代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
新型コロナウイルス感染症拡大により、withコロナ時代となり、私たちの日常生活や常識を大きく変え、いまなおニューノーマルは日々変化を続けています。2022年秋、これまでに比べ制限や制約の緩和された日常を取り戻しつつありますが、コロナウイルス感染症の長期化による “心の健康”はどのような影響を受けているのでしょうか。今回は、その実情を調査した最新の結果をご紹介します。
コロナ禍で感じた体調の変化
調査は、朝日新聞Reライフプロジェクトの会員制コミュニティー「読者会議」メンバーを対象に2022年5月17日~6月16日に実施されました。有効回答は768人(男性52.5%、女性47.0%、その他0.5%)。年代別は、49歳以下8.5%、50代23.7%、60代34.8%、70代25.5%、80代以上7.6%です。以下、そのアンケートの結果の一部を抜粋してご紹介します。
コロナ禍での体調変化や今後の健康管理・体作りへの取り組み方などが、男性と女性でかなり違っていることが見えてきました。
2年半に及ぶコロナ禍での体調や環境の変化にからみ、男女で大きな差が現れたのが「人との関わり」や「心のケア」に関連する項目です。
選択肢から「人と関わりたいと、あまり思わなくなった」を選んだ人は、女性が25.2%だったのに対し男性は13.9%、「おしゃべりをしなくなった」も女性は26.9%、男性は16.6%と、いずれも10ポイントを超す差が生じていました。
同様に「意欲がわかなくなった」(女性18.8%、男性13.2%)、「よく眠れなくなった」(女性18.3%、男性13.6%)も、女性の回答比率は男性を上回り、それぞれ5ポイント前後の差がつきました。一方、回答率が上位3項目(足腰が弱くなった、体重が増えた、疲れやすくなった)については、足腰の衰えは男性が、体重増加と疲れやすさは女性のほうが回答比率は高かったものの、男女の差はそれほどではありませんでした。
意識して取り組みたい健康行動
次に、コロナ禍の体調変化などを踏まえて、今後、意識して取り組みたいのはどんなことか。選択肢のなかから選んでもらった(複数回答)ところ、女性がとくに関心を示したのが「免疫力を高めたい」(女性59.3%、男性47.1%)、「疲れにくい体にしたい」(女性35.5%、男性24.6%)、「心の不調をなくしたい(心のケア)」(女性16.1%、男性8.7%)の3項目で、男女で10ポイント前後の差がつく形になっていました。
世代ごとの違いがありますが、「免疫力の強化」はどの年代も5割超の人が選んだ一方、「足腰の鍛え直し」は年代があがるほど選択する比率が増えています。50代のほうが選ぶ比率が高かったのは「心の不調をなくす」こと。2割近い人が選んでおり、60代以上の人の2倍に達していました。
医師への調査結果
一方で、生活者の“健康と暮らし”に関する情報を発信するポータルサイト「マイライフニュース」を運営するヒューマン・データ・ラボラトリ株式会社(代表取締役:長 誠)は、コロナ禍における “心の健康”の実情や適切な対処法を知るため、全国医師(心療内科医、精神科医、内科医)1000名を対象にアンケート調査(2022年3月29日~4月1日)を行っています。その一部を抜粋してご紹介します。
Q 心の不調を抱える患者さんはコロナ禍以前より増加傾向にあると思いますか。
Q 前項で「とても思う、やや思う」と回答した方へお聞きします。患者さんの心の不調の原因で多いものをすべて教えてください。
感染拡大前と比べて、心の不調を抱える患者は増加傾向にあると思うかを聞いたところ、95.6%の医師が「増加傾向にあると思う」(とても思う51.0%+やや思う44.6%)と回答しました。新型コロナの影響で、心の不調を訴える人が増えている実態が、医師への調査でも明らかになりました。
心の不調を抱える患者が「増加傾向にある」と回答した医師に、心の不調の原因として多いものを聞くと、1位「コミュニケーション不足」、2位「職場環境」、3位「家庭環境」という結果となりました。この上位3つの原因が40%を超える回答を集めており、リモートワークへのシフトや子どもの休校など、コロナ禍で職場や家庭環境が変化したことが心の不調につながっているものと思われます。
