「元気をもらう」のメカニズム

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

「あの人に会って元気をもらった」そんな表現を耳にすることがあります。また、体験的にも「元気をもらった」と感じたことがある人も多いのではないでしょうか。形のない「元気」をもらうというメカニズムを科学的に解明している研究者がいるそうです。今回は、「元気をもらう」のメカニズムについての研究をご紹介します。

Deborah Rozman博士の研究

「元気をもらう」というメカニズムを科学的に解明している研究者というのは、シリコンバレーで開催されたTransTechカンファレンスに登壇したDeborah Rozman博士です。同博士が所属するハートマス研究所「(HeartMath Institute)のサイトの関連論文「The Energetic Heart」をエクサコミュニティの「AI新聞」2018.11.29(湯川鶴章編集長)が掲載しています。

論文によると、心臓は体の中で最も大きな電磁場を形成しており、心電図で測ることのできる電磁波の振り幅では、脳波計で計測できる脳波の振り幅の60倍にもなるそうです。また心臓の発する磁場成分の強さは脳が発する磁場成分の5000倍もあり、細胞組織に邪魔されることなく、1~2m離れた場所でも計測が可能だとされています。

科学的な論文なので「これが元気をもらうメカニズムだ」とは断言していませんが、規則正しい心臓の電磁波のリズムが周辺の人の体にも影響を与えると結論づけています。

感情を司っているのは脳だけではなかった!

1990年代までは、脳だけが感情を生成していると考えられていましたが、最近は脳と身体の共同作業を通じて、認識や思考、感情といったものを生成しているという考え方が主流になりつつあります。特に心臓が、感情の生成において重要な役割を果たしていることを示す実験結果が次々と登場しているようです。

最近の神経心臓学では、「心臓は感覚器官であり、大脳皮質が関与しない学習や記憶、決定を可能にする、高度な情報のエンコーダーとプロセッサーの中心的な役割を担っている」と結論づけているそうです。

大脳皮質は、知覚、随意運動、思考、推理、記憶などの高次機能を司っていますが、大脳皮質が関与しない脳の活動に関しては、心臓が中心的な役割を果たしているということです。心臓が出す電磁波、音圧、血圧のリズムは、身体中の全ての細胞によって感知されます。つまり心臓が体の細胞、臓器の同調シグナル発信機の役割を果たしているというわけです。

最近の研究では、心臓が発信するリズムの中に情報が込められており、特に神経やホルモン、電気などの低周波の振動の中に、感情に関する情報が込められている可能性があると指摘されているそうです。

心臓が発信する信号で最初に脳に到達するのは電磁波で、次に神経系の信号が8ミリ秒後に到達。血圧の信号は240ミリ後に脳に到達するのです。また心電図の波形を継続的に観察すると微かながら複雑に変化していることが見て取れ、心電図の波形の中にも情報がエンコードされている可能性があるそうです。

この論文を読む限り、人間の感情には脳以外の身体も大きく関わっており、脳のメカニズムだけを電子回路で真似しただけでは人間の感情のようなものは再現できない、ということが分かります。

ポジティブな感情が心臓と脳をシンクロさせる!

心臓のリズムと脳のα波は自然とシンクロすることが分かっていますが、特に心にポジティブな感情を思い浮かべているときは、心拍のリズムが非常に規則正しくなり、その結果、α波のリズムも心臓にシンクロし、規則正しいものになります。

そして心臓と脳波が規則正しくシンクロし始めると、呼吸のリズム、血圧、皮膚の電気信号のリズムなどもシンクロし始めます。こうした状態をDeborah Rozman博士は「身体的一貫性」と呼び、身体的一貫性が達成されれば、身体が最も効率よく働き始め、精神的、身体的な様々な恩恵を受けることになるとしています。

例えば、毛細血管や細胞組織における液体交換、通過、吸収の効率が向上するほか、心臓血管系の循環ニーズに対する適応能力が向上するという。その結果、免疫力が向上することになります。また認識力が向上し、思考がクリアになり、感情が安定。その結果、幸福度が向上するのです。

身体的一貫性は、睡眠中や深いリラクゼーションの中で達成されることが多く、通常の目が覚めた状態で身体的一貫性に達することはまれだそうです。

1)感情は脳だけで生成するものではなく、心臓と脳のチームワークで生成される

2)特に心臓が発信するポジティブな感情の電磁波は、脳をシンクロさせ、身体の細胞すべてをシンクロさせる

3)電磁波は自分の身体だけではなく、近くにいる他人の身体にも到達する

この3つのポイントを踏まえると、電磁波が自分の身体の隅々にまで影響を与えるのなら、近くにいる他人の身体にも影響を与えるかもしれない、という可能性が浮かび上がってきます。

