スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
12月も半ば、この時季の不調の要因として挙げられるのが、まず日ごとの寒暖差よる自律神経の乱れ。加えて年末に向けての慌ただしさで“いつもと違う”状況が続くために、ストレスだけでなく、日々の食生活や栄養バランスの乱れもメンタルの不調を引き起こす要因になるようです。そこで今回は、この時季の心を元気にする栄養素についてのお話です。
メンタル不調と栄養素
食や栄養素とメンタルヘルスがいかに関係しているか、世界的に研究が進んでいます。その領域を『栄養精神医学』と呼びますが、近年メンタル不調と栄養素との関連が徐々に注目を集めています。バランスよく食事をすることは基本ですが、多くの方に不足しがちなのにメンタルやストレスとの関係が深い成分があります。
4つの”タシテヨ食材“
帝京大学医学部附属病院メンタルヘルス科の功刀浩先生は、さまざまな検査・分析の結果からメンタル不調改善には欠かせない食材を『タシテヨ食材』と名づけ、積極的な摂取を呼びかけています。週刊女性PRIMEに掲載されました。
功刀先生のいう『タシテヨ食材』とは、タンパク質・食物繊維・鉄・葉酸を豊富に含む食材のこと。どれも、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質の合成に欠かせない栄養素で、きちんと補うようにすることで心をポジティブに保てます。
タ タンパク質は、20種類のアミノ酸から構成されていますが、その中には記憶や感情を司るドーパミンなど神経伝達物質の原料となるトリプトファンやフェニルアラニンといった必須アミノ酸も含まれています。これらが不足すると、気分や感情に影響が出てしまいます。
タンパク質は魚や肉からとれる「動物性タンパク質」、ヨーグルトなどの乳製品や豆腐や納豆などの大豆製品からとれる「植物性タンパク質」をバランスよく摂取しましょう。
シ 食物繊維は、腸内細菌のエサとなり、腸内の善玉菌を増やしてストレス反応を減らします。また、血糖値の上昇を穏やかにする、コレステロール値を改善するなどの効果もありますが、私たちのメンタルケアにもつながります。
芋類や豆類、ごぼうなどの野菜や果物、海藻類など食物繊維を含むさまざまな種類の食材を取り入れましょう。
テ 鉄分は、人体でさまざまな生体活動の補助をする”必須ミネラル”の一つです。鉄分は、神経伝達物質である「ドーパミン」「ノルアドレナリン」「セロトニン」などを合成するときにも必要です。鉄不足になることで精神的にも不安定になり、しだいに自律神経にも狂いが生じ始め、ストレス障害を起こす原因にもなります。
鉄を効率よく摂取するために、鉄の吸収を促す作用があるビタミンCを含む食べ物を一緒に摂ることが大切です。緑黄色野菜や果物などに多く含まれています。また胃酸が十分に分泌されていると、鉄の吸収が高まります。まずは、よく噛んで食べると胃酸の分泌を促すことができます。また柑橘類やお酢などの酸味のあるものを食べると胃酸が分泌されやすくなります。
ヨ 葉酸(ビタミンB9)は、うつ症状の発症と関係している可能性が示唆されています。血中の葉酸が低いと脳の神経細胞の炎症リスクが高まり、認知症を発症する確率が高いとも言われています。
食事性葉酸は、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜や果物、のりなどの藻類、レバー、玉露に多く含まれます。葉酸は水溶性ビタミンであり、ゆでると溶け出てしまうため、ゆでるよりは炒めるほうが損失は少ないと考えられます。また、葉酸は熱に対して不安定なので、加熱調理は短時間で済ませるのが良いでしょう。
メンタルの不調を癒やし、うつ病のリスクを下げる食材を効率的に摂取できるメニューとして、オススメなのが玄米や雑穀米におみそ汁、魚や野菜を多く使った伝統的な和食メニューだそうです。実際、野菜や果物、大豆製品、きのこ、緑茶を摂取する健康的な日本型の食事スタイルの傾向が高い人は、肉や卵、パンや菓子類を多く摂取する欧米型の食事スタイルの人よりもうつ症状が少ないという研究データもあるようです。
功刀先生は、つぎのようにアドバイスされています。
「理想は、“タシテヨ食材”を使った昔ながらの和食メニューの食生活。でも忙しい毎日の中で、すべての料理を自分で用意するとなれば、それだけで気が重くなり、心の負担となってしまいます。まずは毎日の食事に『タシテヨ食材』をプラスする、もしくは置き換えるというところから取り組みましょう」
メンタルにも悪影響—食べ過ぎNG!
