「エイジズム」知ろう!

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

多様性を受け入れようという最近の風潮の中にあっても、中年(40~50代)という、ある意味経験もあり社会で最も活躍し輝ける可能性のあると思われる世代が、「おっさん」「おばさん」「じじい」「ばばあ」、「いい年して」など多くの心無い言葉によって活躍しづらい現実は変わっていないのではないでしょうか。若いことに価値があるとみなす傾向は根強く、特に女性は若さで価値付けられるような社会的抑圧があり、セクシズムとエイジズムの両方にさらされていると言えます。そこで今回は、エイジズムについてのお話です。

年齢差別(Age discrimination)との相違

「エイジズム – ageism」とは、年齢に基づく固定観念、偏見または差別のことです。欧米では、ageismとage discrimination は異なった意味で使われています。

年齢差別(age discrimination)という言葉は、20世紀初頭にはすでに使われており、1927年9月27日付のニューヨークタイムス紙の`YEARS PROVEHANDICAP TOWOMEN IN BUSINESS’における記事に見ることができます。そこでは主に女性に関して年齢の若い者が職についているため、連邦当局が年齢よりも働く者の個性や能力を重視すべきことが述べられていました。こうした点から欧米では、一般にage discriminationが主に雇用問題から使われ始めた用語であるため、経済的な意味合いで使われる傾向があるようです。

それに対し、エイジズムはさらに複雑化した年齢問題に対応して生まれた概念で、1969年、アメリカ国立老化研究所の初代所長であったロバート・ニール・バトラー(Robert Neil Butler)が提唱しました。
そこでは 「年をとっているという理由で高齢者たちを組織的に一つの型にはめ差別すること」 と定義しています。
その後、老年学者のパルモア(Palmore,E.B.)は,エイジズムの諸形態を分類し,高齢者に対する偏見として,否定的固定観念と否定的態度,肯定的固定観念と肯定的態度の 4つの種類があると、これらの偏見が、個人的もしくは制度的差別につながっていると述べています。

欧米でエイジズムは、人種差別、女性差別に続く第三の差別ともいわれ、今世紀最大の差別の一つとして認識されています。年齢を基準に相手をカテゴライズするのは、立派な「差別」なのです。そしてこういった年齢で差別する人のことを、英語圏では「エイジスト (ageist)」と言ったりするそうです。

一般的に「エイジズム」と言うときには、高齢者や年配者への差別を指すことが多いのですが、年齢による偏見は高齢者だけが受けるものではありません。いつの時代も「最近の若者は〜」という声はよく耳にしますし、若者が、年齢によって差別的な視線を向けられたり偏見を向けられたりすることも、よくあることです。
また、「~世代」というように、ある一定の期間に生まれた人たちに名前をつけ、世代としての特徴を語ることはこれまでにも多くあります。これらの言葉そのものは時代の特徴を表現するものであって、特に善悪の意味合いを持つ訳ではありません。しかし、実際にこういった言葉を用いる場合は注意が必要です。相手によってはその世代に属することを快く思っていない可能性があります。また、文脈によっては相手が偏見を持たれていると感じる可能性もゼロではありません。最近では、ゆとり世代への批判的な指摘や、ミレニアル世代・Z世代への期待と偏見などが象徴的です。

そのため、元々のエイジングの定義に代わって今広がりつつあるのが、

ある年齢集団に対する否定的もしくは肯定的なあらゆる偏見」 といった対象を限定しない定義です。

知らない人が多い「エイジズム」

高齢者や若者に対する周囲からのエイジズムは世界中に蔓延していますが、人種差別や性差別と比べて認識されにくいと言われています。

ソーシャルエンタープライズとして、事業を通して様々な社会課題の解決に取り組む株式会社LIFULL(ライフル)は、2021年6月に全国18歳以上の男女2000人を対象とした「エイジズムに関する調査」を実施。公開された調査結果の一部を紹介します。
※ライフル社『年齢の森-Forest of Age-』https://media.lifull.com/campaign_2021091606

「エイジズムを知っていますか?」という問いには、全体の約8割(77.9%)が聞いたこともなく、全く「知らない」と回答し、「見聞きした程度」という人は13.4%でした。

一方で、エイジズムを「知っている・理解している」という人は1割にも満たない8.7%に留まりました。

「これまでにあなたがしたことのある、年齢を理由とした発言や行動」では、「年齢を理由に人に席を譲った」が全体の38.0%で最多回答となりました。
次いで多かった回答は「人が何かを思い出せない理由を年齢や老化のせいにした(34.4%)」「人がケガや病気をした理由を年齢や老化のせいにした(24.6%)」「人が転んだり、息切れした理由を年齢や老化のせいにした(24.3%)」と続き、自分自身や相手に対して記憶やケガ、病気を理由にした言動があったことが分かりました。
さらに、「年齢に関する冗談を言った(23.7%)」「親しくない相手に対して、名前でない年齢に関連した呼び方をした(16.7%)」と、対象の老若にかかわらず年齢を理由にした「エイジズム的行動」が明らかになりました。

「これまでにあなたが受けたことのある、年齢を理由とした発言や行動」については、「年齢を理由とした発言や行動を受けたことがない」という回答が最多(全体の55.4%)となりました。
受けたことがあるとした回答では、「年齢に関する冗談を言われた(13.4%)」「何かを思い出せない理由を年齢や老化のせいにされた(12.8%)」「転んだり、息切れをした理由を年齢や老化のせいにされた(10.6%)」が上位となりました。
その他、「服装や外見を変えるように促された(5.0%)」「恋愛・結婚への考えを否定された(3.8%)」「夢や希望していることについて否定された(3.0%)」と回答した人もいました。 【Q2】と同様に、対象の老若にかかわらず年齢を理由にした「エイジズム的体験」の実態が明らかになりました。

「あなたは、年齢による差別はあると思いますか」については、全体の45.0%が「あると思う」と回答しました。
年齢別では30代が46.8%と全年代で最も高く、18-29歳(42.2%)、40代(46.7%)、50代(46.2%)、60代(43.8%)、70代以上(40.9%)という結果になりました。30-50代が年齢による差別に対する意識が高いことが分かりました。

年齢は単なる数字ですが、年齢は個性であり,どの年齢の人間も一人一人がかけがえのないものです。

「○○だから△△だ」という差別特有の考え方がエイジズムに当てはめられると、「○○才なら仕事をしているはず」、「◎◎才なら結婚しているだろう」など社会的固定観念もうまれ、年齢自体が私たちにとって精神的な負担となっていることも多いのではないでしょうか。

「エイジズム」を意識する

エイジズムは、偏見や固定観念(ステレオタイプ)から生まれます。こうした無意識の思い込みは、いつでも、どこでも、誰にでも起こりうることです。事実に基づいていない固定観念とその危険性について意識することが無意識のエイジズムを防ぐための第一歩です。自分自身に「思い込み」や「きめつけ」がないか、気づきのアンテナを立てることが重要です。まずは、自分が持っている偏見や固定観念をチェックしてみましょう。

以上、エゴレジ研究所から、あまり知られていない「エイジズム」についてご紹介しました。世の中は意外と単純ではなく、見えているものだけが全てでないことが多いのです。自分に都合の良いように憶測せず、物事を柔軟にとらえることで、無駄にイライラしたり、誰かを傷つけることが無くなります。まずは年齢でラベルを貼ることをやめるところから始めて見ませんか。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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