第12回 おいしいスペイン飯② Callos(カジョス)

鈴木留美
スペインワイン専門輸入販売の株式会社エスタリコ・ジャパン(https://www.estarico-japan.com/)のセールスマネージャー。
都内ホテル勤務中の出会いに導かれ、スペインワイン輸入販売の世界へ関わることとなる。「笑顔は幸せを呼ぶ」と「明日は明日の風が吹く」がモットーです。
好きが原動力で、いつかスペインで暮らすことを目標に現在日本語教師の資格取得に向け奮闘中。

カジョスって知っていますか?

最近グッと冷え込んできましたね。本日のお題はおススメのスペイン飯第2回目です。ワインの時より活き活きしてしまいます(笑)。これも私の大好きなお料理の一つです。最近ではご存じの方も多いのではないかと思っています。名前ではピンと来なくても、詳細を話すと「あぁ~!それね!」とおっしゃる方が多いです。

冷える、寒い、といえば、煮込みの季節の到来です。スペインは暑い国と思っていらっしゃる方案外多いように思っています。しかし、地形的に見ても首都のマドリッドの緯度は日本の青森県と同じです。私が暮らしていたバジャドリも、冬の朝は氷点下10℃くらいでした。湿度が低いので日本よりも楽ではありましたが肉襦袢必須(笑)の環境です。

また数多くの煮込み料理があるスペイン。カジョス(Callos)はそのうちの一つで、内臓(ハチの巣、ミノなど)と腸詰(チョリソなど)、ガルバンソ(ひよこ豆)のトマト煮込みです。パンが止まらなくなる危険なタパスの一つです。

イタリアンレストランでもよく見かけるメニューで、臭みが苦手で食べられないとおっしゃる方もいますが、それはその店の料理人の考え方で変わってきます。わざと臭みを残す人もいますし、きれいに洗って臭みをほとんど感じないタイプもあります。私はしっかり臭みがとれている方が好きですが、みなさんはどっち派ですか?

どこの名物料理?

どこの地域でもバルに入れば冬場はメニューに載っていることが多いこの煮込みですが、少人数用のもの(タパ Tapa)とみんなで囲んで食べるラシオン(ración)があります。よく耳にするのはカジョス・マドリレニャ(Callos a la madrireña)。マドリッド風胃袋の煮込みです。

では、ここでワンポイントスペイン語です。

マドリレニャってなんでしょう?すでに“マドリッド風”と書いているので想像が簡単にできるかと思います。そうです!“マドリッドの”とか“マドリッド出身の人”のことを言います。日本では関西人とかホニャララ県人という呼び方がありますが、スペインでは結構細かく地域の人を呼ぶ固有の言い方があります。

その一つがこのMadrireño(マドリレーニョ)、Mdrireña(マドリレーニャ)という言葉です。ご存じの方が多いと思いますが、名詞には男性女性があり、形容詞もそれに伴って変化します。もちろん“マドリッドの”という言い方もできますが、現地ではよく聞くのでご旅行の際は耳を澄ましてみてくださいね。他の例を少しだけ載せます。

Valenciano (valenciana) :バレンシアの、バレンシア人、バレンシア方言
Andalúz (andaluza) :アンダルシアの、アンダルシア人、アンダルシア方言
Catalán (catalana) :カタルーニャの、カタルーニャ人、カタルーニャ語
といった具合です。

少し話がそれていますが、みなさんはクレマ・カタラナというデザートに聞き覚えはありませんか?ずいぶん前にとても流行ったカタルーニャ地方のデザートです。なので名前がカタラーナ(catalana)。クレマ(crema)はカスタードクリームです。

オレンジ風味のカスタードクリームの表面に砂糖をまぶし、バーナーで焦げ目をつけてパリッとさせます。表面のほろ苦いキャラメル感と冷たくて滑らかなカスタードのハーモニーが絶品です。現在では定番メニューとしてスペインレストランなどで試せますのでご興味のある方はぜひお試しください!

胃袋の煮込みは家でも作れる!

