幸せな人生を送るために大切なもの

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

今年のGWは、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で自宅で読書や動画を見て過ごすことも多いのではないでしょうか。「おうち時間」の過ごし方についても様々な提案がされるようになっています。そんな中、ネット散策でちょっとした話題になっているTED Talkがあります。

今回は、ハーバード大学成人発達研究所(Harvard Study of Adult Development)の4代目の責任者であるロバート・ウォールディンガー氏による研究「一生を通し、私たちを幸福で健康にするものは何でしょう」(2015年11月)をご紹介します。

ハーバード成人発達研究

この研究は、「史上最も長期に渡って成人を追跡している研究」です。研究が開始されたのは、何と第二次世界大戦よりも前の1938年です。

研究の目的は「幸福と健康の維持に本当に必要なものは何か」を明らかにすること。  対象となった2つのグループのうち、1つは、1939~2014年にボストンで育った貧しい男性456人(グラント研究)、もう1つは1939~1944年にハーバード大学を卒業した男性268人(グリュック研究)です。調査の対象となった被験者たちは、様々な社会階層のひとが含まれています。研究者たちは、血液サンプルの分析、脳スキャンといった科学的な調査と、被験者のアンケートの回答、家庭訪問などの調査によって、彼らの仕事や家庭生活、健康状態を記録し続け、調査結果を分析し、その結果をまとめてきました。

今回は、2015年に発表された(過去75年の研究結果)講演をベースにしています。

75年の追跡調査の一つの結論

研究のディレクターを務めるロバート・ウォールディンガー教授によると、重要性において、ある一つのことが、ほかのすべてに勝っているそうです。

“75年間におよぶこの研究が明確に示しているポイントは、良い人間関係が私たちの幸福と健康を高めてくれるということです。これが結論です”

家柄、学歴、職業、家の環境、年収や老後資金の有無といったことではなく、人間の幸福度、健康と直接的に関係があったのは人間関係だったという結果になったのです。 しかも、友人の人数は関係なく、たった一人でも心から信頼できる人がいるかどうかが重要だということがわかりました。

この調査で明らかになったことは3つあります。

1.周りの人との人間関係は健康に良いということ。
家族や友人などと良い関係を築き、社会とより良い関係を築けている人は身体的に健康で、精神的にも充足していることに加え、社会との繋がりが薄い人よりも長生きしています。反対に、孤独を感じている人は、中年期に健康が悪化し、周囲と良い関係を築いている人と比べて早死にします。

2.人間関係の満足度が健康に影響するということ。

大切なのは、友人の数やパートナーの有無ではなく、心の底から信頼できる人がいるか?なのです。一緒にいて安心できる人、ありのままの自分を出せる人、そんな人が身近にいることが重要なのです。

どんなにFacebook上での友人の数が多くても、信頼できる人が存在しなかったら、幸福な人生は送れません。

「独身女性でいるよりも既婚女性でいる方が良いから…」という理由で、常にケンカをしているような夫婦関係を我慢している人は、「おそらく離婚するよりも心身に悪影響を与える」とも述べられています。

研究参加者が80代になった時、過去のデータから予測できることを探すため、彼らが50才の頃のデータを集めてみると、中年のコレステロール値等とは関連性はありませんでした。どの様な老年を迎えるかは、当時の人間関係の満足度で予測されることが分かりました。50才で最も幸せな人間関係にいた人が 80才になっても一番健康だったのです。親密な良い関係がクッションとなり、加齢過程での様々な問題を和らげてくれているようです。中でも特にパートナー共に幸福だと感じていた人達は 80代になり、身体的苦痛があっても精神的に幸福だという報告が出ています。しかし不幸な関係にある人達は 身体的苦痛がある日には、精神的苦痛でその身体的苦痛が更に増幅されていました。

最近のミレニアム世代に行われた調査では、80%の若者が人生の目的はお金持ちになることと回答し、50%の若者はもう一つの大きな目的は有名になることと回答したそうです。人生のゴールが、お金持ちになって、有名になることだと思っていれば、当然、そこにエネルギーも時間も使い、質の良い人間関係を築くことは後回しになってしまうでしょう。けれど、それでは幸せを手に入れることは出来ないというのが、この研究が教えてくれていることなのです。

