ストレス、笑い、免疫力。

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

ストレスを軽減し、免疫力を高める「笑い」が体にいい影響を与えることは、研究の最前線で次々に検証されています。でもコロナ禍でマスクをして街を歩いている人たちの表情は明るいとは言えません。本当はこういう時だからこそ、にこやかに笑顔で過ごした方がいいのです。暗い顔のまま過ごしていると、免疫力が落ちて、感染しやすくなってしまうかもしれません。ある程度意識してでも笑いを作る工夫が私たちには求められています。そこで今回は、ストレスと笑いと免疫力についてのお話です。

ストレスは、免疫力の大敵

人はストレスをうけると脳の視床下部というところからホルモンがでて、その刺激で副腎皮質からコルチゾールがでるという仕組みになっています。これはステロイドホルモンと呼ばれるもので、たんぱく質と脂肪を分解させたり血糖値の上昇、免疫の抑制作用を示します。そのため、これが増えることによりNK細胞が減り、免疫力も落ちてしまうのです。
体の冷えや水分不足、行き過ぎた運動などによる筋肉疲労などの物理的ストレスは免疫力を奪いますが、それ以上に精神的なストレスが、免疫力を低下させる原因になることがわかっています。

「笑い」(快・充足)や「泣く」(溜め込まない)ことが免疫力を活性化させ、逆に「腹が立つ」「辛い」「怖い」「不安」「心配」「我慢」と言ったストレス(不快・非充足)が、免疫力を低下させるのです。

笑顔には、自分の身体も内面も、そして周りにまでよい影響をもたらす力があります。だからこそ忙しい時や苦しい時ほど、笑うことが大切なのではないでしょうか。

笑いのメカニズム

日本でも笑いのメカニズムや医学的な効果について研究が進んでいます。関西福祉科大学の志水彰教授は以下のように笑いを3つに分類されています。

第一が「快の笑い」。楽しい感情になった時に表れます。
第二が「社交上の笑い」。あいさつの時などに浮かべ、コミュニケーションの道具になります。
第三は「緊張緩和の笑い」。緊張が緩んだときに漏れる表情です。

いずれも健康にプラス効果 があり、効果のほどは「緊張緩和」「快」「社交上」の順だそうです。サラリーマンの場合は社交上の笑いが6-7割を占めるといわれています。

笑いのメカニズムは、まず笑いを引き起こす外界の刺激が、目や耳を通 って脳に入る。例えば「快」の刺激は感情の中枢である辺縁系に入る。辺縁系は、自律神経中枢である視床下部と情報のやり取りをします。笑いはTPO(場所や状況)による使い分けが求められ、大脳新皮質の許可を得て、大笑いしたり、押さえ気味に笑ったりするのです。

志水彰教授によれば、笑いは人間の健康に2つの側面 でプラス効果をもたらすことが、科学的に立証されています。

1つが病原菌を退治する免疫力を高める効果で、大阪大学医学部精神医学教室では、笑いが、がん細胞を駆逐するNK細胞を活性化することを実験で明らかにしました。

もう1つが、ストレスを軽減する効果です。ストレスが高まると、交感神経が優位になり、アドレナリンやコルチゾールなどのホルモン分泌が増え、脳の温度が上昇します。笑うと、副交感神経が優位になってホルモン分泌が減少、脳の温度が下がることが志水教授らの実験で立証されています。

さらに体内での効果以外にも、志水彰教授は3つのユニークな特色を指摘されています。
その1が「伝染効果」。落語のビデオに笑い声を録音しておくと、つられて笑いやすくなります。逆に、組織のトップがいつも苦虫をかみつぶしたような表情をしていると、部下もほとんど笑わなくなります。

その2が「しわの効果」。楽しくもないのに、周りに合わせて愛想笑いばかりしていると、ゆがんだ表情になるようです。眼輪筋、大頬骨筋など顔の表情筋は、心から笑う時には左右対称に動くのですが、心を押し殺した笑いだと非対称に動きます。繰り返しているとしわも非対称になり、顔がゆがんでみえるということです。

その3は「顔面フィードバック」。愛想笑いでなく、ほほ笑みの表情を意図的に作ると、なぜか気分も楽しくなる。顔の筋肉の動きが脳へフィードバックされ、それに応じた脳のプログラムが呼び出され、楽しい感情がわいてくるのだそうです。

加齢でストレスが増し、笑えなくなる

つぎに大阪大学大学院医学系研究科の大平哲也先生(公衆衛生学准教授)の健康ゼミナール「笑いは元気の元!~笑いで健康づくり~」でのお話をご紹介します。

「笑い」に関する様々なデータの中で、「声を出してよく笑う」を性別でみると、男性40%、女性60%で、女性のほうがよく笑うことが分かっているとのことです。

世代別では、「よく笑う」は30代が65%、40代が50%、50代が45%です。やはり年齢が若いほうがよく笑うようです。

なぜ年齢を重ねるにつれて笑わなくなるのか。これについては、ストレス説が有力です。年齢とともにストレスが増え、笑えなくなるということです。ただ、先の調査では、人生で最もストレスが多いのが30代、40代ですが、60代、70代のほうが「笑い」の回数が少ないことから、ストレス以外の要因も大きいのではないかとの見方もあります。

つまり、脳機能が「笑い」と密接に関係しているのではないか、ということです。ただ、「笑い」により脳機能が高まるのか、脳の認識機能が高いことから「笑い」が促されるのか、どちらが先なのかということは、今のところまだよく分かっていません。

「笑いの頻度と1年後の認知機能との関連」について調査したところ「ほぼ毎日笑う人」と「ほとんど笑わない人」では、後者のほうが1年後の認知機能の低下が大きいという調査結果が出ています。しかしこれも、「笑わなければ認知症になりやすい」ということまでは断言できないとのことです。

とはいえ思春期には、お箸が倒れても笑うといわれる通り、およそ1日300回も笑い、年齢とともに笑いは徐々に減少して、70歳代になると1日平均2回くらいしか笑わなくなるといいます。笑いを維持することで健康増進の一助としたいところです。
コロナ禍による自粛生活や忙しい仕事、ワンオペ育児…私たちの暮らしの中には、油断すると心がまいってしまいそうな出来事がたくさんあります。でも、そんなときだからこそ笑える余力が少しでも残っていたら大きな声を出して笑ってみませんか?

以上、エゴレジ研究所から、ストレスと笑いと免疫力についてご紹介しました。「微笑み」や「笑顔」は脳をリラックスさせますが、意識的に声を出して笑うほうが脳だけでなく全身に与える運動効果が高いそうです。笑うことは、だれにも簡単で効果的なストレス発散法です。笑顔には気持ちをリラックスさせる効果があります。イライラしたり焦ってるなと感じたら、マスクの下でも笑顔を心掛けてみましょう。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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