ポジティブな感情は他の人の身体にも影響を与える

身体的接触なしに会話できる距離に座っている被験者2人のデータです。左側のFigure 6の上のグラフは、1番の被験者の心電図(ECG)と、近くにいる2番の被験者の脳波(EEG)の比較。下のグラフは、2番の人の心拍変動(HRV;心臓の動きが安定していることが分かる波形)です。

論文によると、1番の人の心臓の電磁波が、近くにいる2番の人の脳波とシンクロしているのが分かるとしています。

右側の別の被験者によるFigure 8の上のグラフはこの被験者2の心電図と、近くにいる別の被験者1の脳波ので、まったくシンクロしていません。下のグラフは別の被験者1の心拍変動(HRV;この被験者の心拍は安定していない波形)です。

つまり、人の電磁波は、周辺の人の脳波(EGC)を安定させる可能性がある、という結果です。

この論文では「多くの人はコミュニケーションが言語や表情、声のトーンなどのわかりやすい信号を通じて行われていると思いがちだが、実際には潜在意識下で、かすかではあるものの、しっかりとした影響力のある電磁波やエネルギーコミュニケーションのシステムが作動している」と結論づけています。

「元気をもらう」「エネルギーをもらう」という表現は、感覚的で抽象的なもので、その人が何を意味しているのかは正確には分からないものです。しかし「元気をもらった」と表現する人の中には、他人の規則正しい電磁波の影響を受けて、自分の脳波が安定した波形になる状態のことを「元気をもらった」と表現しているケースがあるかもしれません。

この領域はまだまだ分からないことだらけですが、少なくとも人間は電磁波などのエネルギー交換を通じてコミュニケーションしている、ということだけは事実のようです。

「感情と心臓」の関係の研究

Deborah Rozman博士が所属するハートマス研究所(米・カリフォルニア州)は、もともと「感情」と「心臓」の関係性についての研究を推進し、実用的な感情マネジメント・ストレスマネジメント法を普及するために、1991年に設立された非営利法人です。背景には、同年にアンドリュー・アルモア博士によって提唱された心臓脳「ハート・ブレイン」の概念があります。心臓には4万個ものニューロンが存在し、ホルモンや神経伝達物質、脈拍や血圧をモニターしていることが判明しました。生物で、一番初めに出来上がる器官、この小さな脳である心臓が脳や他の臓器を動かし始めるのです。さらに研究でわかったことは、この心臓の小さな脳は、神経系を通して大脳とつながっており、相互に情報のやりとりを行っているということです。

1995年には、スタンフォード大学名誉教授のティラー博士とハートマス研究所の共同研究が『アメリカ心臓病学ジャーナル』に掲載されました。そこでは「感謝や、愛しさといった調和的で共感的な感情がストレス下で乱れがちな心拍のリズムに安定をもたらし、心臓と脳が協調して働く“コヒーランス状態” を生み出す」ことが科学的に証明されました。これがきっかけとなり、「感情と心臓」の関係にまつわる研究が徐々に注目を浴びるようになって来ました。

近年の研究ではさらに、心臓のリズム(心拍変動)と脳波がシンクロすることが証明され、心臓と脳波が規則正しくシンクロし始めると、呼吸のリズム、血圧、皮膚の電気信号のリズムなども同調し、免疫力の向上や、思考がクリアになり、感情が安定し、幸福感が増すなどの精神的、身体的な様々な恩恵を受けることができることが解明されつつあります。

ハートマス研究所では、新しい「心臓神経学」に基づいたハートマステクニック(ハートにフォーカスした呼吸法)や、研究データをもとに開発されたコネクションプラクティス(心臓と脳を同期させ「共感」と「洞察」の相乗効果によって「感情知能」を高め、心身にレジリエンスをもたらす手法)など、感情・ストレスマネジメントの情報を発信しています。

(出典:ハートマス研究所)

以上、エゴレジ研究所から「元気をもらう」のメカニズムについての研究をご紹介しました。「元気」は気の一つ であり、儒教における生成論で宇宙の根源である太極に呼応する概念「元気・陰陽・四時・万物」の一つとされています。生命力が旺盛である様や気分が上向きである等の状態で、分け与えることができる「気のエネルギー」の源が古くから「元気」と呼ばれてきました。私たちは、“自然”から元気やパワー、エネルギーを与えられています。と同時に人は、人によってもパワーやエネルギーを充電されることが科学的に解明されてきたようです。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。


あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NYこどものくに東京 理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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