3.よい人間関係は脳にもよいということ。
今回の調査で、何かあった時に本当に頼れると思える人が近くにいる人は頼れる人がいない人と比較して、記憶がハッキリしていることが明らかになりました。反対に、近くに信頼できる人がいないと回答した人は、記憶障害が早期に現れ始めていました。

TED Talkは、マーク・トウェインの以下の文章を引用して終わりました。

“There isn’t time, so brief is life, for bickerings, apologies, heartburnings, callings to account. There is only time for loving, and but an instant, so to speak, for that.”

「かくも短い人生に 諍い 謝罪し 傷心し 責任を追及している時間などない 愛し合う為の時間しかない それが例え一瞬にすぎなくとも」

温かく、親密で、互いに信頼できる人間関係を築くには、完璧な人間である必要はもちろんありません。けれど、自分も相手もある程度、オープンで内省的であるということが大事ではないかとカウンセリングルームの先生は指摘されています。

オープンであるとは、良いものも悪いものも自分の感情に対して開かれていることです。それを受け止めて適切な表現をすることができることです。自分の弱さやダメなところを必死で隠すのではなく、リラックスして自分らしく居られることです。

内省できるとは、自分を振り返る心のスペースがあることです。完璧じゃない私たちが、相手を傷つけたり至らないところがあれば、相手の立場になってその痛みを知り、自分の振る舞いを反省して成長していけることです。

そうした地道な努力は、手っ取り早くも簡単でもありませんが、私たちを本当の「満たされた人生」に導いてくれるものだということを、この研究は教えてくれています。

明るくハッピーな友人と幸福度

この成人発達研究に関連して、愛知医科大学の松永らの実験があります。

18〜25歳を対象にあるストーリーを読んでもらい、その反応(唾液に含まれるセロトニンというホルモンの量)を調べるというものです。このストーリーは架空のライフイベント、人間関係などが書かれたもので、主人公になりきって追体験できるようになっています。

ライフイベントの内容は「ポジティブ」「ニュートラル」「ネガティブ」の3つです。人間関係も同じく「ポジティブな友人」「ネガティブな友人」「友人がいない」という3パターンで、その組み合わせが参加者によって異なります。

実験の結果、参加者の幸福度をもっとも高めたのは、「ポジティブな友人」の存在だったことがわかりました。ライフイベントがネガティブなものであっても、明るくハッピーな友人がいる人は幸福を感じる傾向にある、という結果になったのです。

一方で、ネガティブな友人がいた場合、友人がいない場合よりも幸福度が下がる傾向も見られました。

『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)の著者、言語学者で明治大学教授の堀田秀吾先生は、この実験について次のように書いておられます。

人間は、とても共感能力が高いのです。それが幸福な気持ちであっても、不安や怒りなどのネガティブな感情であっても、相手が発しているものをそのまま受け取ってしまい、同じような感情を抱いてしまうことがわかっています。

つまり、ネガティブな人ではなく、ポジティブな人と接していったほうが人生はポジティブな方向に向かいやすいということです。

現代社会では、人間関係でもメリット・デメリットが重視されがちで、「つながっておくといいことがありそう」だから付き合う、なんていうこともあるかもしれません。また、見栄や世間体を重視した付き合いなどもあるかもしれません。ですが、ムリした付き合いには意味がないどころか、幸福度を下げてしまうこともあるのです。

ですから、よけいなことを考えずにポジティブな友人と一緒にいる。そして、自分自身もポジティブでいることに努める。そうして、幸福度の高い人間関係をつくってみてください。

以上、エゴレジ研究所から幸せな人生を送るための一番大切なものについての研究をご紹介しました。ハーバード大学の成人発達研究の結果を考えれば、人生の最終的な勝ち負けなんていうのはないも同然です。財産も、恋愛も、肩書も、ステータスというのは一瞬の間不安を遠ざけるものに過ぎず、本質的には問題を解決してくれないということです。

人と人とのつながり、そして「幸せ」と感じる気持ちを大事にして、楽しい時間を過ごしたいものです。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NYこどものくに東京 理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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