Q 心の不調を抱える患者さんで多い性・年代
心の不調を抱える患者の性年代別の割合を見ると、男性では40代(27.1%)、30代(25.9%)、50代(21.1%)の順、女性では30代(40.1%)、40代(35.6%)、20代(31.4%)の順となり、男女とも30~40代で患者が多いことがわかりました。男女の割合を比べると、全年代で女性の方が高く、男性よりも心の不調をきたしやすいことが示唆されました。
Q 心の不調を抱える人の口癖で多いのはなんですか。
「心の不調を抱える人の口癖」では、上記の通りの結果となり、医師との会話の中でもネガティブな言葉が多く使われていることが伺えます。
Q 心の不調を抱える患者さんで、胃の不調を訴える方の割合を教えてください。
Q 心の不調の改善に胃の健康は重要であると思いますか。
Q 胃の健康が自律神経を介して脳へ良い影響を与えると思いますか。
「胃の健康が自律神経を介して脳へ良い影響を与えると思いますか」という質問でも、9割以上(92.9%)の医師が「与えると思う」(「とても思う」(32.8%)+「やや思う」(60.1%))と回答しました。胃と脳は自律神経でつながっており、心の健康にも深く関係していることが伺える結果となりました。
Q 心の不調を抱える患者さんに対して、重視している治療法をすべて教えてください。
心の不調を抱える患者に対しての治療法を聞くと、上記のようになりました。3人に1人の医師が、心の治療法として「食事療法」も重視していることがわかりました。
Q 心の不調を抱える患者さんに勧めたいセルフケアの方法を教えてください。
Q 心の不調の患者さんに勧めたい心のトレーニング方法を教えてください。
心の不調を抱える患者に勧めたいセルフケアの方法については、「十分な睡眠」で34.2%。次いで、「運動」(26.7%)、「胃を温める」(26.2%)、「腸を温める」(26.0%)、「食事」(25.8%)の順となりました。
心の不調を抱える患者に勧めたい心のトレーニング方法を聞いたところ、1位は「思っていることをノートに書き出す」で36.3%となりました。2位以下は、「積極的に誰かと会話をする」(33.9%)、「食事内容を意識する」(30.9%)、「否定的な言葉をやめる」(30.6%)と続きました。
Q 心の不調を抱える患者さんに勧めたい食材を教えてください。
Q 心の不調に陥らないために避けた方が良いと思う習慣を教えてください。
心の不調を抱える患者に勧めたい食材を聞くと、1位「ヨーグルト」(32.2%)、2位「納豆」(22.3%)、3位「高カカオチョコレート」(20.0%)となりました。以下は、「オリーブオイル」(19.8%)、「ナッツ」(19.8%)、「豆腐」(19.4%)、「野菜」(19.3%)が僅差で並びました。1位の「ヨーグルト」は、胃で働く乳酸菌を含む商品も発売されており、心の不調改善に役立つ食材として、多くの医師が推奨していることがわかりました。
心の不調に陥らないために避けた方が良いと思う習慣については、「不規則な食事」(37.4%)、「偏食」(33.9%)、「アルコール」(32.6%)、「過食」(30.5%)と、食事に関連する項目が上位を占めました。心の健康を保つためには、日々の正しい食習慣が大切であることが示唆される結果となりました。
以上、エゴレジ研究所から、コロナウイルス感染症の長期化による “心の健康”の実情についてご紹介しました。現状では「第8波」と季節性インフルエンザの同時流行も懸念されています。セルフケアは大切ですが、自分で対処法を実践してみても心身の不調が続く場合もあります。無理をせず、早めに専門の医療機関(心療内科や精神科)を受診することも選択肢に加えましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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