受けています。
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院 助教の小谷 泰則先生は次のように話されています。

※島皮質(太線で囲まれた部分)

大脳皮質の一領域である「島皮質」は、上図に示すとおり、見た目ではあたかも島のごとく存在している。しかし「島」という孤立したイメージを持つ名前とはうらはらに、他の脳領域と神経的なつながりを多く持っていることが知られている。例えば、島皮質は、前頭葉(認知)、頭頂葉(注意)、側頭葉(言語・聴覚)や帯状回(感情・認知)、扁桃体(感情)、視床(情報伝達)など幅広い脳領域と双方向的な神経連絡を持っている。島皮質は幅広いネットワークを持っているため、その機能も豊富であり、自分の体の状態の意識化から、運動・認知プロセス、意思決定、知覚・情動など非常に多くの機能に関与している。
島皮質は、体からの情報を意識化するという機能を持ちつつ、意思決定やネットワークの切り替えにも関与していることがわかる。このような島皮質の機能を考えると、島皮質は、体の状態をモニターしつつ、その状態に合わせて脳のネットワークを切り替えるという働きを担っているのかもしれない。つまり、島皮質は体と心をつなぐ非常に重要な脳領域であるといえる。

島皮質は、末梢からの神経の入力を受け、体からの情報を得ていることがわかっています。そして、体からの情報は島皮質の中でも右脳の島皮質の前方部分(右前部島皮質)に送られ、そこで体の状態を「意識」に変えると考えられています。

心の温活

「心の温活」とは、心身の健康を保つために、心を温めることです。温かいものに触れたり、温かい飲み物を飲んだり、腹巻をするなど、様々な方法があります。温かいものに触れると、疲労感から回復されるだけでなく、精神的に癒されたり、落ち着いたりします。

身体感覚は、人の「認知」「感情」「行動」に影響を及ぼします。体を温めるということは、体だけでなく心を温めることにもつながるのです。

一般的に、体温を上げると体の免疫力や抵抗力が向上すると言われています。我々は、常に細菌やウイルスなどを始めとする病原体の侵入危機にさらされており、自然と体調を整える免疫機能と呼ばれる仕組みが備わっています。過剰な疲労やストレスが溜まり体を防衛する免疫力が低下すると、風邪をひきやすくなったりしますので、抵抗力を高めるためには体温を上げて血流の巡りを良好に保つことが効果的と考えられています。

では、体を温めるのにどの部分を温めれば効果的なのでしょうか。
主に、首、腰部、太ももの部分が推奨されており、特に首周辺は体の中でもっとも寒さ感覚を感じやすい部位であるだけでなく、体温が奪われやすい部分でもあります。太い血管が首の近くにあるため、首をあたためると全身に温かい血液が循環します。また、お腹や下半身、足首などを冷やさないことも忘れてはならないことであり、腹巻やレッグウォーマーを普段から積極的に身につけて、腹部や足先を冷やさないように注意しましょう。

頭痛やめまい、倦怠感といった症状を日常的に抱えている場合は、耳の奥を温めると症状が和らぐ可能性があります。特に、仕事のプレッシャーや心配事で寝つきが悪い人、あるいは周辺の騒音などにストレスを感じて憂鬱な気分になりやすい方などは専用のイヤーピースを用いることで、リラックスした状態で周囲の雑音による入眠障害を回避してくれることが期待できます。耳の部分には自律神経など多くの神経が集合しており、市販の発熱体などを耳の窪みに密着させて耳を温めることで、自然な気持ちよさに包まれると同時にリフレッシュすることができます。

以上、エゴレジ研究所から心と体の不思議な関係についてご紹介しました。近年、注目されている「温活」もメンタルを元気にするのに効果的。体を温めるということは、体だけでなく心を温めることにもつながるのです。心が温まると「希望」「勇気」「愛情」「落ち着き」「心地よさ」など、人が生きていくために欠かせないような、プラスな感情を生み出してくれます。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

 

 

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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