読書とストレス解消

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

毎年10月27日~11月9日の2週間は「秋の読書週間」です。秋は暑さが過ぎ去って過ごしやすい季節なので、ゆっくり読書をして過ごすのに適しています。人間の集中には気温や湿度が関係しており、さまざま研究報告を見ると22度前後の気温が集中に適しているようです。そこで今回は、読書とストレス解消についてのお話です。

読書とメンタルヘルスの研究

読書がメンタルヘルスに良いとされる以下のような研究があります。

1.ストレスの軽減: 読書は脳を別の世界に引き込むことで現実の問題から一時的に離れ、心の中に平穏をもたらすことができます。これにより、ストレスが軽減されることが多くの研究で示されています。

例えば、2009年に行われたイギリスのサセックス大学の研究がります。その研究では、読書をスタートしてから6分後に、ストレスがかかって交感神経が優位になっていた状態から、副交感神経優位に切り替わっていくことが判明し、6分間の読書でストレスレベルが平均で60%も低下することが示されました(”Reading ‘can help reduce stress’”, The Telegraph, 2009)。音楽鑑賞やコーヒーブレイクなどよりも、“たった6分間の読書” のほうがストレス解消効果は高かったのです。
本に没頭することで、良い意味でストレスや心配事から逃避できるから、と研究者は分析しています。
また、2016年に行われたイギリスのヨーク大学とニュージーランドのオタゴ大学の共同研究「The impact of reading for pleasure on life outcomes」では、楽しむための読書がメンタルヘルスの向上に寄与するという結果に加え、定期的な読書習慣が社会的なスキルを向上させ、生活満足度を高めるとの結果も得られました。

2.共感力の向上: 読書、特にフィクションの読書は、他者の視点を理解する力を高めることが示されています。これは他者の思考や感情を理解し、共感する能力で、メンタルヘルスを向上させる要素とされています。
例えば、2013年のNew School for Social Researchの研究では、文学フィクションを読む人は他者の感情を読み取る能力が高まる(心の理論を改善する)ことが分かりました(”Reading Literary Fiction Improves Theory of Mind”, Science, 2013)。この研究によれば、特に文学作品の読書は他人の視点を理解する力を育て、これがコミュニケーション能力の向上やストレスの軽減につながるとされています。

3.認知機能の向上: 読書は言語理解、語彙力、そして記憶力の向上につながります。これらの認知機能は一般的なメンタルヘルスと密接に関連しており、老化による認知機能の衰えを遅らせることが示されています。
例えば、Rush University Medical Centerの2013年の研究では、生涯を通じて読書を続ける人々は認知衰退を27%減少させることが示されました(”Frequent brain-stimulating activities in old age associated with decreased risk of Alzheimer’s disease”, Neurology, 2013)。
また、Brain Regions: fMRI Evidence for Semantic Grounding in a Novel Sensory Modalityでは、読書が脳の様々な部分を活性化させ、それが新しい視点を提供し、思考の柔軟性を増すことが示されています。

読書がストレス解消になる理由

読書がストレス解消に効果的である理由には、以下のような要素が考えられます。

1.没入体験: 読書は、人を物語の世界に引き込む力があります。これは”没入”または”フロー体験”とも呼ばれ、この状態では周囲の世界から一時的に距離を置き、物語の世界に完全に集中することができます。この結果、現実の問題やストレス源から一時的に離れ、心のリラクゼーションを得ることができます。

※年間700冊以上の読書量を誇る印南敦史氏は、「フロー・リーディング」という読書法を提案しています。フロー・リーディングとは、「その本に書かれた内容が、自分の内部を「流れていく」ことに価値を見出す読書法」です。つまり、内容を無理に頭に入れようとせず “音楽のように” 流していき、そのなかで自らが気になった言葉やフレーズだけを自らの知識や財産にしていくというものです。音楽を聴いてその音の配列や歌詞を完璧に覚える必要がないように、読書も、自らの琴線に触れて頭に残った部分にこそ価値があると言えるのではないでしょうか。

2.情緒の安定化: 物語は、読者が主人公や他のキャラクターの経験や感情を理解し、それに共感する機会を提供します。この共感的な経験は、読者の自身の感情を落ち着かせ、理解するのに役立ちます。これは特に、自分自身のストレスや問題に直面しているときに有用です。

3.マインドフルネスの促進: 読書は意識的な注意と集中を必要とし、現在の瞬間に集中することを助けます。これはマインドフルネス(今ここにいる意識)と呼ばれ、ストレスを軽減し、心の平静をもたらします。

以上のような理由から、読書はストレス解消に有効であると考えられています。ただ、これらの効果は読書の時間や頻度、さらには読む内容によっても異なり得ることを理解しておいてください。

心に優しい読書

「心に優しい読書」についての研究があります。それは2015年に英国のリバプール大学のBillington氏らによって行われ、その結果、フィクションと詩の読書がストレスや不安を軽減し、同時に自尊心を向上させるという結果が得られました。「共感と認知理論の観点から読書と心の健康を考える」(“Reading and Mental Health: Literature Review and Empathy Study”) というタイトルの論文でこの研究が詳述されています。

この研究では、詩やフィクションを読むことによって感情が高まり、共感力が高まるという結果が見られました。それは、読書が他者の視点を理解する手段であり、それが結果的に自尊心や自己理解を高め、ストレスや不安を軽減するのに役立つからです。

また、2013年に行われた別の研究では、リラクゼーションとストレス軽減について調査しました。この研究では、読書が音楽を聴くこと、コーヒーブレイクを取ること、散歩することと比較して、最も効果的なリラクゼーション方法であることが示されました。

特定のジャンルがストレス軽減に特に有効であるとする具体的な証拠は限られていますが、興味のない内容、難しい内容は逆にストレスになる可能性があります。サセックス大学の研究では、「どんな本を読むかは全く問題でなく、面白い本に夢中になることで、心配事やストレスから逃れることが重要」という報告もあります。

紙の本を読む

そのほかにも、健康面での読書の効果がさまざまな研究や論文で発表されています。

例えば、米イエール大学の疫学・公衆衛生研究室によって行なわれた研究によれば、1週間に最大で3時間半の読書をする人は、本を読まない人と比べて、その後の12年間で死亡率が17%も低くなることが明らかになっています。
また、ほかにも、米ラッシュ大学医療センター病院は、読書をすることで将来的な認識能力の衰退が32%も遅くなるという研究結果を発表しました。
さらには、睡眠の導入としての読書の効果・アルツハイマー病のリスクの低下・うつ病改善など、挙げたらキリがないほどです。

ただし、気をつけなければいけないのがブルーライト。タブレットやスマートフォンなどで電子書籍を読むのは、むしろ睡眠を阻害し自律神経も乱れてしまいます。特に、寝る前に本を読む習慣がある人は注意が必要でしょう。
それに、紙の本のほうが内容が頭に残りやすいという研究結果もあります。健康面、そして読書本来の目的、どちらの面で考えても、電子書籍ではなく紙の本のほうが良さそうです。

以上、エゴレジ研究所から読書とストレス解消についてご紹介しました。ストレスの解消法は人によって異なりますが、読書も選択肢の1つとして試してみてはいかがでしょうか。読書が好きな人はもちろん、日頃から本を読まない人も気分転換として取り入れてみてはいかがでしょうか。知識や感性を磨きながら、日々のストレスを解消していきましょう。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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