香り(アロマ)のストレス抑制効果

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

世界中に甚大な影響をもたらしている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下で、私たちはこれまでの生活様式からの変更を余儀なくされています。コロナ禍の収束が見えないため、日常生活のストレスの増大が大きな問題となっています。そうした背景から、在宅で生活に取り入れられるストレス緩和の方法としてアロマセラピーが注目されています。今回は、アロマとストレス抑制効果についてのお話です。

嗅覚研究とアロマ

東邦大学生物学科神経科学研究室 増尾好則教授は、同大学の「生物学の新知識」というサイトで以下のように解説されています。

———————(以下抜粋)–

特定の香りはストレスを抑制することが経験的に知られています。嗅覚系が退化したといわれているヒトにおいても、嗅覚は自律神経系や情動(感情)、高次機能などに影響を及ぼします。匂いは、ストレスを誘発して動物の生存を左右したり、ストレスレベルを低下させたりします。したがって、匂いが脳のストレス応答に及ぼす影響を科学的に証明することは、ヒトのメンタルヘルスに貢献すると考えられます。

ヒトでは、ストレスを抑制する方法の一つとして、昔からアロマがよく用いられてきました。香りは脳機能の変化を引き起こすと考えられますが、アロマの影響に関する神経科学的解析はほとんど行われていません。しかし、最近、嗅覚受容体の存在が証明され、嗅覚に関する研究が盛んになってきました。

米国コロンビア大学のRichard Axel博士とフレッド・ハッチソン癌研究センターのLinda Buck博士は、2004年に「嗅覚受容体遺伝子の発見と嗅覚感覚の分子メカニズムの解明」でノーベル医学生理学賞を受賞しました。

その業績の一つは、嗅覚受容体を作る遺伝子を特定したことです。一つの遺伝子が一つの嗅覚受容体を作りますが、受容体の数(遺伝子の数)はマウスで約1,000種類あります。ヒトでも約350種類あり、全遺伝子の1%を占めています。約1,000種類もの嗅覚受容体をコードしている遺伝子は、哺乳類で最も大きな遺伝子ファミリーを形成していることになります。

業績の二つ目は、約1万種類もの異なる香りをどのようにして感じることができるのかという疑問に対する答えを得たことです。一つの嗅神経細胞は一種類の受容体を発現しますが、各嗅神経は1~2個の糸球体に投射していて、同じ受容体を発現する神経はある特定の糸球体に収束していることが分かったのです。したがって、受容体の組み合わせにより香りの多様性を区別する仕組みが明らかになりました。つまり、一つの匂い分子がいくつもの受容体に反応するため、ヒトには約350種類の受容体しか存在しないにも関わらず、1万種類もの香りの判別が可能になると考えられます。

◆アロマと脳

アロマが嗅覚経路に作用することは疑う余地もありません。上に述べた通り、哺乳類の嗅神経細胞には約1,000種類の香り物質に対応する受容体が存在し、1個の嗅神経は1種類の受容体をもっています。特定の嗅覚受容体を発現する嗅神経の軸索は、嗅球の糸球体に投射していて、嗅球には匂い地図がつくられています。嗅球に達した香り情報は次の神経に伝達され、大脳辺縁系に達します。大脳辺縁系は学習・記憶、情動などの機能と密接に関連している部位です。そして、香り情報はさらに視床下部に伝えられます。視床下部は自律神経系や内分泌系を支配しています。アロマは、その種類によって交感神経系あるいは副交感神経系に作用します。

◆香りが行動や脳内因子の発現に及ぼす影響

最近、香りが実際に脳内因子の発現変化を引き起こすことが明らかにされつつあります。たとえば、コーヒー飲用の効果として、ストレスを和らげること、およびうつ病や自殺のリスクを減らすことが報告されています。これまでの研究は不揮発性成分であるカフェインに焦点を当てていますが、揮発性成分による脳内の変化は解明されていませんでした。

ストレスからうつ病発症に至る過程の脳内変化を調べている際、ストレスによって生じる脳内遺伝子・蛋白質の発現変化が、コーヒー豆の香りによって抑制されることを見出しました(生物学の新知識「香りがストレスを抑制する?不眠ストレスに対するコーヒーアロマの癒し効果」 https://www.toho-u.ac.jp/sci/bio/column/0824.html )。

コーヒー豆の香りは水浸ストレスによる酸化ストレスを抑制すると考えられます。ストレスは、生体にとって良い「快ストレス」と悪い「不快ストレス」に分けられますが、本研究結果は、香りが快ストレスを誘発したことを示唆するものです。

