40代は脳のターニングポイント?

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

加齢とともに頭の回転が遅くなったと感じたり、疲れやすくなったり、若い世代の考えについていけなくなるといった経験はありませんか。避けては通れない加齢による変化。そこで今回は、40代になるころからの脳の変化についてのお話です。

40歳を超えると脳の配線が変化する?

一定の年齢を超えると、脳も老化することは一般に知られている事実です。ある日突然に起こるわけではないため、普段自覚することは少ないと思いますが、昔と比べて忘れっぽくなったとか、新しいものを楽しめなくなったといったことがあれば、それは脳の老化かもしれません。

株式会社ネイチャーラボが、全国の20~60代の男女を対象に実施した「脳の健康に関する調査」があります(2018)。

脳の衰えを感じたことがあるかについて尋ねたところ、「ある」と回答した人は、20代~30代では約61%なのに対して40代では約76%と約15%増加、また50代ではさらに上昇し約80%に達するなど、40歳が「脳の曲がり角」とも言える結果になりました。また女性は全体で約75%があると回答し約66%の男性を上回り、特に30代から50代では約10%以上男性より高くなるなど、女性は男性よりも衰えを自覚しやすい傾向にあることも明らかになりました。

オーストラリア・モナシュ大学の研究者らは、「Psychophysiology」誌に掲載された学術文献144件を系統的にレビューし、何万人もの被験者の脳を調べて人間の脳の結合性が生涯にわたってどのように変化するかをまとめました(米ウェブサイト『Big Think』)。

※The older adult brain is less modular, more integrated, and less efficient at rest: A systematic review of large-scale resting-state functional brain networks in aging;Hamish A. Deery, Robert Di Paolo, Chris Moran, Gary F. Egan, Sharna D. Jamadar;2022

導き出された結果から、40歳以降に脳は根本的な「配線変更」を開始し、その後数十年にわたって多様なネットワークが統合・結合され、それに伴って認知にも影響が及ぶことが示されました。

人間の脳神経が再配線を行い、新たな接続を作ることで知識を獲得する能力は「神経可塑性」として知られています。この神経可塑性は、年齢によって大きく変化します。つまり、加齢に対応するために脳の構造が変化するということ。

10代から20代の初期には、脳は内部に高い結合性をもつ多数の分割されたネットワークを形成しており、これは特殊な処理を行う能力を反映しているとみられています。これぐらいの年齢では、スポーツや語学を学び、才能を開花させる時期であるため、理にかなっているといえます。

神経可塑性は、私たちの脳に一生備わっている能力なのですが、40代半ばになると、その状況は一変するようです。分割された脳内ネットワークの内での結合性が少しずつ弱まり、それぞれのネットワーク間の広域的な結合が強まるのです。さらに80代になると、脳はさらに局所的な専門性を失っていき、広くつながり、統合される傾向があるとされています。

しかし、このことは悪いことばかりではなく、「主に自動的またはよく練習されたプロセスに依存するタスクは、年齢による影響が少なく、語彙や一般的な知識など、生涯にわたってわずかに増加する可能性さえある」と、論文執筆者らは指摘しています。

老化の過程でニューロンが減少しても、脳が完全に衰えてしまうわけではなく、私たちの脳は「大規模な再配線」を経験すると説明されています。言い換えれば、多岐にわたっていた神経ネットワークを統合し、再接続することで、脳の構造を変化させて加齢に対応しようとするのです(英『BBCサイエンス・フォーカス』誌)。

言うなれば脳システムのモデルチェンジ。衰退すると悲観的になるのではなく、変化に対する対応をポジティブに考えていきましょう。

モナシュ大学が提唱したもう一つの理論

米ウェブサイト『Big Think』は、モナシュ大学の研究者が提唱した理論のなかで、加齢が食物の消化吸収に影響を与え、若いころのようにすべての栄養素を効率よく吸収することができなくなるという点にも注目しています。

研究者らは「成人の脳は体重の約2%に過ぎないが、グルコース供給量全体の約20%を必要とする」と、脳は資源を必要とする器官であり、単純な糖であるブドウ糖に貪欲であることを指摘。

年をとると体の動きが鈍くなり、脳の働きも悪くなる傾向にあるのですが、これは脳へのブドウ糖の供給が減ることのみならず、脳が“燃料”を有効に活用できていないことを意味するのです。つまり、ネットワークの変化は、燃料であるブドウ糖の減少と老化する脳という状況に適応し、できるだけうまく機能するように自己再編成した結果であると考えられるそうです。

人生の初期には、脳の機能的ネットワークが急激に組織され、その後30年から40年かけてさらに洗練されていきます。やがて加齢によって徐々に脳が衰えると、機能低下につながる変化とそれを補うための変化が多面的に起こる、というのが結論のようです。

健康的なライフスタイルが若々しさに繋がる

米ウェブサイト『Big Think』によれば、適切な食事や定期的な運動といった健康的なライフスタイルによって、脳の老化を長期にわたって食い止めることができると指摘しています。脳の加齢を抑えるためにも、心身のケアを始めるのに遅すぎるということはないのです。

健康は、さまざまな実践と良い習慣の組み合わせによってもたらされます。とりわけ3つの生活習慣「食事・運動・睡眠」は重要です。

健康になるためにはまずは、エクササイズをする時間を取ること。興味のあるスポーツでも定期的なワークアウトでも、定期的にエクササイズをする時間をとりましょう。

それに加え、摂取する食べ物にも気をつけなければなりません。食事は良かれ悪かれ健康に影響を与えます。ぜひ、油っぽい食べ物や加工食品を食べるのは避けましょう。その代わりに、心身の健康に良いビタミン、ミネラル、そのほかの栄養素が含まれている食品を食べましょう。

また、健康的なエイジングにとって睡眠も同様に重要な要素の一つです。「睡眠は量より質」と言われますが、あまりにも睡眠時間が少なすぎても改善の必要があります。睡眠時間が6時間以下だと、日々の疲労やストレスからの回復が遅れ、老化を早めてしまうためです。睡眠時間が短すぎる場合、心疾患やがんなどの生活習慣病リスクが高まるとも考えられています。当然ながら、睡眠時間がただ長くても質が悪ければ、それもまた改善しなくてはならないでしょう。日々のストレスや不安が睡眠の質を低下させてしまうため、ストレスや不安をため込まないよう、日常からそれらに対処できる方法を身につけておくことが大切です。

以上、エゴレジ研究所から脳の変化についてご紹介しました。脳は一生変化します。さまざまな研究結果により、年齢に関係なく衰えにくい機能があることが明らかになっています。健康的なライフスタイルを維持し、脳の働きをサポートすることが、40代以降も元気でいるための鍵と言えるでしょう。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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