お料理好きやお料理の腕に自信のある方、この煮込みは家庭でも作れます。私の友人でお料理上手な人がいますが、韓国食材店ですでに掃除済みのハチの巣を購入し、以前スペインに居た時に習ったレシピで煮込んでくれます。たくさん煮込んで冷凍しているそうです。一度ご馳走になったのですが、本当に美味しくてこんな風に作れるならレストラン要らずだなぁと尊敬しています。素晴らしい味覚を持っている人です。友達自慢はこれくらいにして、具体的にはどうやって作るのか?を書いていきます。

手に入りにくいものもあると思いますので、似たようなもので代用なさってみてくださいね。約4人分で記載します。

  • 牛のハチの巣: 訳600~700グラム
  • チョリソやお好みで血入りソーセージ(モルシージャ・morcilla): 約100グラム
  • ニンニク1かけ~2かけ
  • ロリエ
  • ホールトマトまたはカットトマト缶1つ
  • 塩: 適宜
  • 唐辛子(ほんの少しの辛みでOK)
  • パプリカパウダー: 適宜
  • スープストック(コンソメ・ブイヨンなど)4つくらい
  • 赤ワイン(残りでも料理用でも)

作り方:

  1. ハチの巣をきれいに洗って食べやすい大きさにカットする。鍋にオリーブオイル、ニンニクを入れ炒める
  2. 香りがあがってきたらハチの巣を加え塩少々も加える
  3. そこへパプリカパウダー、唐辛子を入れてさらに炒めていく
  4. 次に赤ワインを入れ煮詰めていく
  5. 煮詰まったらトマト缶、ひよこ豆、チョリソ、スープストック、ロリエを入れゆっくりと煮込む
  6. 塩で味の調整をする

スペイン料理はほとんどの場合コショウを多用しないです。お塩とニンニク、トマトソースが基本です。色々な国に支配されてきたのでエキゾチックなスパイスのお肉料理も存在しますが、そんなに多くはないと思います。でも、このニンニクとトマトのパワーが元気なスペイン人にはぴったりのイメージかもしれませんね。

説明がザックリなので(笑)、インターネットでもう少し簡単だったりわかりやすいものがあると思います。探してみてください!

カジョスにお薦めのワインはコレ!

美味しく出来上がったらやっぱり美味しいワインと合わせたいですね!私ならどんなワインを合わせるだろう?と思いました。赤しか浮かびません!しっかりしたお料理なのでしっかりと樽の香りも楽しめる赤ワインがいいなと思います。そこでお薦めしたいのは、前回のご褒美ワインの回でご紹介したテラ・インコグニタを醸造しているワイナリーのロブレ・ブラック(Roble Black)です。こちらは樹齢50年の自社畑のテンプラニジョを100%使ったしっかり目のワインです。

ジャケ買いをされる方もかなりの数いらっしゃると思いますが、ブドウの古木の写真をエチケットに用いていて見た目にもカッコいいアイテムです。

フレンチオークの樽で8ヶ月間熟成をしたのちに瓶の中で3ヶ月熟成をしています。アルコール度数は14度の、力強い赤ワインです。宣伝になりますが(笑)弊社ホームページ内のECサイトでご購入いただけます。秋が深まっていくこの季節にぴったりのワインです。

https://www.estarico-japan.com/?p=116

緊急事態宣言が解除され、ワクチン接種率もアメリカを抜いた日本、ビフォーコロナとはスタイルが変わったとしても少しずつ人が集って楽しくお酒が飲めるようになると信じて。

〈プロフィール〉

都立高校卒業/東神開発株式会社へ入社、玉川高島屋S.Cにて受付業務/その後株式会社ミキインターナショナルにてイタリアンレストラン勤務をしながら、2回のスペインへ留学、スペインバル草分けの恵比寿Tio Danjo勤務/生花店勤/病院勤務(医療事務資格取得)/某メガバンクコールセンターSSV/製パン/日本初出店マヨルカ勤務を経て現在はホテル勤務とワインの仕事の二足の草鞋を履いております。てんぷら(スペイン語豆知識)

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