最近、アロマオイルの影響を調べたところ、ラベンダーやヒノキの香りが脳内の神経栄養因子受容体(NGFR)遺伝子の発現を増加させることが分かりました。また、ヒノキをはじめいろいろなアロマオイルに含まれているα-ピネンの香りを嗅いだマウスの海馬では、脳由来神経栄養因子(BDNF)の遺伝子発現レベルが上昇していました。NGFRやBDNFは、神経の成長・維持に重要な役割を果たしており、その発現はストレスによって低下するため神経細胞死が起きるといわれています。このように、香りのストレス抑制効果は、実際に脳内因子の発現を変化させることによって発揮されるものであることが分かってきました。

コロナ禍における天然アロマの心理的効果

関西学院大学感性価値創造インスティテュート(所長:長田典子 理工学部教授)は、在宅で生活に採り入れられるストレス緩和の方法としてアロマセラピーに着目し、アロマ空間デザインや香りによるブランディングを手掛けるアットアロマ株式会社(@aroma)と共同で、「新型コロナウイルス感染症流行下におけるストレス要因とアロマオイルの心理的効果の実証実験」を行い、その成果を2020年9月10日に「第22回日本感性工学会大会」で発表しました。

【実験の概要】

  • 実験期間:2020年5月17日~5月24日(緊急事態宣言下)
  • 参加者:30名(男性15名、女性15名;31~49歳 平均年齢39.4歳)
  • @aroma社製オイル「サプリメントエアー」シリーズ 4種、ディフューザーを使用

<オイルの種類>

S02ハッピー(原料: オレンジ、ジャスミン、タンジェリン、ゼラニウム、マンダリン etc.)

S03スタディー&ワーク(原料: ローズマリー、ティートリー、レモン、ブルーサイプレス etc.)

S04リラックス&ビューティー(原料: カモミール、スパイクラベンダー、ラベンダー、ベルガモット etc.)

S05メディテーション(原料: サイプレス、クローブ、ロサリナ、ネロリナ、ユーカリ etc.)

【実験方法】

1)参加者は、実験期間中はディフューザーを身近に設置し、困ったことがあったときやストレスを感じたとき、解決したいことがあるときにアロマオイルを使用。

2)使用するアロマオイルの種類は参加者がその都度自由に4種から選択(アロマオイルの商品名はシールで隠し、A・B・C・Dの4種として区別)。

3)毎日9時・12時・15時・18時・21時の5回、最も近い時間で使用したアロマオイルの種類・その時刻・その時の状況や気分・期待した効果など(自由記述)、アロマオイルの使用前・使用後の気分(二次元気分尺度)を回答。

【実験結果のまとめ】

1)のオイルそれぞれの使用前後での気分の変化(二次元気分尺度)を調査したところ、いずれも気分をポジティブに変化させ、ストレス緩和に効果があったことが示されました。また、男性よりも女性において大きな効果を発揮したことがわかりました。

2)アロマ使用時の状況の分析から下記4つのグループに分類して結果を解析しました。

  • 仕事専心グループ/男性6名: 仕事のみにストレスを抱えたグループ
  • 葛藤(子ども)グループ/女性5名: 在宅で育児と仕事のマルチタスクの葛藤によりストレスを抱えたグループ
  • 葛藤(家事)グループ/男性2名・女性5名:Bに比べて、子どものストレスは感じていないが、マルチタスクの葛藤を抱えたグループ
  • 活動後グループ/男性7名・女性4名:仕事後、食事後など活動の区切りがついた際に使用したグループ

結果、4つのグループいずれも使用前に比べて使用後に快適な状態に変化することが確認されました。その中でも、B:葛藤(子ども)グループの変化が一番顕著であり、これにより、仕事と子育てとマルチタスクをこなす女性に対して、アロマがより大きな効果を発揮したことがわかりました。

増尾教授が指摘されているように、匂いにはストレスを誘発あるいは増強する面があることも忘れてはいけません。それを踏まえて、嗅覚とストレス応答の脳内メカニズムが解明されることにより、科学的根拠に基づいた揮発性成分の有効利用が可能になります。匂い分子が生体に及ぼす影響について、今後さらに研究が進み、メンタルヘルスに貢献することが期待されます。

以上、エゴレジ研究所からアロマとストレス抑制効果についてのお話をご紹介しました。ストレスへの手軽なケアの方法としてアロマセラピーをうまく取り入れてみませんか。

アロマセラピーとは「芳香療法」という意味で、植物から特殊な方法で抽出した芳香物質(これを精油といいます)を用いて心と身体に働きかけ健康な状態に導いていくものです。今回ご紹介したように精油の香りは、嗅覚を通じて電気信号となって脳に届き、ホルモン分泌の司令塔である、脳の視床下部や下垂体に働きかけます。精油はそれぞれ効果が異なりますが、緊張感を和らげリラックスさせて、気分を落ち着かせるなどストレスのケアに最適です。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NYこどものくに東京 理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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