第23回「日銀総裁が交代すると起こることは?」

美容室勤務、百貨店勤務を経て独立し、通信業、保険業、海外積立等に携わり、現在は自身で暗号通貨やFX、gold、カジノ等様々なジャンルに投資をしています。

そもそも日銀の仕事とは?

日銀総裁が、10年ぶりに交代します。
2013年、 安倍首相(当時)に抜擢された黒田総裁は日本経済を盛り上げるべくアベノミクスを推進しました。
世界でも例を見ないイノベーティブな金融緩和を次々と打ち出しました。
ETF買い入れ、大規模な長期国債買い入れ、イールドカーブコントロールなど。

そもそも、日銀の仕事とは、どういうことをしているのかですが、発券機能、政府の銀行、銀行の銀行という3つの役割を持ち、おもに金融政策を行います。
好況の時は、金融引き締め(景気の加熱を抑える)を行い、不況の時は、金融緩和(景気に刺激を与える)を行います。
日銀の目的は、紙幣の発行や、通貨・景気に応じた金融調節を行い、銀行間で行われる資金決済の円滑な確保を図ることで信用秩序を維持することです。とくに紙幣発行や金融調節によって物価を安定させ、銀行間決済を行うことで金融システムを安定させる役割があります。

金融調整

日本経済に直接的に関わってくるのが、通貨・景気に応じた金融調節です。金融調節は、「金利」や「通貨供給量の増減」を通じて行います。物価が一定期間の間に下落する現象であるデフレーションが起きている場合、日銀が紙幣を発行して市場に流通している国債や社債などを購入し、通貨供給量を増加させて調節します。一方で物価が一定期間の間に上昇する現象であるインフレーションの場合、日銀が保有する国債や社債などを売却し、市場に流れている通貨供給量を減少させることで調節を行います。

もし、デフレの際に通貨供給量を減少させてしまえば、さらなる物価下落が起こり、景気低迷になるでしょう。
また通貨供給量に併せて、日銀が短期金利の誘導目標を設定する政策金利を調節することで、デフレ時に金利を引き下げ、インフレ時に金利を引き上げることで調節します。しかし、マイナス金利を導入したため、2016年9月の金融政策決定会合から長期金利と短期金利の誘導目標を操作して、適切な水準に維持するために行うイールドカーブコントロールを導入しました。イールドカーブ・コントロール(YCC)とは、短期金利だけでなく、長期金利もコントロール対象とする日銀独自の金融政策で日銀が2016年9月21日に導入を決めた政策であり、日銀当座預金の政策金利残高に0.1%のマイナス金利を適用して短期金利を操作する一方、10年国債利回りがゼロ%程度で推移するよう長期国債を買い入れて長期金利を操作するものです。

2023年1月末の普通預金金利が0.001%、国債利回り(5年)が約0.2%であるため、金利差は0.2%−0.001%=0.199%になります。この金利水準が続くならば、個人から集めた普通預金資金を国債(5年)に投資すると、金利差分だけ利益になります。
銀行は、預金で集めた資金を、数年間もしくは数十年間にわたる貸出に回すことが多いですが、貸出に回らなかった余裕資金を金利差により利益の得られる債券に投資するケースが多いです。
近年では、日本より金利が高い海外の債券に投資することもあり、金利が動かなければ、より高い金利差を獲得できます。
しかし、金利水準が上昇すると中期債(長期債)などの債券価格が下落するため、金利差で得られた利益を吹き飛ばすことになります(金利が上昇すると債券価格は下落し、金利が低下すると債券価格は上昇します)。
2022年は、海外金利が日本国債と比べて比較にならないほど上昇したため、損失を被ることになりました。
このようにイールドカーブ上の金利差に注目して利益を追求する場合は、想定以上に中期金利(長期金利)が上昇する危険性と背中合わせの状態にあることを忘れてはなりません。
皆様もこれから何が来るか情報を集めて、その中で成長するものを見極め、投資していくのも良いかと思います。

機関投資家の動き

次に、年金資金を運用する機関投資家などはどう動くかですが、このイールドカーブの形状を予測して、利益を極大化させようとします。仮に「長期金利が中期金利や超長期金利よりも相対的に上昇する(長期債の価格は相対的に下落する)と予測」した場合、機関投資家のファンドマネージャーは、債券ポートフォリオ(銘柄の組み合わせ)の長期債の比率を引き下げて、中期債と超長期債へと入れ替えます(実際にはリスク指標に則り詳細な比率が決定されます)。
そして予測の通り長期金利が、より上昇したときに、今度は逆に入れ替えた分を短期債と超長期債から戻してやれば、金利上昇の影響度を減らすことができます。金利の上昇は債券価格の下落、金利の低下は債券価格の上昇を意味するため、債券価格の下落の影響を回避したことになります。
機関投資家は、資産全体に占める債券の資産額を一定程度維持するため、保有債券の中で、より有利な債券の比率を高める行動をとります。そのためにイールドカーブの形状変化を予測しています。
このように、イールドカーブ予測(どの期間・年限の金利が、相対的に他の期間・年限の金利よりも上昇・低下するかの予測)は、債券ポートフォリオの損益を変化させます。銀行をはじめとした金融機関や機関投資家にとって、全体的な金利水準の予測に引けを取らないくらい、期間別の金利変化を示すイールドカーブ予測は重要です。
そのため、債券市場参加者は、今後、日本銀行がどのように政策を変更していくのか、もしくはそのまま続けるのかについて、気になって仕方がない状況でしょう。

今好調な業界は銀行・保険・輸入企業

個人投資家も、金利上昇による株価下落を不安視しており、実際に’22年以降の米国市場は、金利上昇により、S&P500種株価指数の’08年以来最大の下落となりました。
今後のシナリオとしては、①長期金利の上限引き上げ②国債買い入れ額の縮小③マイナス金利の解除、が考えられます。①、②に踏み込むだけでも、ドル円は110円台、あるいはさらなる円高に推移する可能性があります。
円高になった場合、国内で2番目に大きな産業の製造業は、海外へ輸出をして利益を得ているため、経済の冷え込みも懸念されます。
ただし、為替が120~130円台でとどまれば、十分に円安の水準となりますので、そこまでの冷え込みは起きないと思います。
一方で、現状では、銀行、保険、輸入企業が好調を示しています。
黒田総裁の引退で円高となった場合、これらの業界はさらに後押しされます。
アナリストはエネルギー、地方銀行、証券株にも着目しています。
4月8日、日銀の黒田東彦総裁が10年の任期を満了しますので、今後の動きに注目してみるといいと思います。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP