引き寄せの法則と脳の働き「RAS」

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

近年、ポジティブシンキングの観点から、自分の思っていることが自然と現実になる(引き寄せられる)という経験則「引き寄せの法則」が、自己啓発の領域で広く支持を集めています。この法則自体は科学的に実証されていませんが、脳科学の世界では「RAS(ラス)」という脳の働きによるものとして説明することができると言います。そこで今回は、この脳の働き「RAS」に注目してみました。

RASとは

「Reticular Activating System」の略で、脳幹網様体賦活系(網様体賦活システム)という脳の機能の1つです。

RASは、人間を含めた哺乳類の脳幹にある神経細胞の集まりです。
そのシステムは

  1. 睡眠、食欲、呼吸など、あらゆる生命活動維持の機能がある
  2. 生命活動だけではなく、精神作用(やる気、意欲)もコントロールしている
  3. 情報の仕分け機能がある

RASは、自分の興味・関心のある情報を無意識に多くインプットする「フィルター」のような仕分けの役割を果たします。

人間は日々の生活の中で、五感を通じておびただしいほどの情報に触れています。脳に送られる情報は毎秒4億ビット(1ビットはPCの最小単位)で、意識に上るのはそのうち2000ビット。RASの働きがないと日々膨大な量の情報が脳に流れこんでしまい、対応が出来なくなってしまいます。もし、知覚できる全ての情報を一気に取り込んだら、脳が必要とするエネルギーが多すぎて数秒で餓死すると言われています。そのため進化の過程で情報をふるいにかけ、大事なもの(自分の興味・関心のある情報)だけを拾う「RAS」のしくみを作ったようです。

人は目の前に広がる景色、外で聞こえる雑多な音、この全てを人は「認識」しているでしょうか?

たとえば、同じ時間にまったく同じ道を歩いている2人がいたとして、「トヨタのプリウス」が欲しいと思っている人は、通過していく「プリウス」、駐停車中の「プリウス」が目に入るかもしれませんが、これからランチをしようとしている人には、食事が出来るカフェやレストランにしか目がいかない・・・。

全く同じ場所にいても、もともと考えていること(自分の興味・関心のある情報)が違うと、目に入るもの(意識に上るもの)が違うのです。

この「フィルタリング」を行っているのがRASなので、

RASを通過した現実→認識される
RASを通過しない現実→認識されない

ということになります。

◆RASと引き寄せの法則

「引き寄せの法則」も、脳科学的には
「RASによってフォーカスしたものに気づきやすくなることで起こる現象」
と説明できるでしょう。

自分の興味・関心のある情報にフォーカスして、そこへ意識のアンテナをしっかり張っていると、チャンスや方法、人脈、アイデアなどの情報に気づきやすくなりますから。それによって行動していくうちに目標が達成されやすくなっていく・・・ということ。

上図は情報を取捨選択する脳をモデル化したものです。
情報を五感で捉え、記憶や経験、思い込み、価値観、ルール、パターンといったフィルターで取捨選択した瞬間、体が何らかの反応をし(ここまで無意識)、思考し(ここから意識)行動します。このことから、「日々考えていることが変わると、RASの基準が変わる」ということがわかると思います。

なので、RASはある程度コントロールすることが可能なのです。まさに、望むことを潜在意識レベルで常に考えている状態に落とし込めるか?という話です。

自分にとって何が重要なのか、つまり何を取捨選択して意識までもってきてほしいのかをRASに伝えることで、その情報を引き寄せることができるのです。

例えば、次のような方法が考えられています。

●関心ごとを文字に起こして、毎日それを眺める
とても単純なのですが、やっていくと次第に、RASの中にその文字で書かれた内容が浸透していき、脳が勝手にそれらの情報を集めてくれるようになります。

こういう人間になりたい、こういうことにチャレンジしたい、身近な幸せをもっと感じたい、何でもいいので関心ごとを自分に浸透させていきましょう。

そうすれば、自分の中でアンテナ(RAS)が立ち、なりたい自分になるために必要な情報が意識まで上がってくるようになります。ハッキリ具体的に書けば書くほど、そうした情報が集まってきます。

●ビジュアライゼーションをする
これもまた単純で、まずは目を瞑り、頭の中で成し遂げたイメージを想像するだけです。毎日30秒で構いません。それだけで、脳は実際に起きたことと勘違いして、成し遂げることに必要な情報を勝手に収集し始めてくれるのです。

試合で勝つ、会社で昇進する、家族に恵まれる、そういったことをビジュアライゼーションすることで、脳はそうなるように情報を収集し、あなたにとってプラスになる行動を自然に行うように導いてくれるでしょう。

RASの注意点

RASを使うことによって生まれるデメリットにも留意しておかねばなりません。

1.心理的盲点がある
脳が無意識に行う情報の取捨選択の中で、「RASを通過しない現実」を「心理的盲点(スコトーマ)」と言います。RASを通過しない現実は、たとえ目の前にある現実でもその人に認識されていない「盲点」になっています。

先ほどの例で言うと、一方には人の目についたカフェやレストランは認識されていませんし、他方に人には「プリウス」はまず認識されることはありません。結果として、その人に認識されない現実は存在しないことと同義なのです。

「今聴きたいものを聞かせ、見たいものを見せているのは、自分の本来の重要性ではないのでは?」と疑ってみることです。今のあなたの重要性は、外から入ってきた情報であなたが受け入れたものだからです。

2.ネガティブな出来事を引き寄せる
RASのもう1つのデメリットは、ネガティブな出来事を引き寄せてしまう可能性があることです。

現実に起こっていることは同じでも気分によって人は常に解釈を変えています。これを心理学では「気分一致効果」と呼びます。気分をコントロールして常にいい気分でいることは潜在的に良いイメージをしやすいのです。

ポジティブで良い気分でいれば、より良いアイデアを発想し、選択し、目の前の相手の好意に気づき感謝ができるようになります。ネガティブな感情でいるとチャンスや人の好意はRASによって遮断され心理的盲点になります。自身の状態次第ではRASが不本意なネガティブな出来事を引き起こすリスクもあることを理解しておきましょう。

RASをうまく使うには、やみくもに突き進むのではなく、自分の状態や状況を冷静に客観的に見直すことも非常に重要であるということです。

以上、エゴレジ研究所から脳の働き「RAS」についてご紹介しました。ちょっとした習慣を取り入れることで、今のやることが変わってくるはずです。文字に起こしたり、ビジュアル化したり、自分のインプットを変えることで、それによってモチベーションが上がり、なりたい自分になるために必要な努力が続けられるようになります。楽しみながら、ワクワクしながらやってみましょう。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

 

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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