スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
クラシック音楽を聴くと、脳にアルファ波が出てリラックスできるという話を聞いたことがあると思います。それとよく似た現象として40Hz(ヘルツ)という周波数の『音』や『光』の刺激を受けると、脳内で40Hzの波長をもった脳波が出るという報告があります。そこで今回は、その『ガンマ波』についてのお話です。
米国の視覚と聴覚の「ガンマ波」刺激実験
認知症の6~7割を占めるアルツハイマー病は、脳内にアミロイドβ(ベータ)というたんぱく質が蓄積して正常な神経細胞を破壊し、記憶を司る海馬を委縮させてしまう病気と考えられていいます。
WHOは認知症のリスクを低減する12項目のガイドラインを発表。運動や生活習慣の改善といったアプローチに加え、五感からの刺激を通じて、脳に刺激を与える認知的介入が注目されています。中でも国内外で研究が進んでいるのが聴覚刺激です。
米国マサチューセッツ工科大学のリーフエ・ツァイ(Li-Huei Tsai)博士らは、ガンマ波による刺激を、アルツハイマー病モデルのマウスに与えると〝脳内ゴミ″のアミロイドβが減少することを英科学誌『Nature』や米科学誌『Cell』に発表、注目を集めていいます。
1.40Hz周期の光刺激によって、視覚野でガンマ波が発生しアミロイドβタンパク質が減少 ~Nature,2016
アルツハイマー型認知症の病態を再現したマウスに、40Hz周期の光(1秒間に40回の周期で点滅する光)を1日1時間当てることで、視覚野でガンマ波が発生し、アミロイドβタンパク質が著しく減少することを発見しました。
2.40Hz周期の音刺激で、聴覚野と海馬でガンマ波の発生・血管新生・アミロイドβタンパク質減少・記憶障害の改善を確認 ~Cell,2019
40Hz周期の光を当てた1.の研究結果を受けて、アルツハイマー型認知症の病態を再現したマウスに、さまざまな周期の変調音を持続的に聴かせる試験が行われました。
その結果、40Hz周期の変調音(1秒間に40回鳴る音刺激)によって、聴覚野と記憶の司令塔といわれる海馬でガンマ波が発生し、蓄積したアミロイドβタンパク質の有意な減少が確認できました。さらに、脳内のごみを除去できるグリア細胞の数が上昇し、血管変化(新生)が高まっていたのです。また、40Hz周期の変調音を聴かせたときのみ、物や場所についての認知機能障害の改善がみられました。
この研究によって、40Hz周期の変調音でアルツハイマー型認知症が改善される可能性が示されました。
慶應義塾大学 医学部眼科学教室の坪田 一男教授は次のようにコメントされています。
「2つの研究成果から言えることは、視覚と聴覚という感覚刺激が、脳を守るために非常に重要だということです。眼と耳からの刺激が脳のエイジングを遅くする可能性です。
また、興味深いのは、眼と耳からのガンマ波刺激を組み合わせると、視覚野、聴覚野、海馬だけではなく前頭前皮質なども含めて、脳全体でミクログリアが活性化され、アミロイドβの蓄積が除去されることです。また、視覚と聴覚によってガンマ波刺激を加えると、脳神経に栄養を送る細胞が増え、新たな血管が作られる“血管新生機能”も高まることが報告されています」
※ガンマ波とは、僧侶が瞑想したり、指揮者がオーケストラを指揮したりと、人が非常に集中したときに出る脳波です。普通、周波数31~120Hzの脳波をガンマ波と呼びますが、アルツハイマーを改善する作用があるのではないかと注目されている波長は限定されていて、40Hzです。
日本での40Hzの「ガンマ波サウンド」共同研究
今年4月、「ガンマ波テクノロジー 認知機能ケア」の最新動向発表会(主催・ウェルネス総合研究所)が行われ、塩野義製薬とPxDT(ピクシーダストテクノロジーズ)は、薬に頼らず認知症の予防や認知機能の改善ができる社会の実現を、異業種連携(NTTドコモや三井不動産など4社がパートナーとして参加)でめざし、「ガンマ波サウンド」という音を活用した認知機能ケアにそれぞれ取り組む方針を発表しました。
このイベントで基調講演を行った杏林大学医学部名誉教授・古賀良彦氏は、
「認知症は人のウェルビーイングにとって最大の問題で、脳を積極的に活性化する一つの大きなカギが40Hzの波だ。取り組みはまだ緒についたばかりだが、安全性や効果を検証すれば認知症予防に有用な手段になるのではないか」と述べています。
「ガンマ波サウンド」は、テレビやラジオなどの音をリアルタイムに40Hz周期の音に変調することができる特殊な技術(以下、「ガンマ波変調技術」)を用いた、生活をしながら認知機能をケアできる可能性がある音のことです。
これまでの研究で用いられた40Hz音は音声情報などを含めることの出来ない単調なパルス音であり、毎日長い時間聞き続けるには負担が大きく、日常生活の中に取り込みづらい可能性がありました。
この課題を解決するため、塩野義製薬とPxDTでは、テレビやラジオなどの音をリアルタイムに40Hz周期の音に変調することができる特殊な技術(ガンマ波変調技術)を用いた「ガンマ波サウンド」を共同で開発し、ヒト脳内でのガンマ波が惹起されることを確認しています。
PxDTによると、実際にTVで流れている「ニュース」番組と「音楽」番組を音源にした「40Hzガンマ波サウンド」で脳波の測定をおこない、「ガンマ波サウンド」にはさまざまな波形の音を用意。40Hzパルス音、無変調音と共に検証した結果、ナレーションやボーカルの明瞭度を損なわないことが期待される「40Hzガンマ波サウンド」の音刺激であっても、脳内のガンマ波の同期を確認でき、テレビの音を利用した認知症の新しいケアの可能性がさらに拓けました。
そして、シオノギヘルスケアとPxDTが、ガンマ波サウンドを日常生活の中で自然と聴くことができるテレビスピーカー「kikippa(ききっぱ)」を発売しました。
塩野義製薬の知見×PxDTの五感刺激技術で、日常の音が認知ケアになるとのこと。
「ガンマ波変調技術」を搭載したkikippaは、これまでの生活を変えることなく40Hz変調音を自然に取り入れることを意図して開発されており、テレビ本体に接続後、リモコンもしくは本体の切り替えボタンを押すだけでガンマ波サウンドモードが ON になり、テレビの音声が40Hz変調音に切り替わります。LTE通信モジュールが内蔵されていて、Wi-Fi設定が不要で常に最新の研究結果が自動反映されるなど、デザインやコンパクトなサイズ、音声の質にもこだわり、生活に溶け込みやすい設計となっています。
PxDT社のHPでは、40Hzに変調した「ガンマ波サウンド」を体感できます。
【認知機能に作用する】自然な音「40Hzガンマ波サウンド」を共同開発。 (gammawavesound.com)
以上、エゴレジ研究所から、今注目の「ガンマ波」についてご紹介しました。人生100年時代、脳の健康は幸せに欠かせないものです。ガンマ波サウンドは、認知症予防以外にも、記憶力やワーキングメモリの向上、ストレスの軽減、睡眠の質の改善などの効果が期待できるという研究結果もあります。今後、研究が進むことで、音刺激によるガンマ波発生により認知機能を改善する商品やサービスへの期待が高まっています。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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