メンタルモデルで可能性を広げよう!

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

人は無意識の中にも判断や解釈の前提となる無意識の価値観=メンタルモデルを持っています。同じ事象でも、その人のメンタルモデルによって認知のあり方は変わってきます。同じ失敗しても克服しようとするのか、ストレスのかかる場面を回避するのか、そこにメンタルモデルが影響を与えています。そこで今回は、自分自身の可能性を広げることができるメンタルモデルについてのお話です。

メンタルモデルとは

メンタルモデルは、現実を認知する前提にある思い込みや既成概念を意味しています。
20世紀初頭に心理学者ジャン・ピアジェが提唱しました。その後、さまざまな分野の研究者によって発展が続けられ、現在では経済学や経営学、教育学などの分野でも広く応用されています。

人間は物事に対して見る、聞く、考えるといった認知活動とともに生きています。
メンタルモデルは、無意識に「ああなればこうなる」と考えるような行動に対するイメージを表現したものです。具体的には、以下のような特徴があります。

1.過去の経験から形成
メンタルモデルは、個人の過去の経験や学習、育った環境や文化などから形成されます。経験が基になっているため、人はその形成されたメンタルモデルを前提として物事の状況を判断したり、行動したりします。

2.リソースの節約
メンタルモデルは、脳のリソースを節約するために使われます。脳が使える集中力には限りがあり、いちいち0から思考していては燃費が悪いため、当たりをつけて考える範囲を狭めています。初めて遭遇する人やモノであっても、似たようなケースのメンタルモデルが捌いてくれるので、ある程度うまく処理することができます。

3.広範な現象
メンタルモデルは特定のケースで見られる心理現象ではなく、あらゆる思考に共通する広範な現象です。例えば、あいさつを選択をする際にもメンタルモデルが働いています。

4.異なる文化や環境での違い
育ってきた環境が異なれば、持っているメンタルモデルも異なります。例えば、日本人と欧米人の食べ物に対するメンタルモデルの違いや、多神教の日本と一神教の違いがあります。

メンタルモデルの弱点

メンタルモデルという固定観念があることによって、日常生活で困ることはほとんどないでしょう。ですが、固定観念はときに自分の思考や行動を縛り、可能性を狭めてしまう弱点もあるのです。

メンタルモデルの弱点の一つは、過剰な信頼や固定観念が生じることです。自分のメンタルモデルに過度に依存すると、新しい情報や視点を取り入れることが難しくなり、誤った判断を行う可能性があります。
もう一つの弱点は認知バイアス。メンタルモデルが原因で起こる、情報の歪みや誤った判断のことです。例えば、確証バイアスや錯視などが、メンタルモデルに起因する認知バイアスの例です。

こうしたメンタルモデルの弱点を克服するためには、自分が知らない世界に触れる必要があります。
大きく2つの方法があります。

✓異文化に触れる
✓リベラルアーツを学ぶ

まず異文化に触れるとは、外国人と接したり、年齢が離れた人と接したりすることです。いまの自分とは異なる属性を持った人と交流しましょう。自分とは異なるメンタルモデルを持っている人と交流すれば、あなたがこれまで当たり前だと思っていた(あるいは気づいてもいなかった)固定観念が、実は当たり前じゃなかったと気がつきます。

そしてリベラルアーツも有効です。具体的には、歴史や哲学、宗教や美術といった人文科学の領域です。リベラルアーツは若干誤解されていますが、本来は、狭い思考から自身を解き放ち、多様な思考を持つための土台になる知識です。そもそもの目的が固定観念の破壊にあるのです。

メンタルモデルを構築するために

メンタルモデルの弱点を理解したうえで、個人が効果的なメンタルモデルを構築するためには、多様な情報源から学び、自己反省やフィードバックを通じて自身のメンタルモデルを更新することが重要です。

ニューヨークタイムズのベストセラー「ATOMIC HABIT」の著者ジェームズ・クリアは、「メンタルモデル:新しい方法で考えるように脳を訓練する方法」として次のような提言をしています。

1. 専門領域外の本を読む
周りの人と同じものを読んでいるだけでは考え方も似通ってしまいます。そんな状況では同じようなものの見方しかできません。ですから、同じグループに所属する人が読まないような本を読むか、自分の興味がない本を読むのがいいでしょう。つまり、予期せぬ場所で答えを探すのです。
良質な本を広く読み、一見無関係に見える分野の基礎を学び、大きく異なる人生経験を持つ人々から学ぶことを意味します。

2. 一見無関係なアイデアをつなぐアイデアウェブを作る
本を読んだり、誰かの講義を聴いたりして新しい情報を得たら、それを既知の情報とつなげる方法をいくつか書き出してみてください。とかく私たちは、知識を分断してとらえがちです。あるアイデアは経済学、あるアイデアは医学、あるアイデアは芸術史といったように、分けて考えてしまうのです。これは、学校教育の弊害といえるでしょう。現実の世界では、そんな風に情報が分かれているわけではありません。

たとえば、先日テレビで見たドキュメンタリーでは、エジプトのピラミッドのデザインと、動物の戦いの儀式を関連付けていました。出演していた歴史学者によると、動物は戦うとき、後ろ足で立つことで身長を高く見せ、自分が優位であることを示そうとします。これと同じで、エジプトで新しいファラオが権力の座に就くと、権力の象徴として、非常に高い建造物を建てることで、自分の優位を主張しました。この説明は、一見まったく異なる分野(建築、古代歴史、動物行動)を関連づけることで、話題に対する理解を深めている例といえるでしょう。
同じように、専門外の分野から得られたメンタルモデルによって、あなたの主要な関心分野の理解レベルが深まることがあります。

また、行動科学が専門の米国の哲学者エイブラハム・カプランは、著書『The Conduct of Inquiry』において、「金槌をもらった少年は、何でも叩きたがるようになる」という道具の法則を紹介しています。
この法則は、有名なことわざ「金槌しか持たない者は、すべてのものが釘に見える」とよく似ています。ものの見方の枠組みが1つしかない人は、すべての問題をその枠組みに当てはめようとするのです。だから、持っているメンタルモデルの数が乏しいと、解決策を見いだせる可能性も乏しいことになります。たくさんのメンタルモデルを持っていれば、正しい答えを得るための選択肢が増え、問題解決能力が向上します。本当に頭の切れる人と、そこら中にいる賢い人との違いはそこにあります。幅広いメンタルモデルを持つことが重要です。道具をひと通りそろえておけば、どんなシチュエーションにも対応できるベストツールを選ぶことができ、複数のメンタルモデルを自由に使いこなせるのです。

以上、エゴレジ研究所から自分自身の可能性を広げることができるメンタルモデルについてご紹介しました。メンタルモデルは、仕事でもプライベートでも自分の行動や選択をよりよいものにするために大切です。また、メンタルモデルの存在を知っておくと、人それぞれ受け止め方が違うことを意識でき、他人に対してもどのようなメンタルモデルがあるのか考えることで相手への理解が深まります。メンタルモデルは個人ごとに異なりますが、柔軟に適用し、成長させていくことが大切です。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP