《健康》サバイバルモードから抜け出す!

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

国全体が「ロックダウン」状態になった数日後に英国で行われた2つの調査があります。この調査結果によると、コロナウイルス感染拡大による精神面への影響で多かった回答は、「不安」「孤立」「メンタル面が不調にならないか」「心の問題への支援医療サービスを受けられなくならないか」「家族や人間関係」だったそうです。日本でも同様に、環境の変化や先の見えない状況、行動の不自由さの中で一生懸命生活し、知らずしらず緊張が続き、誰にでも心理面や体調面でさまざまな不調が起こってくる可能性があります。

終わりの見えない危機に直面するいま、どうすればレジリエンスを高めて、自分自身を守ることができるのか—。ハーバード・ビジネスレビューに掲載された記事「危機の渦中で疲労や不安、パニックに対処する方法」(ジ・エネジー・プロジェクト社長兼CEO トニー・シュウォーツ氏ら)をご紹介します。

🔴2種類の感染

私たちは今、2種類の感染と闘っています。ウイルス自体と、それが生み出す感情の伝染です。

ネガティブな感情は、ウイルスに負けず劣らず伝染性があり、有害です。疲労、不安、パニックは、明晰かつ創造的に物事を考える能力、人間関係を効果的に管理する能力、優先事項に集中する能力、そして情報に基づいた賢い選択を行う能力を低下させます。

最初に起きるのは、生理学的な影響です。心身や感情の慢性的あるいは極端な摩耗や損傷のコストを「アロスタティック負荷」といいますが、内的資源に対する要求が限界を超えたときには、アロスタティック過負荷が生じます

人々の限りある資源には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機によって引き起こされた不安や不確実性により、極度の圧力がかかっています。その結果、判断力の低下、衰弱、バーンアウト(燃え尽き症候群)などが起きるのです。

🔴「3人の自分」モデル

こうした状況下でレジリエンスを高め、自分を守るために著者らが提唱する「3人の自分」というモデルがあります。このモデルは、トラウマが身体と神経系に与える影響に関する研究、特に心理学者ピーター・ラヴィーンによって開発された「ソマティック・エクスペリエンシング:SE療法」に基づいて構築されました。

まず、脅威や危険に直面したとき、自分の行動が3人の自分のうち「どの自分」に影響されているかを知ることです。

人の最も無防備で傷つきやすい未熟な部分は、「圧倒された自分」です。そして人には、より有能な「大人の自分」もいます。愛情深い親が怯えた子どもにするように、この「大人の自分」は、「圧倒された自分」を落ち着かせ、安心させます。ただ残念なことに、強い脅威を感じたときには、「サバイバルモードの自分」が反射的、衝動的、無計画に防御に駆けつけ、これが逆効果に働くことが多いのです。

サバイバルモードでは、脅威に対する視野が狭まり、前頭前皮質が徐々に休止状態に移行します。熟考が反射に取って替わられるのです。脅威は、注意を喚起することはできますが、可変的条件が複数あるような複雑な問題の解決には、最高度の認知資源の動員が必要になります。

 人は、気づいていないことを変えることはできません。そこで、その瞬間ごとに自分が感じていることを意識するのが最初のステップとなります。つまり、感情によって動かされるのではなく、感情を観察する余裕を養うわけです。その感情に名前をつけるだけで、特にネガティブな強い感情と距離を置くことができるようになります。

 次のステップは、周囲で何が起こっているかにかかわらず、自分を落ち着かせること。そのために単純ながら効果的なのは、呼吸法です。3つ数えながら鼻から息を吸い、6つ数えながら口から息を吐くと、最も有害なストレスホルモンであるコルチゾールの血中濃度をわずか1分で低下させることができるのです。

運動も効果があります。挙手跳躍運動(気をつけの姿勢から垂直にジャンプし、着地と同時に脚を広げ、両手を広げて頭上で合わせる)や階段の上り下りは、素早く確実にストレスを解消し、心身を静めます。

 落ち着きを取り戻し、深く考えられるようになったと感じたら、「大人の自分」に踏み込む段階です。共感力のある、この強い自分になりきると、「圧倒された自分」を労わることができるのです。

この自分に

「困難なときだから、いま感じているような気持ちになるのは当たり前だ」

「この感情は永遠に続くわけじゃない」

「気分はよくできる。手伝ってあげよう」と話しかけます。

最も重要なことは、さまざまな自分を見分けることです。そうすることで、「サバイバルモードの自分」から二重に打撃を与えられるのではなく、「大人の自分」の強さを呼び覚ますことができます。

「大人の自分」を取り戻すと、覆い被さるような不安と恐怖の感覚から、自分の最も弱い部分を抑えられる、落ち着いた場所へと移動できるため、圧倒されたように感じることがなくなります

🔴確証バイアスという落とし穴

ほとんどの人はこの過程で、本能的に確証バイアスに陥ります。確証バイアスとは、自分の最も恐れていることを裏付ける証拠を見つけようとし、それ以外のものを無視しようとする傾向のことで、ある情報が入ってきた場合、その情報と合致する事例が見つかることによって、その情報は正しいと証明されたような気持ちになりやすいのです。衝動的かつ防御的に反応することで状況を悪化させ、選択肢を狭め、他の選択肢を払いのけてしまいます。

「大人の自分」が主導権を握れば、一歩下がって視野を広げることが可能です。自分に言い聞かせていたストーリーと、その状況における事実とを区別できるようになるのです。客観的に確認できるもの議論の余地のないものが事実なのです。ストーリーは事実を理解するために自分でつくり上げたものであり、事実でない場合があるからです。

新型コロナウイルス感染症の危機を大惨事として悲観するのではなく、「大人の自分」という内なる影響力に意識を集中させましょう。

🔴大人の自分に役立つことを!

「コロナ疲れ」の対策は、ストレスを上手くコントロールすることです。心の回復力「レジリエンス」を最大限発揮できるようまずは生活習慣を整えることが大事です。栄養バランスのとれた食生活と良質な睡眠を取ることは、ストレスをコントロールするうえでとても重要なものとなります。不安が強くなると、生活習慣が乱れ気味になりがちですが、意識的に整えるようにすればストレスコントロールに役立ちます。
また正確な情報を掴むことも大事です。情報を吟味する力が必要でしょう。未知のウィルスで、不安を煽る報道が加熱しています。ネット時代のパンデミックというこれまでにない情報過多の状況の只中に私たちは置かれており、何が正しいのか何がフェイクなのか見極めることが重要です。また、情報への曝露が過剰にならないよう注意する必要があります。

●正確な情報を得る・・・厚生労働省HP、自治体のHP、感染症専門医の話
●コミュニケーションをとる・・・職場や家族の人と不安や心配を言葉にして共有する。 話を聴く(傾聴:話す人の気持ちをそのまま受け止める)手が届かない距離を心がけて話す、電話やメール利用。
●体を動かす・・・緊張をとくために体を動かす工夫をする。運動・散歩
●好きなことをする・・・1人で、少人数でできる趣味・興味・関心を見つけて楽しむ
●専門家・相談機関の利用・・・職場の健康管理室 →こころの耳HP、よりそいホットライン、心の健康相談

在宅勤務、自粛要請、雇用の不安など、ストレスを抱えた大人がうまく対処できず、その矛先が子どもや家族に向かうことを懸念する声もあります。感染症を正しく怖がることは予防の観点でとても大事なことですが、怖がりすぎると精神面に影響が出てきてしまいます。肩の力を抜いて、冷静に考えられているかどうか、時々自分を見つめ直す時間を作ってみてください。エゴレジを発揮できる「大人の自分」に気づきましょう。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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