落ち込みやすい人、やる気が出ない人は食べ過ぎていないか要チェック。
✓精製された糖質
甘いものや炭水化物は、脳が疲れている時に食べるべき、というイメージを持っている方も多いと思いますが、食べ過ぎには注意が必要です。白米や小麦粉(パスタ、パン、うどん)、白砂糖など、精製された糖質はそのおいしさから過食しやすい一方で、摂取できる栄養素が少ないため、「太っているのに栄養不足」の状態を引き起こす要因に。
不安な時に糖分をとるという癖がついてしまうと、ストレスに負けやすくなり、依存してしまうことが起こり得ます。
✓超加工食品
ポテトチップスやカップ麺などの加工を繰り返した「超加工食品」は、手軽で味もよく、食べやすい反面、カロリーや塩分過多になりやすく、肥満の原因に。肥満はうつ病のリスクを高めるので、食べ過ぎないで。
✓砂糖たっぷりのお菓子やジュース
市販されているケーキやキャンディーなどのお菓子類や甘いジュースには精製された糖質である白砂糖がたっぷり。とりすぎると高血糖を招き、糖尿病や肥満に直結するおそれも。
こんな食習慣は要注意!
つぎのような食習慣では、食事の回数や量に関わらず、メンタルが弱くなる原因にもなります。
・外食が多い。 ・脂っぽい食事が好き。 ・加工食品を食べることが多い。 ・野菜不足を野菜ジュースで補填している。 ・炭水化物中心の食生活をしている。 ・コンビニの商品を食べることが多い。 ・甘いものが好き。 ・1食のメニューが、1~2品のことがほとんどだ。 ・アイスなど冷たいものを食べることが多い。 ・1日1食や2食で済ませている。 ・緑黄色野菜を毎日食べていない。 ・肉中心の食生活になっている。 ・よく噛まず、数分程度で食事を終える早食いだ。 |
米国ニューヨーク州立大学のグループは、以前の研究から食事の質がよいとメンタルが改善するという結果を得たところから、さらに食品を細かく分類したうえで、メンタルへの影響を分析しました(2021)。
そこで判明したのは、女性は男性に比べて、不健康な食生活によるメンタル面での悪影響を受けやすいこと。そして運動は、食品とメンタルとの関連性を強化したり、弱めたりして、一部の不健康な食べものによる悪影響を緩和することもわかりました。たとえば、女性の場合、ファストフード、カフェイン、高GI食品、そして朝食抜きはすべメンタル不調につながりました。一方、果物と緑黄色野菜を多くとっているとメンタルによい影響があり、運動は高GI食品とファストフードによるメンタル面の悪影響を軽減しました。
食事と運動などのライフスタイル要素を、それぞれに合ったもっともよいものにすることで、メンタル面の幸福につながると研究グループは結論。食事と運動は、女性のメンタル面の健康を守るうえでいちばんの予防策になると指摘しています。
以上、エゴレジ研究所から心を元気にする栄養素についてご紹介しました。おいしいものを食べると幸せになり、食生活が乱れていると気持ちもすさみます。過去の研究から、睡眠、食事、運動は、体だけでなく心の健康にも大切だという認識が広まりつつあります。メンタルヘルスに良い栄養素を意識的に摂取することで、ストレス耐性が向上し、日常生活や仕事においても良い影響が得られます。健康的なメンタルを維持するために、日々の食事を工夫してみましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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