代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
新型コロナウイルスの感染予防対策として「3活」が呼びかけられています。3活とは、「黙活」「リモ活」「ソロ活」です。「黙活」は、黙という言葉を使って会話を控えようという呼びかけで、食事中に会話しない「黙食」、ジムでの「黙筋トレ」や銭湯での「黙浴」なども登場しました。「リモ活」は、飲み会などの様々な活動を実際に集まらずにリモートでやろうという呼びかけで、新しい就職活動の形態としても使われています。コロナ禍以前からも使われている「ソロ活」は、単独を意味する「ソロ」+「活動」の略で、ひとりで好きな場所へ行き、ひとりで好きなことをして、有意義な時間を過ごそうという呼びかけです。今回は、このひとりの時間を大切に過ごす「ソロ活」に注目してみました。
ソロ活に関する実態調査2019
「ソロ活」は、一緒に行ける存在の有無を問わず、ひとりでしか味わえない贅沢な時間を過ごします。敢えてひとりで行動する、という部分に焦点を当てたポジティブな意味を込めて用いられるようです。決して「一緒に行ってくれる人がいない」という消極的な理由による単独行動を指すものではなく、むしろ、そうした消極的・否定的なニュアンスを排除する意味合いで用いられる用語といえます。
ひとりで行動や体験をして楽しむ「ソロ活」に関して、英会話スクールを運営するGABAがビジネスパーソンの「ソロ活に関する実態調査2019」を実施しています。全国の20歳~69歳の男女ビジネスパーソンが対象です。
全回答者(1,000名)に、“ソロ活”はありだと思うか(肯定的にとらえているか)を聞いたところ、「ありだと思う(肯定派)」は85.6%、「なしだと思う(否定派)」は14.4%で、ソロ活に肯定的な人が大多数となっています。
性年代別に肯定派の割合をみると、30代女性(91.0%)や40代男性(90.0%)では9割以上です。
ソロ活肯定派に、ソロ活の魅力を聞いたところ、1位「計画を自分で決められる」(68.9%)、2位「気疲れしない」(64.4%)、3位「気楽に取り組める」(63.7%)、4位「人間関係に悩まなくて済む」(55.4%)、5位「やりたいことにじっくり取り組める」(42.1%)などが挙がっています。自分の考えやペースを大切にして行動できることや、人付き合いにおける気苦労やストレスに悩まなくて済むことが、ソロ活のメリットだと考えている人が多いようです。
ソロ活の経験の有無では、「ある」が56.8%で、半数以上がソロ活を経験しているようです。ソロ活経験がある人の割合を性年代別にみると、最も高かったのは40代女性(63.0%)でした。
この調査以降、コロナ禍で人と会うことが少なくなって圧倒的に増えたのは「ひとり時間」です。近頃は、おひとり様専用席がある飲食店や、おひとり様向けサービス・調理家電なども増え、「ソロ活」しやすい環境が整ってきています。これまでは“一人で”なんて考えられなかった場所へ踏み出して、初体験をしている人も増えています。ひとりで利用することへの抵抗感が薄れてきているのでしょう。
ソロ活市場の拡大
ソロ社会及び独身生活社研究の第一人者である荒川和久氏は、「ソロ活」を未婚と既婚、及びソロ度の高低で4象限に命名しています(下図)。
図の左側。ソロ度の低い人たちは全体で6割います。その中には、既婚者で「家庭を大事にする。よき親」である「ノンソロ」がもっとも多く、全体の4割を占めます。ソロ度の低い未婚の「エセソロ」は、今は独身ですが将来「ノンソロ」に移行する「いずれ結婚する層」です。
次に、右側のソロ度の高い人。右上、未婚で結婚意欲も低く、ソロ度の高い人は「ガチソロ」と言います。これが、荒川氏が指摘する「ソロ男・ソロ女」であり、全体では2割います。右下は、既婚者ですが、ソロ度の高いままの状態を保っている人たち。これも全体の2割いて、「カゲソロ」と命名されました。
今までの消費市場はほぼ「ノンソロ」によって牽引されていましたが、それは日本が皆婚社会だったからです。人口の半分が独身者となる日本、もはや市場のメインターゲットは「ノンソロ」ではなくなります。荒川氏によれば、単身化が進めば進むほど、消費の個人化によって需要は拡大すると考えられるそうです。荒川氏は、消費の個人化によるふたつの市場をあげています。ひとつは独身市場。これは、単身者と親元に住む独身も含みます。未婚者だけではなく、死別離別によって独身に戻った人も当然含まれます。もうひとつが、ソロ活市場です。ソロ飯、ソロ酒、ソロバイキングなど食関連のほかに、ソロキャンプ、ソロ遊園地、ソロ水族館、ソロ旅、ソロ音楽フェスなど、レジャー関連まで多岐にわたります。もはや、ソロ映画館は男女8割だそうです。
ソロ活の魅力
「ソロ活女子のススメ」(大和書房)の著者で、コラムニストの朝井麻由美さんは、ソロ活の魅力をつぎのようにまとめています。
- 予定を合わせる必要がない
- 行きたいと思ったその瞬間に行きたい場所に行ける
- 気を使わなくて済む
- 人と一緒にどこかへ行った時に気づかなかったようなことに気づく
- 自分に自信がつく
- 己を知れる
- 決断力がつく
朝井さんによれば、ソロ活にはセラピー的な側面もあるそうです。まず、行ったことのない場所にひとりで行けると、達成感があったり、自信につながったりします。ただひとりで遊びに行っているだけで小さな成功体験を積み重ねられるので、お手軽な自信製造機といえます。もうひとつは、日々過ごしているなかでは、自分が普段何を考えて、何が好きかをゆっくり考える時間があまりありませんが、ソロ活はそれに向き合うことができるわけです。だからソロ活はある種の自己分析ともいえ、自分を知るツールなのだそうです。
「超一流の超休息術」(ワニブックス)の著者でエッセイストの潮凪 洋介氏も、ひとりの時間をいかに使うかが、仕事のクオリティを左右するとして、一流の「ひとり時間の過ごし方」を紹介されています。
- 過去のすばらしい思い出に浸り心の安らぎを得る
- 知らない街で新しい自分に生まれ変わる
- 心配事は一旦忘れて気軽に過ごす
- 読書で問題解決のヒントを得る
- 朝5時に起きて早く仕事を終わらせる
- 自分で自分を抱き締めてあげる
- 映画のクライマックスシーンを見て思い切り涙を流す
- 夜の街を徘徊して冒険気分を味わう
一流の「ひとり時間の過ごし方」はいかがでしょう。情報の渦に飲み込まれがちな、この時代。しっかりと軸を持って生きるためにも、ひとりの時間を確保することは大切です。のんびりするのも良いですが、ひとりの時間だからこそ、普段は忙しくて見過ごしがちな自分自身について見直したり、心身のメンテナンスをしてみたり、これまでにチャレンジしたことがないことに挑戦してみませんか?自分が思っているよりも充実した時間が過ごせるかもしれません。
以上、エゴレジ研究所から今話題の「ソロ活」についてご紹介しました。最近、私のFacebookへの投稿でも、シニア層の快適な「ソロ活」が目立つようになりました。
「ソロ活」は自分で選んで自分で過ごす時間。自分自身としっかり向き合い、心にも体にも栄養を注ぐ大切なひとときになるはずです。予測不能な時代を不安や孤独感にさいなまれることなく、心身ともに快適に過ごすために、メンタルを維持でき自分が心地よくハマるものをみつけることはおススメです。ソロ散歩から始めてみませんか?
同じ時間を過ごすなら、一瞬の喜びや楽しみよりも、やりがいや達成感があり人として成長を促してくれるような体験を求めてみてはいかがでしょうか。
参考までに、おひとりさま向けソロ活情報共有ソーシャルメディア「ohitoriii(オヒトリー)」https://ohitoriii.me/ では、「グルメ」、「トラベル」、「音楽」、「スポーツ」、「自分磨き」などのカテゴリーを中心に、おひとりでも楽しめるソロ活情報が掲載されています。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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