ポジティブエクササイズ「3つのよいこと」

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

季節がだんだんと春めいてきて「何か良いこと起きないかなぁ」・・・と、夜寝る前にそんなことを思うようになりました。新型コロナウイルス感染症のために、何をやっても気持ちが晴れないし、閉塞感がつきまとう、一日頑張ったけど、充実感はない。そんな日が続くと体も心も疲れてしまいます。そこで今回は、今日という日を幸せな気分で終えるのに効果的なアプローチ、「3つのよいこと」というポジティブエクササイズをご紹介します。

ポジティブエクササイズ

ポジティブ心理学の基本的なテーマの一つに「ウェルビーイング」(well-being)があります。well-beingとは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを意味する概念で、「幸せ」「幸福」と翻訳されることも多い言葉です。世界保健機関(WHO)憲章では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」とされています。そんなwell-beingを高めるとされているのがポジティブエクササイズです。

セリグマン博士の「3つのよいこと;T G T」プログラム

ポジティブ心理学を提唱したセリグマン博士の論文で瞬く間に有名になったポジティブエクササイズの代表的なプログラムがThree Good Things :TGTです。
オリジナルのやり方は,1日の終わりに今日あったことを思い出して,
「うまくいったこと」を3つ記載し,それぞれ
「どうしてうまくいったのか」も含めて記入することを一週間続けるというプログラムです。

このプログラムの効果を調べるために、セリグマン博士が、約60人の実験参加者に、プログラム実施前後に行った「うつ症候」テストと「幸福感」テストの結果があります。驚くべきことには、たった一週間で、うつスコアが約14(プレテスト)から10(ポストテスト)に激減し、それが6カ月後まで続いていることです。また幸福度スコアは、56(プレテスト)から57(ポストテスト)へ、さらに58、59へと日を追って確実に増え続けています。

「3つのよいこと」の効果

人は一日の終わりにその日を振り返るとき、嫌なことに焦点を当てる傾向(ネガティビティ・バイアス)があるようです。
しかし、「3つのよいこと」を書くと、それまで漫然と過ごしていた一日の中にあったよいことに気付き、一日を前向きに捉え直すことができる、よいことを積極的に見つけるようになると言われています。

ポジティブ心理学の専門用語を使って説明すると、

  • レジリエンスが高まる
  • ポジティブ感情が高まる
  • ストレス耐性が高まる

などがあげられます。

金沢工業大学の心理学研究所が関係する「野々市市民カウンセラー講座」にも取り入れられ、参加者のポジティブ度が参加前と比較して参加後で上昇することが確かめられています。同様の検証は様々な見地から数多く行われており、必ずしも全面的には支持しないという専門家もいます。とはいえ、「3つのよいこと」がある一定の効果が期待できる手軽なストレスケアの手法であることには違いありません。どうしてもネガティブなことに目を向けやすいのが人間ですが、この方法でネガティブな経験とポジティブな経験のバランスが取りやすくなると考えることもできます。毎日数分間、費用がかかる方法でもないので、まずは自分が続けやすいバリエーションを取り入れて気楽に試してみてはいかがでしょうか。

「3つによいこと」のバリエーション

この方法にはいろいろなバリエーションがあります。

◆「よいこと」の内容

「嬉しい!」「ラッキー!」「ホッコリした」と感じたこと、あるいは天気や自然の景観等での気づき、何でも含めてもよいようです。その出来事のあったことを思い出せば「どうして」「なぜ」は無理に付け加えなくてもいいでしょう。

  • ランチで行った店が美味しかった。
  • 苦手な人と会話できた。
  • 本を読む時間を持てた。
  • 春を感じる梅の写真が撮れた。
  • 面白そうな映画を教えてもらった。
  • 掃除洗濯がちゃんとできた。

などなど、些細なことでいいようです。毎日コツコツ書き溜めていくことをお勧めします。

◆記載する数

3つに限られているわけではありません。一つしかない日があってもいいと思います。最初は「よいこと」を思い出すのが難しくなかなか出てこないようですが、慣れてくるとすぐに思い出せるようになります。5個も10個も見つけられるようになるかもしれません。一日の最後にその中から3つを選ぶ。この時間はとても楽しく幸せな時間です。今日もいろいろ嬉しいことと感謝があったなと振り返り、充実した気持ちになれます。

◆アウトプットの仕方

手で書く、メモをするというのが苦手な人は、アウトプットを変えてみてもいいでしょう。

  • スマホやタブレットにメモする
  • Twitterに投稿する
  • アプリを使う (My日記、Three Good Things、つながらないSNS ilka(いるか)など)
  • LINEを活用する (自分だけのグループを作ってそこに書く)

人それぞれ心地よいやり方は違います。「よいこと」を3つ「指折り数える」だけでもいい、3つ考えたらカレンダーにシールを貼るという人もいます。いろいろ試して自分の好みの形で続けてみましょう。

一日の充実感は「終わり方」で決まる

「3つのよいこと」は就寝前や夜にやるのがポイントの一つです。予防医学研究者の石川善樹さんの著書「フルライフ」には「一日の重心の置き方」という考え方が登場します。日中に起こることの多くは自分ではコントロール不能なことばかり。だからこそ、自分がコントロールできる「はじめ」と「終わり」が大切で、特に「終わり方」が大切と述べています。

心理学には「ピーク・エンドの法則」という心理法則があります。これはノーベル経済学賞を受賞した心理学者ダニエル・カーネマン教授が提唱する法則です。人はすべての体験を等しく評価するわけではなく、最も感情が動いたとき(ピーク)と、一連の出来事が終わったとき(エンド)の記憶だけで、ある経験についての全体的な印象が決定されるという法則です。「終わりよければ全て良し」ということわざもあります。終わりの記憶が良ければ、他の記憶も良いものに上書きされるのです。つまり、その日の充実感を高めるためには、その日の最後を「良く終わる」ことが大切ということでしょう。

以上、エゴレジ研究所から「3つのよいこと」エクササイズについてご紹介しました。よいことを見つけたり、書いたりするのは、日常生活の出来事に対する認知を変える効果もあるといいます。「3つのよいこと」は、それまで漫然と過ごしていた1日の中に何かよいことを3つ探し出し、それを軸に1日を見直す作業です。「ないもの」よりも「あるもの」、「できなかったこと」よりも「できたこと」、「失ったもの」よりも「手元にあるもの」などポジティブな出来事に意識を向ける訓練になり、これを習慣とすることができれば、常に物事を前向きに捉えられるストレスに強いメンタルを手に入れることができるかもしれません。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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