鈴木留美 スペインワイン専門輸入販売の株式会社エスタリコ・ジャパン(https://www.estarico-japan.com/)のセールスマネージャー。 都内ホテル勤務中の出会いに導かれ、スペインワイン輸入販売の世界へ関わることとなる。「笑顔は幸せを呼ぶ」と「明日は明日の風が吹く」がモットーです。 好きが原動力で、いつかスペインで暮らすことを目標に現在日本語教師の資格取得に向け奮闘中。 |
スペイン産ワイン最高峰といわれているのは?
キーワードとして“スペイン”“ワイン”“産地”と聞かれたとします。
あなたなら何と答えますか?
私ならとっさに3つくらいの産地が浮かびます。でも、きっと一般的な答えではないです。一般的には“リオハ(La Rioja)”という答えが多数派になりそうです。少数派だから悪いわけではもちろんないですが、今回のテーマ「地域とワイン」の第1回目はリオハにします。
ではそのリオハ(La Rioja)はスペインのどの辺りにあるかご存じですか?
リオハ(La Rioja)ってどんなところ?
お恥ずかしながら、スペインワインのインポーターなのに有名なワインの産地であるリオハに足を踏み入れたことがありません。なぜかご縁がなく、次回スペインを訪れる際には行きたいと考えております。弊社にリオハワインの取り扱いがないのも一つの原因かもしれません。言い訳です(笑)。
まずはどこにあるかですが、リオハはスペインの北東部に位置しています。そして一つの州に属するのではなく、ラ・リオハ州、バスク州とナバラ州の3つの州にまたがっています。エブロ川の流域にあり、スペインにおいては降水量も比較的多く温暖な気候です。またデマンダ山脈とカンタブリア山脈が風を防いでくれること、これはブドウ栽培に大変重要な役割を持っています。
また、この産地リオハで現在の原産地呼称制度(以前少しお話しましたが、このワインはどこのブドウで造られていますよという証明のようなものです)の前身が始まりました。そして1920年に制度が出来た時、品質の高いワインの一つとして指定されたのがリオハやシェリー酒が有名なヘレス(Jerez)でした。
なぜリオハのワインは素晴らしいと言われるのでしょうか?これには害虫が深く関わっています。ワインに詳しい方はご存じかと思いますが、19世紀(1860年)のお話です。
現在でも有名なフランスワインの産地ボルドー、こちらの醸造技術がリオハに伝わったからだと言われています。もちろん、リオハがブドウの生産に向いた場所であったこともあるはずですが、フィロキセアという害虫によりフランスのブドウ栽培が壊滅的被害を受けたのが背景にありました。この害虫はピレネー山脈を越えなかったのです。
この被害をきっかけにボルドーからスペインのリオハへ移住してきた醸造家の技術によりワインのクオリティーが群を抜いて上がったと言われています。最近ではいろいろなチャレンジがありますが、やはりエレガントで高級なワインというイメージが根強く残っているのがリオハワインです。またそのクオリティーの証明はリオハワインは、原産地呼称の中でも特に厳しい基準をクリアした高品質なワイン産地のみに許されるDOCaであることでもわかります。現在においてもこのDOCaはリオハとプリオラート(PRIORAT)2か所のみしか認められていません。
例えば、マルケスデリスカルってワインの名前をご存じですか?これは有名なリオハワインの銘柄の一つですが、日本でもよく見かけます。酒屋さんでも置いているところがあるのでご興味あればぜひ1度お試しください。このワイナリーは、リオハの中のバスク州でいち早くフランスの醸造法を取り入れ、それまでのワインのスタイルを変えたと言われています。リオハワインは地区別にアルタ・アラベサ・オリエンタルの3つがありますが、こちらのワイナリーはアラベサ地区にあります。エレガントで豊かな味わいが魅力です。今日でも世界で愛されているワインの一つです。
3つのリオハ
さきほどお話した3つの地区、何が違うんでしょうか?
一般的に日本ではアルタが好まれている傾向が高いと思います。アルタとはスペイン語で高い:Altaを意味しています。エブロ川流域の中でも標高が高く(500m~800m)斜面になっています。この地域で醸造されるワインの特徴はフルボディの力強いものです。長期熟成に向く高い品質のワインです。
アラベサ地区はエブロ川の左側です。こちらは南向きの斜面です。比較的涼しい環境であるため酸のしっかりしたブドウが育ち、その結果早飲みタイプからしっかりと熟成させるタイプまで楽しめるワインを造っています。
オリエンタル地区はどうでしょう?
私はまだこの名前に慣れません。実は最近まで違う名前でした。バハ地区と呼ばれていました。このバハですがスペイン語で低い(安い)を意味します。エブロ川の下流地域なのでアルタに対してバハそう呼ばれていたと思われます。しかしながら標高はさほど変わらないのです。現在の名称オリエンタル。一見アジア風?と感じたりするのは私だけでしょうか?ここは調べてみたら本当に私の先入観でした(笑)。
エブロ川の東側、東ということでオリエンタルだそうです。このコラムを書かせていただくようになって勉強させていただくことが多いです。感謝!
オリエンタル地区で造られるワインは比較的アルコール度が高めです。これは以前どこかの回でもお話しましたが、ブドウが甘く熟しているということを教えてくれます。アルコール発酵をする過程でブドウ自身の持つ糖度は出来上がるワインのアルコール度数を左右します。果実味も楽しめるサインですね。
ひとくちにリオハワインといってもこのように違いがあります。共通点と思うのは生産しているワインはほとんど赤ワインであることです。90%はそうでしょう。また、特徴と言われるのは1種類のブドウ100%とというよりは、数パーセントの別の糞種をブレンドすることでバランスを整えるタイプといえます。
しかしながら近年の地球温暖化もあり、また新しいワインへのチャレンジが常に行われているため、1種類のブドウで醸造されるワインも増えてきています。今後もスペインワインの進化にワクワクが止まりませんね!
おススメのペアリング料理
基本的にエレガントなフルボディのイメージがあるリオハのワイン。どんな料理とのペアリングが楽しめるでしょう。
土地の物や色合わせ。これは基本的に間違いがないはずです。ぜひぜひ、羊料理を合わせてみませんか?最近ではスーパーでも子羊のお肉やジンギスカン用のお肉が手軽に手に入るようになりました。だからといってご家庭で炭火焼というのはあまり現実的ではないですよね。
手に入りやすい材料で作れるメニューを1つご紹介します。
チリンドロンです。何それ??と思われた方、またはスペインレストランで見た、食べたという方もいらっしゃると思います。
鶏肉で作ることも多いメニューですが今回は子羊のお肉でご紹介します。
野菜とトマトと白ワインで仕上げる炒め煮?ちょっと違うかな・・・そんな感じのメニューです。
一般的に使われる野菜は、にんにく、ニンジン、赤ピーマン(パプリカ)、グリンピース、トマト(缶でもOK)、イタリアンパセリ。それ以外は細かく切った生ハム、白ワインとオリーブオイル、塩とお肉です。
- あらかじめお肉に塩をしてスライスしたニンニクと一緒にし30分置いておきます
- フライパンに油を敷き生ハムを炒めたら取り出します。
- 取り出したハムは土鍋に入れておきます。
- 同じ油で子羊肉の表面に焼き色を付け、ハムの上に乗せます。
- 同じフライパンでグリンピース以外を炒めます。その間にひとかけのニンニクとイタリアンパセリをブレンダーなどでペーストにします。
- 作ったペーストに100mlの白ワインをまぜ、それをフライパンへ入れます。
- フライパンの中身に塩をし、土鍋へ流し込みます。
- 焦げないように蓋をしながら20分ほど火を通しグリンピースを加えます。
あとはそのままテーブルへ。美味しい赤ワインとバゲットがあればもうご馳走ですよね!オーブンも要りませんし珍しい食材も要りません。でも見た目も豪華ですしお客様がいらした際のおもてなし料理にもなりますよ!ぜひチャレンジしてみてください。
〈プロフィール〉
都立高校卒業/東神開発株式会社へ入社、玉川高島屋S.Cにて受付業務/その後株式会社ミキインターナショナルにてイタリアンレストラン勤務をしながら、2回のスペインへ留学、スペインバル草分けの恵比寿Tio Danjo勤務/生花店勤/病院勤務(医療事務資格取得)/某メガバンクコールセンターSSV/製パン/日本初出店マヨルカ勤務を経て現在はホテル勤務とワインの仕事の二足の草鞋を履いております。てんぷら(スペイン語豆知識)
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