こころの回復力応援プロジェクト

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

新型コロナウイルス蔓延により、感染に対する恐怖、外出自粛、テレワークへの移行などに起因するストレス、いわゆる「コロナ疲れ」が増加しています。身体・精神疾患の原因となるストレスを低減する要因の特定が世界的に急務です。そんな中、世界中の人々に調査を行い,コロナ禍を生き抜き,成長につなげる要因を明らかにすることを目的としたRE-COVER:REsilience to COVid-19 in Each Regionプロジェクトがあります。今回は、このプロジェクトの研究成果の一部をご紹介します。

RE-COVERプロジェクト

このプロジェクトは、筑波大学の「知」活用プログラムという研究支援を受けて開始した、コロナ疲れと心理的レジリエンスに関する国際比較研究です。菅原大地(筑波大学人間系)先生は、「コロナ禍でも適応的に生活している人の特徴が明らかになれば、このコロナ禍で滅入っている人の支援につなげることができます。そこで、私はコロナ禍を生き抜くための心の強さを研究すべく、RE-COVER(REsilience to COVid-19 in Each Region)というプロジェクトを立ち上げました」と述べています。

同プロジェクトでは、日本、アメリカ、中国、マレーシアの 4カ国を対象に、『心理的レジリエンス』に注目し,「ストレスを軽減する干渉要因」と「ストレスフルな出来事から立ち直り,成長につなげる回復要因」について国際比較を行っています。今ではスペインやフランス、イタリア、ブラジル、バングラデシュ、フィリピンの研究者とも共同研究が進んでいるそうです。

RE-COVERプロジェクトは、逆境や危機に直面したとき、そのストレスに圧倒されず、継続的かつ持続的に行動し、立ち直るチカラ(=心理的レジリエンス)の作用を明らかにします。また、このプロジェクトの研究では、各国の政策・支援体制を検討するうえで基盤となるデータを収集することも目的としています。

日本人の予備調査

日本人を対象とした予備調査(2020)では、いくつかの特性–コントロール感(Sense of control)、成し遂げる力(Grit)、自己への優しさ(Self-compassion)–について調査されました。調査結果から菅原先生は、次のように説明されています。

自分の行動や日常生活をコントロールできている感覚を維持しながら(コントロール感の高さ)、

コロナ禍でも自身の趣味のようなものを続けられていて(興味の一貫性の高さ)、

過度に自分を否定したり、孤独感を感じないようにする(自己への冷たさの低さ)ことによって、コロナ禍でも落ち込みにくい、あるいは落ち込んだとしても回復しやすくなると考えられます。

日常で取り組めそうなこととしては、コントロール感を失わないように日々自分ができたことや成し遂げたことを日記に書いてみたり、ステイホームをしながらでも自分の趣味に取り組んだり、あるいは落ち込むような出来事があった際に友人に話をしたり、何が起きて、どんな気持ちになったかを紙に書いて客観的に物事を捉えなおし、自分のせいにしすぎないようにすること、などが考えられます。

エゴ・レジリエンスとCOVID-19関連ストレス

同プロジェクトの研究者による最新の研究(2021)では、収入の変化、自己抑制、COVID-19への恐れ、抑うつ、不安、ストレス、およびエゴ・レジリエンスを評価し、心理的苦痛に対するエゴ・レジリエンスの主な緩和効果の検証をしています。

この調査では、ウェブサイトを通じて参加者を募集し、18歳以上の222人の日本人(男性125人、56.3%、女性97人、43.7%)が分析対象になっています。参加者の平均年齢は46.71歳でした。

単純分析では、エゴ・レジリエンスの高い人ほど抑うつ傾向、ストレスを低く報告することが判明しました。エゴ・レジリエンスの高い人は、パンデミック状況下でも、より良い精神的健康を維持する傾向があったのです。

さらに、詳細分析の結果から、外出自粛など自己抑制を高く報告した人のエゴ・レジリエンスが抑うつレベルを低下させる傾向を示しました。これは、エゴ・レジリエンスがCOVID-19に関連する特定のストレスに対処し、パンデミック状況下で適応を促進するように機能したことを示しています。

また、興味深い点として、エゴ・レジリエンスがパンデミック状況下での不安や恐れを軽減しなかったという事実があります。不安や恐れの感情は、人々がこの状況下でより効果的に適応するのを助けています。エゴ・レジリエンスの高低にかかわらず、COVID-19に対する不安や恐れは、より多くの衛生的、感染予防行動を促し、パンデミック下での心理的および肉体的適応をもたらしたと考えられます。

エゴ・レジリエンス研究の可能性

この研究の背景となった実証研究では、武力紛争のために避難した人々の間で、エゴ・レジリエンスと抑うつ、不安、ストレスとの間に有意な関係があることを示しました(2012)。エゴ・レジリエンスが高い人ほど抑うつ、不安、ストレスを低く報告したのです。また別の研究で、エゴ・レジリエンスが、倦怠感、ひいては感情的な日常の煩わしさの影響を緩和することが報告されています(2020)。

COVID-19のパンデミックの間、エゴ・レジリエンスは、人々の精神的健康に対するパンデミックによる悪影響を減らすのに役立つ可能性が期待されています。

コロナ疲れの軽減やコロナ禍での成長を促すレジリエンスのチカラ!を標榜するRE-COVERプロジェクトの菅原先生は、次のように話されています。

「このコロナ禍で様々なストレスフルな出来事が起き、幾度となく不安に押しつぶされそうになったり、先の見えない将来に絶望を感じることもありますが、心理学、あるいはポジティブ心理学研究には、どのように対処したらよいか、その糸口を見つけることができるという強みがあります。コロナ禍で生じた荒波のなか、たゆたえども世界中の人々が沈まない(沈ませない)ために、引き続き研究を続けます。」

★RE-COVERプロジェクトのHP(https://re-cover.life/ )でダウンロードできるアマビエ。アマビエの絵を描き写すことで,疫病の流行を防ぐことができると言われています。井口佳穂さん作(筑波大学大学院人間総合科学学術院人間総合科学研究群芸術学学院プログラム修士1年)

以上、エゴレジ研究所からこころの回復力応援プロジェクト「RE-COVER」に関する研究をご紹介しました。ウィズコロナ、ポストコロナをしなやかに生きるために必要なスキルの一つが、立ち直る力:レジリエンスです。想定外の困難や大きな失敗に直面しても「普段の心の機能を維持させる役目」を意味します。エゴレジ研究所も微力ながら研究を続けています。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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