「がんが気になるんですけど」「保険っていったらがん保険かな」こんな感じで医療保険にご加入されている方、たくさんいらっしゃると思います。がんは2人に1人が罹患する時代。確かに備えは大事です。でも備えるにはポイントがあるのですがちゃんと押さえていらっしゃる方は少ない。
がんの3大治療は「手術・放射線・抗がん剤」です。10年ひと昔とは申しますが、確かに10年前は手術と放射線が主な治療方法で、抗がん剤は転移が広範囲に広がっていると分かってオペが難しい場合に投与されていました。しかし最近は抗がん剤の比率が高まっています。早期治療に用いられることも多くなりました。なぜならがん細胞は血液に乗って取り敢えず全身をくまなく回るからです。転移しないのはたまたま。転移するのもたまたま。転移の謎はまだ解けていません。
書店に行くと、新米看護婦さん向けの抗がん剤の本がたくさん出ています。抗がん剤も種類がたくさん。最近は患者の遺伝子を調べ、投与予定の薬が効果があるかどうかを事前に調べてから投与されたりします。なのでお医者さんが「トライしてみましょう」という薬については、何らかの勝算がある、という事です。
薬の進化は生存率の延長に寄与しました。現在、がんは5年生存率ではなく10年生存率を見ています。大腸がんについては10年生き延びる人は7割を超えています。乳がん、胃がんは7割弱。つまり、治療は長期化、その分医療費の負担は増えている、という事です。
医療保険で入院日額の高さを気にされる方もいらっしゃるでしょう。ただ入院は短期化しています。リハビリが必要な疾病やケガについては最大180日の入院というリスクがありますから、長さは必要。ただがんについていえば、入院費より高くつくのが抗がん剤の費用です。
高額療養費制度を使っても、大腸がんは月8万円、乳がんは月6万円薬代がかかる、という試算が厚生労働省から出ています。これが10年。結構きつい金額になりますが、実は抗がん剤は途中で使用されなくなります。体力が持たなくなるからです。薬でもう一つ投与されるのは疼痛緩和薬、いわゆるモルヒネに代表される痛み止めです。これは初期から末期まで、必要に応じて投与されます。末期に近づくにつれ疼痛緩和薬の割合は増え、最終的には上限なしで投与されます。さらに自宅での療養になりますと限度額認定証が使えません。となると、月の薬代は15万円に上ることもあります。のちに一部が還付されるとはいえ、手持ち現金から結構な金額が出ていく。寿命は読めません。これは患者もその家族も辛い。
なので、医療保険でがんに備えたい場合は、薬に対する保障があるかどうかをチェックしてください。各社様々ながん保険を販売していますが、この薬代に対する保障は会社によってまちまち。点滴のみが対象だったり、乳がんのホルモン療法については半額になってしまったり、抗がん剤の保障はあるけど疼痛緩和薬についてはなかったり。ここはしっかり保険営業員に聞いて確かめてからご加入を。
では次回は入院日額の積み上げ方についてお話します。9月、天高く馬肥える秋。体重増加には気を付けたいです。
水原 曜(みずはら ひかる)
2014年 住友生命保険相互会社東京本社入社。
「人生最後の転職先に保険会社を選んでしまう」という大ポカを犯してしまうもどうにか乗り越え、2017年4月より指導職に。部下に踊らされる毎日。
個人、法人問わず、フローとストックのバランスを重視した中長期的「無理しない」リスク対策のコンサルティングが最も得意です。
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