代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、リモートワーク、在宅ワークが推奨されています。「仕事環境は整えたものの、なぜか疲れが取れない」「仕事のモチベーションが上がらない」—–リモートワークに切り替わってからどっと疲れを感じ、心の中で悲鳴をあげている人も多いのではないでしょうか。今回は、この“リモートワーク疲れ”についてのお話です。
目次
在宅ワーク疲れの実態調査
在宅ワーク疲れを説明できるマイクロソフト(Microsoft)の実態調査結果があります。人々は今、パンデミック以前に比べ2倍以上の時間を会議に費やし、同僚からはチャットのメッセージ攻勢に遭っているというのです。
マイクロソフトが2021年3月22日に発表した、この1年間にMicrosoft Teamsなど同社製のワークプレイス・ツールで行われたやりとりの分析結果です。このデータは、労働者の多くが身を持って感じていることを裏付けるものになっています。
下のグラフは、ユーザーがこの1年で会議に費やした時間(青色)と、やり取りしたチャットのメッセージ数(黄色)を表しています。どちらも企業が従業員に在宅勤務を命じた2020年3月以降に増加しています。
2021年2月には、労働者が会議に費やす時間は2020年2月と比べ2.5倍にもなっており、同僚とのチャットも45%増となっています。就業時間外のチャットも、42%増加しています。
疲れ果てるのも無理はない、と思わせる結果です。マイクロソフトが行った正社員と自営業者約3万人を対象にした別の調査では、回答者の50%以上が自分は働き過ぎであると述べているそうです。
さらに別の調査は、同じように燃え尽き症候群が蔓延していることを示していたそうです。会議への参加やメッセージへの返答にこれまで以上の時間を費やしているのであれば、本来の仕事の時間は減っているということになります。そのため、夜間や週末に仕事をして、終わらせなければならないことも多くなるようです。実際に、パンデミックによって実労働時間は49分から3時間程度長くなっているという調査結果もあります。
背景に潜む「脳疲労」
新型コロナウイルス感染拡大の影響でリモートワーク、在宅ワークが一気に広がった感があります。しかし、それ以前からスマホやWi-Fiなどのモバイル技術の発達で、いつどこからでも仕事にアクセスできる環境で、脳だけに慢性的な負荷がかかる生活環境があったのです。そうした中での疲労の正体は、交感神経が優位な状態が続くことによる慢性的な「脳疲労」です。
「ビジネスパーソンの疲れのスペシャリスト」である産業医の大室正志先生は、「ぼんやり何も考えずに過ごす“スキマ時間”が減り、時間外も休みの日もメールをチェックしてしまうなど、脳は常に仕事モード。オンとオフとの区切りをつけることが難しくなっています。パソコンでいうなら、いつすぐにでも作動できる「スクリーンセーバー」状態で、完全に「シャットダウン」できていません。これでは、脳疲労が起こるのも当然のことです」と指摘されています。
九州大学名誉教授の藤野武彦氏が理事長を務める、「BOOCS(ブックス)クリニック福岡」によれば、脳疲労になると、睡眠障害や味覚異常、便秘、疲れなどのほか、こんな症状が出るそうです。
気分の落ち込み、考えがまとまらない、イライラ、不安、自己肯定感の低下 |
(参考:BOOCSクリニック福岡による「脳疲労度」の自己診断11ヶ条)
脳の過緊張が長時間続くことによる「脳疲労」。加えて、運動不足も疲れを助長しています。結果として、日々の疲労は蓄積し、慢性的な疲れがぬけない「蓄積疲労」の状態に陥っている可能性があります。
疲労度MAXは金曜日!
2018年8月7日〜8月9日に実施されたインターネット調査があります。首都圏の20歳〜59歳の男女 854名(業務でデジタル機器を使用する、土日祝日休みの働く男女)が対象です。
疲労の蓄積を感じているかどうかを聴取したところ、「蓄積している」と答えた人が8割以上という結果が示されています(グラフ1)。
最も多くの人が蓄積疲労を感じるのは、週末に向かう金曜日・木曜日です。ただ、週明けの月曜日が3位であることから、週末にリフレッシュできていない人が多いことがうかがえます(グラフ2)。
金・土・日の蓄積疲労の解消法
「実は、休日に仕事モードをシャットダウンしてリフレッシュした人のほうが、週明けから元気に仕事に取り組んでいます。充実した週末を迎えるために、金曜日の夜のうちに溜まった疲れを取っておくことが大事です」と、大室先生は週末の疲労解消法を勧めています。
◆週末は仕事モードをシャットダウンする
パソコンと同様、人間も活動をシャットダウンしたほうが、疲労回復してよく動けるようになるもの。だから、せめて週末はスクリーンセーバー状態をやめて、完全なシャットダウン状態を作るべきです。
だらだら寝ながら仕事のことを考えるのはスクリーンセーバー状態で、休んでいるとは言えません。週末は、趣味やスポーツを楽しむなど、自分の好きな活動に没頭することが、シャットダウン状態を作ることにつながります。
◆脳の過活動をクールダウン
アウトドア派なら、自然の多い場所に出かける「ゆらぎ」を体感してもいいでしょう。木々が風に揺れるたびに木漏れ日が輝き、時おり川のせせらぎや鳥の声が聞こえる…というように、自然の中ではすべてが絶えず変化しています。これが「ゆらぎ」です。自然や四季の変化を意識し「ゆらぎ」とシンクロしてみしましょう。
インドア派なら、塗り絵や写経、編み物など、頭を使わずに集中して手を動かすことをしてみると、リフレッシュできます。目の前のことに没頭する「考えない集中力」がリラックス効果を生むようです。
◆運動不足を解消する
軽く汗をかくような早歩き、自転車こぎ、軽めのランニングなどの有酸素運動を、疲れない程度、心地よいと感じる程度に行うといいでしょう。とくに、手足の先が冷えて眠れないという人は、運動習慣を取り入れて、血行をよくしましょう。
◆金曜日の高濃度炭酸入浴を!
日本には日本ならではのお風呂スタイル(湯船入浴)があります。なかでもとくにおすすめなのが、高濃度炭酸入浴です。
高濃度の炭酸ガス入りの入浴剤を入れると、リラックスできるぬるめのお湯でも末梢血管が拡張し、血流を促してくれるので、凝りかたまった疲れを芯から和らげることができます。しかも、体内の中心部分の温度である深部体温もしっかり上がります。深部体温が上がると、下がるタイミングで心地よい眠気が訪れるので、質のよい睡眠につながります。
さらに、継続的な高濃度炭酸入浴は、年齢とともに低下する自律神経の活動度をアップさせるというデータもあり、いいことずくめです。
データは、一週間の疲労感の変化を示したものです。疲れが蓄積した金曜日の夜に“高濃度”の炭酸ガス入り入浴剤を入れたお湯につかると、溜まった疲れが減り、土曜日の起床時には、月曜日の起床時よりも疲労感が減っていることがわかります。
以上、エゴレジ研究所から“リモートワーク疲れ”についてご紹介しました。オンとオフの切り替えができず、時間外も休日でも仕事のことが頭から離れない状態で過ごしていると、疲労が取れないまま月曜日を迎えることに……。勇気をもって仕事モードをシャットダウンして蓄積疲労を解消し、充実した週末を実現しましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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