植物のもつ心理的効果

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

青葉若葉の菖蒲月、花と緑の季節が到来!春から夏にかけてのこの季節、いろいろな植物に触れる機会を持ちませんか。植物に触れたり、新緑の木々や花の香りをかぐだけで元気をもらったり、心が軽くなることはありませんか?実は植物に触れることで、心身にさまざまな作用があるのです。おうち時間が増えたコロナ禍には、花や観葉植物を部屋に飾り始めた方も多いのではないでしょうか。花や緑には私たちの心身を癒す効果があります。そこで今回は植物のもつ心理的効果についてのお話です。

花の観賞とディストラクション効果

「ディストラクション」とは、集中させていた意識を意図的に散らすことで「気分転換」「ストレス解消」につなげることです。

農研機構は筑波大学などの共同研究(2020年7月に公表)で、花の観賞による癒し効果を心理的、生理的、脳科学的データによって示しました。

実験参加者35名(平均年齢24.4歳)を対象に、不快画像(例:事故場面、ヘビ、虫など)を見せて心的ストレスを与えた参加者に花の画像を見せたところ、ネガティブな情動が減少し、ストレスによって上昇した血圧やストレスホルモンの値が低下しました。この結果は、花の画像が脳の活動に影響を与え、ディストラクション効果を誘発し、心理的、生理的に生じたストレス反応を緩和させることを明らかにしました。

植物を育て、植物に触れる

園芸の作業は、種まきや水やりなど植物を世話して成長を助ける中で、「自分の手で育てている」という実感から充実感が生まれ、さらに「大きくなあれ」とか「もうすぐ咲くかな?」という期待感や、「咲いた!」「実がなった!」という達成感・満足感が得られるなど心にさまざまなプラス感情をもたらします。
生活不活発病(体を動かさない状態が続くことで心身の機能が低下する病気)を防ぐ効果もあるといわれる「園芸療法」は、植物に触れて、育てることで、心身の回復を図るものです。日々の暮らしの中に、この園芸療法の効果を取り入れてみませんか。

●五感を刺激
屋外で植物を育て、さらに育てた野菜をいただくことによって、視覚・触覚・嗅覚・聴覚・味覚すべてをフルに刺激されるので、五感を快くリフレッシュさせることができます。
●感覚をひらく
人は心に傷を抱えていると、それ以上傷つかないように心を閉ざしてしまいがちです。しかし、植物は陽光や雨水があれば独立栄養で自然に育つので、プレッシャーを感じることもなく、その伸びやかな成長に触れることで感動し、心の傷が癒やされたり、閉ざしていた感覚を自然にひらくことができます。

●季節の覚醒
四季の移ろいに呼応して、そのときどきに花開き実る旬の植物を育てることによって、鈍っている季節感が目覚め、時間感覚を取り戻したり、過去の記憶を思い出すきっかけにもなります。また、「今週はまびきしよう」「来月は収穫しよう」といった計画的な行動が、日々の暮らしに励みや楽しみをもたらします。
●コミュニケーションの活性化
「芽が出た!」「つぼみが膨らんだよ!」など、植物の成長にわくわく共感し、笑顔が増え、周りの人に伝えたくなり、会話がはずみ、表情も自然と明るくなり、人と関わりが楽しくなります。
●運動促進
土をいじったり、種をまいたり、水やりをしたり、まびきをしたり、雑草を抜いたり——。植物を育てる際には、自然と屋外で手足を動かすので、普段、運動不足になりがちな人も無理なく運動できます。適度な運動によって、新陳代謝が高まり、快眠導入をもたらします。

ネットや本を読むだけでは、初心者は植物を枯らしてしまうこともままあります。マニュアル通りに行かないのが面白いところ。その経験をしてみないと解らないことです。失敗することに「学び」があり、次のステップがより深みのある展開になっていくはずです。

花を活ける「ゆとり」

毎日頑張っていると、目先のことにばかりに気がいって、余裕がなくなってしまうということありませんか。気持ちに余裕がなくなると、些細なことで人にあたってしまったり、イライラしたり、なにもかもうまくいかないと自己嫌悪に陥ってしまうことも—。煮詰まってきたなと感じたら、意識的に自分の中に「ゆとり」をつくってみませんか?

アメリカのラトガース大学の研究によると、オフィスに花を飾ると生産性があがったり、創造力が刺激されたりするうれしい効果があるそうです。職場の環境によっては、自分好みに花を飾るのを躊躇してしまうかもしれませんが、自宅であれば自由にカスタマイズできます。デスクの横にお花を置いてみると、リモートワークの質を高められはずです。

お花はいつでもわたしたちの心を和ませてくれます。身近でフレッシュなお花に触れることで、波だった心も落ち着きます。心にゆとりがないと感じたら、仕事帰りに小さなブーケを自分のためだけに買ってみましょう。自然と笑みがこぼれて、締め付けられていた心がやんわりと緩むのを感じられるでしょう。

花が与える心理的効果

千葉大学環境健康フィールド科学センター(自然セラピープロジェクト)による「花きに対する正しい知識の検証・普及事業」の調査結果(2011年)があります。
生花がもたらす心理的効果を測定したところ、花の無い部屋に比べて花のある部屋では「活気」の気分プロフィールが大幅に増加し、「混乱」、「疲労」、「緊張・不安」、「抑うつ」、「怒り・敵意」が低下することが明らかとなりました。花のある部屋では、ネガティブな感情が抑えられ、ポジティブな感情が促進されていることが分かります。花を見ることによって前向きな感情を持つ人が多いのでしょう。

また、心拍変動性を用いてバラ生花がもたらす生理的効果を測定したところ、花のある部屋では交感神経活動が25%低下し、逆に副交感神経活動が29%上昇することが認められました。交感神経活動の低下はストレス状態の緩和を、副交感神経活動の上昇はリラックス状態の亢進を意味しており、生花がもたらす生理的リラックス効果を医学的に証明できることが明らかになりました。

花がある部屋では戦うための神経である交感神経活動が減少し、リラックスするための神経である副交感神経活動が増加しています。

以上、エゴレジ研究所から、植物のもつ心理的効果についてご紹介しました。まさに百花繚乱のこの季節、感染予防に注意して公園や森林、フラワースポットに足をのばし、いろいろな植物に触れてみてもいいでしょう。花はその種類によって、心身に作用するさまざまな香り成分が含まれています。例えばバラやラベンダー、ゼラニウムには、リナロールやゲラニオールといった香り成分が含まれており、匂いをかぐだけで副交感神経を優位にする、ストレスや不安を軽減するなどの効果が期待できます。草花や樹木のフレッシュな息吹を五感で満喫して、心身の健康に役立てましょう。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP