自分「スイッチ」のオンとオフ

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

仕事中でも家でも、メールやSNSなどから、私たちの脳には毎日大量の情報が入ってきます。脳がそれを処理しきれないと、考える力だけでなく、やる気も低下してしまいます。さらにリモートワークなどの影響で業務時間という概念が希薄化し、仕事と私生活の境界があいまいになった結果、「脳に情報を入れ続けている状態」つまりスイッチは常にオンの状態になってしまっていませんか。常にオンの状態はストレスの大きな要因となりかねません。そこで今回は「常時オン」の弊害を最小限にとどめる自分「スイッチ」のオンとオフについてのお話です。

脳のON-OFFスイッチ

「オン」と「オフ」の切り替えが必要な第一の理由は、「脳を守るため」にほかなりません。情報を入れっぱなしの状態を続けていると、

脳が処理しきれなくなる ⇒ 未処理の情報が脳内に増加する ⇒ 考えがまとまらなくなる ⇒ 焦ってさらに情報を詰め込む ⇒ ますます考えがまとまらなくなる  ⇒ ストレスが高まる

といった悪循環が生じるのだそうです。「人に合わせて行動すること」も「脳に情報を入れ続けている状態」にあたるようです。

そうして、じわじわと慢性的なストレスにさらされ続けていると、「ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが増えて脳を傷つけ、記憶に関わる海馬などの萎縮を招く」と、帝京大学医学部教授、国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第三部客員研究員の功刀浩氏は警鐘を鳴らしています。私たちには、オフの時間・空間・場をつくること、オフの感覚を味わうことが不可欠なのです。

今までの脳科学では「何かをしているとき」の脳活動の調査・知見に目を向けることが一般的でした。しかし近年では「ぼんやりしているとき」の脳活動に大きな注目が集まっています。

脳が安静状態(何もしてない)の時に使用するエネルギーは,何かしているときに使われる脳エネルギーの20倍に昇ると言われています。この無意識下で働く脳の活動は「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」と呼ばれ、脳内のさまざまな神経活動を同調する機能を司っていると言われています。

といって、ずっとぼんやりしていればいいわけではありません。ぼんやりしたままだと日常生活に支障をきたすうえ、脳のエネルギー消費量が格段に増えることを意味しますので、かえって脳疲労を引き起こす原因になりかねません。

つまり脳の活動を意識的にON-OFF切り替えることが出来るようになれば、前頭葉の血流改善にもよい効果が見込めるといえるでしょう。

オンとオフの切り替え戦略

マイヤーズ・ブリッグス社のソートリーダーシップ責任者を務めるジョン・ハクストン氏によれば、常時オンの文化を生きることは、ストレスを悪化させ、仕事と家庭の衝突を激化させ、職場や家庭で気が散りやすくし、集中力を減退させることが多いと言います。

マイヤーズ・ブリッグス社が1,000人以上を対象に行なった2018年と2019年の調査では、人々がどのように常時オンの文化に対処しているかを調べています。ほとんどの人は、大きくわけて4種類の戦略のいずれかを実践していましたが、性格のタイプによって、それぞれの戦略の効果に違いがあったことが報告されました。

マイヤーズ・ブリッグスタイプ指標(MBTI)では、4つの側面から個人の性格のタイプを分析しています。その4つの側面とは—-。

  • 人やモノなどの外的な世界に興味関心を向けるか(外向)、
    思考や感覚などの内的な世界に興味関心を向けるか(内向)。
  • みずからの経験と五感に基づいて情報を受け止めるか(感覚)、
    未来に目を向けて、物事の全体像を見ようとするか(直観)。
  • 客観的な論理に基づいて意思決定するか(思考)、
    みずからの価値観や、その決定がほかの人たちに及ぼす影響に基づいて意思決定するか(感情)。
  • 骨組みがしっかりしていて秩序立った生き方をするか(判断的態度)、
    柔軟で自然発生的な生き方をするか(知覚的態度)。

それぞれタイプが最も有効に4つの戦略を用いる方法を以下に簡単に示します。

◆時間と場をつくる

人や物など外に興味関心を向ける【外向型】の人は、他者とコミュニケーションを絶やさず、活動的に行動して「オフ」時間をつくるといい。このタイプは新しいことに挑戦することも「オフ」になる。

思考や感覚など内なる世界に興味関心を向ける【内向型】の人は、静かにひとりで没頭できる活動をするといい(それが仕事だとしても!?)。ただし、外とのコミュニケーションはゼロにしないこと。

◆情報を制御

経験と五感に基づき情報を受け止める【感覚型】の人は、いったん立ち止まり、本当に重要なことは何か考えるといい。大量に流れ込んでくるネットやテレビの情報ではなく、身近な人の言葉を聞くのもよし。

未来や物事の全体像を見ようとする【直観型】の人は、なんでもかんでもあらゆる可能性を検討しようとせず、情報を制御して「目の前のひとつのこと」に注意を向けるといい。

他者との境界線

「オン」「オフ」が曖昧にならないよう他者との境界線を引くにあたり――

客観的な論理に基づき意思決定する【思考型】の人は、直接的で課題志向が強く他者にドライな印象を与えがちなので、人の感情に目を向けて、“自分の言動がもたらす影響” を考慮したほうがいい。

※それほどかしこまった関係ではないにしても、たとえば「すみませんが、その日は無理です。そのほかの都合のいい日を教えてください。私は〇〇あたりが空いてます」ではなく「すみませんが、その日は都合が悪いので、よろしければ再来週の○○あたりはいかがでしょう? 勝手言ってごめんなさい!」などと伝える。

自分の価値観や、人々への影響に基づいて意思決定を行なう【感情型】の人は、「誰かを助けること」と「自分のニーズを満たすこと」のバランスをとるよう心がける(このタイプは人のことばかり考えて「自分のオフ」を失うから)。自分のニーズにもしっかりと意識を向ける。

◆仕事と生活のバランス

秩序立った生き方をする【判断型】の人は、仕事とプライベートを明確に分けるべく、仕事以外の時間はいつもの仕事スペース(あるいはエリア)に近づかない。いつ仕事の連絡に応じられるか他者にはっきり伝える。仕事以外の時間はデジタル機器の電源を切る。

柔軟で自然な生き方をする【知覚型】の人は、柔軟性のある在宅勤務などが性に合うが、制限なく仕事をしすぎないよう、仕事以外の活動にも時間を割くよう心がける。単に「やることリスト」を作成するのではなく、あらかじめ作業時間を確保してカレンダー上に記す「タイムボクシング」を取り入れるといい。

有効な「オフ」スイッチの入れ方は、性格タイプに応じて異なっていたという結果です。オンとオフのメリハリをつけていけば自然と仕事もスピーディーに進んでいくはず。休む時はしっかり休む、仕事をする時は集中してやる。上手に切り替えられれば、心身の健康を維持できて仕事のパフォーマンスも高まるでしょう。

以上、エゴレジ研究所から、自分「スイッチ」のオンとオフについてご紹介しました。もうすでに取り入れている方もいらっしゃるかもしれませんし、無意識のうちにできている方もいるでしょう。意識するだけで、すぐに変化を感じられなくても、だんだんと変わっていくこともあります。脳疲労を予防するためにもオンとオフの切り替えスイッチを上手に取り入れてみましょう。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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