多様な体験が脳の劣化を防ぐ!

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

「人生の折り返し地点に差し掛かると「もう若くないし…」などと、急に弱気になる人が意外と多いようです。そんな方々を元気にすべく、今回は「中年以降も脳が活性化する」ことを証明する研究結果をご紹介します。

中年期以降の脳の研究

最近の研究によると中年以降も脳が活性化することがわかっています。

心理学者のシェリー・ウィリスは、人生経験が豊富になることで脳の働きがよくなると指摘しています。
またジャーナリストのバーバラ・ストローチは、『年をとるほど賢くなる「脳」の習慣』(日本実業出版社)の中で脳に関する様々な研究やケーススタディを紹介し、脳を賢く保つ方法を解き明かしています。年をとるとバラバラだったカケラ(過去の知識や体験)がまとまり、より良い仕事ができるようになると説いています。

米国のジョージ・バーツォキスらは、MRIで19歳から76歳までの健康な人の脳を調べ、前頭葉と側頭葉という2つの重要な脳の領域(言語に対して割り当てられている領域)で、ミエリンが中年期に入っても増加し続けることがわかりました。
平均して50歳近くでミエリンはピークになりますが、人によっては60代でも生成され続けるというのです。

ミエリン(別名:髄鞘)は、神経細胞をサポートするオリゴデンドロサイトの細胞膜が延長し、バウムクーヘンのように巻き付いた構造物です。
このミエリンによって、軸索を流れる信号の速度が約100倍加速されることが知られています。
さらにミエリンは軸索を通じて神経細胞に栄養も供給しています。ヒト脳のミエリンの大半は出生後に構築されますが、例えばピアノの練習をすると、その分だけミエリンも増えることが知られています。

ミエリンは意識的に使うことで増加し、効率がよりよくなるということも確認されています。

一方、ロベルト・カビーザ(ATR人間情報通信研究所)は、脳の2つの領域を使うことが認知能力に影響を及ぼすことを実験で明らかにしています。

まず、年長の成人を能力の高いグループと低いグループに分けました(対象者の認知能力は高低にかかわらず正常の範囲)。そして、健康な若い成人のグループとともに比較的複雑な課題(この場合はワードペアの一致)を行なうように指示しました。

PETスキャンの結果、若い成人は予想どおり脳の片側(側頭葉)を使い、知能検査でもよい成績でした。
それに対して、同じ脳の片側(側頭葉)だけを使っていた年長の成人は認知能力の成績が低いほうにあり、若者と同じ脳領域を使っていても、あまり効率よく使えていなかったのです。
しかし、同じ年長者でも脳の両側(側頭葉と前頭葉)を使っていた人は認知能力が優れていたのです。

PETとERPを併用したこの研究によって、側頭葉の活動は短期的な事象依存型であるのに対して、前頭葉の活動は持続的なタスク依存型であることがわかったそうです。
持続的に学び続けること、体験を重ねて脳のつながりを強化している人の脳は、認知能力を保てるということです。

側頭葉の内側には記憶や本能・情動に関わる部分があります。記憶に関わる部分として海馬と呼ばれる部分があり、海馬が障害されると記憶の保持が難しくなります。
病気や怪我で海馬が障害されると、記憶が苦手となり何でもすぐに忘れてしまいます。
前頭葉前半部は、思考、感情、自発性(やる気)、性格、理性などの中心です。
また、言葉を話したり、体を動かしたりする機能も担っています。
病気や怪我で優位半球の前頭葉が障害されると、これらの機能が低下します。

私たちは大人になっても学びを忘れずに、新たなことにチャレンジすべきでしょう。語学や読書、新たな分野の勉強会に参加するなど自分のために学び続けることも脳の劣化を防ぎます。

新しいことを体験した翌日は気分が上がる

無理をしてでも何か新しいことをすることが気うつを晴らす最善の策だという研究結果が、ジャーナルNature Neuroscience(2020)に発表されました。

最近はほとんどの人がGPS機能つきのスマホを携帯しています。この研究では、それを利用して、3〜4カ月の間、ニューヨーク市とマイアミの122人の被験者の日々の動きを追跡しながら、「今、どんな気分か報告してください」というメッセージを定期的に被験者に送り、場所と気分の変動を調査しました。

その結果、新しい場所やいろいろな場所に行った日とその翌日は、幸福感が高まることがわかりました。どうやら「変化に富むこと」と「目新しいこと」が気分を上向きにするようです。
この研究の共同執筆者でニューヨーク大学の心理学の教授でもあるキャサリン・ハートリーは、Inverseに次のように語っています。

「気分が良い日の翌日は、あちこち動き回り、新しい体験や変化に富んだ体験をする可能性が高くなります。また、その逆のことも言えます。
今日、新しい体験や変化に富んだ体験をたくさんするほど、今日だけでなく翌日も気分が良くなります」。

追跡調査として、半数の被験者の脳をMRIでスキャンしたところ、よく動き回って新しいことを探索した被験者ほど、脳の中で「新しさ」と「報酬」を処理する2つの領域が活性化していることがわかりました。
「物理的な環境を日常的に探索することを通して得られる新しい体験や多様な体験は、主観的な幸福感と相互にリンクしあっていると言えます」とハートリーはコメントしています。

言い換えれば、幸福感が強いほど、新しいことを求めて行動するし、新しいことを求めて行動するほど、幸福感を強く感じるとも言えるということ。

「重要なのは、日常生活の多様性を高めることです。新しい道を歩いたり、なじみのない環境で絵を描いたりするなどの新しいスキルを試すことなどです。それは、最近触れることがなかった「光景、音、経験」に出会うことでもあるのです」(ハートリー)。

新しいことをすると脳の学習中枢が活性化する

新しい知識を得たり、体験を重ねることで脳のつながりが強化されます。新しい体験が脳に良いことを関連づけた研究はこれ以前にもありました。これまでの研究で、初めて挑戦する体験が脳の学習中枢を活性化することがわかっています。

初対面の人と話したり、新しい場所を探索したりすると、その直後の脳は新しいニューロン接続を生み出しやすい状態になります。新しい刺激を受けた直後に学習する時間をつくり、脳の可塑性の高まりを賢く利用しましょう。この時間をうまく活用すると良いでしょう。

知的活動や身体的活動、とくに(進めるうちに難しくなっていくような)段階的な課題を伴う活動を活発に行なっていると、認知的予備能を増やすことができます。

課題を継続的に増やすとか、連統して難易度を上げるとメリットが続いて効果が最適になります。とくに、目新しくて刺激的な知的活動をいろいろとやるのが一番役に立つようです。

以上、エゴレジ研究所から、「中年以降も脳が活性化する」ことを証明する研究結果をご紹介しました。加齢を理由に自信を失っている人も多いと思いますが、諦める必要はありません。ご紹介したように、人生を通じて新たな挑戦したり、いろいろな場所を訪ねたり、ワークショップや勉強会に参加したり、読書するなどの余暇活動やエクササイズも脳を活性化させることが明らかになっていますから。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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