タイプ別行動パターンと健康リスク

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

ストレスを受ける環境下に置かれたとき、心に大きな負担をかけてしまう人と、そうでない人がいます。ストレスの感じ方には個人差があり、思考や行動パターンによって心身が受ける負荷は大きく変わってきます。健康心理学では、欧米を中心とした研究によって、がんや、心筋梗塞や狭心症などの心臓病にかかりやすいストレスの傾向、性格傾向があることが判明しています。そこで今回は臨床心理学における3つの性格タイプ別行動パターンと健康リスクについてご紹介します。

性格タイプ別行動パターン

性格タイプ別行動パターンは、アメリカの循環器系学者M・フリードマンとR・ローゼンマンが、1959年、性格と虚血性心疾患の関わりに着目して調査した結果、虚血性心疾患を起こしやすい行動パターンを持ったグループを「タイプA型」、そうでないグループを「タイプB型」に分けて提唱したものです。関連する性格特性として「タイプC行動パターン」があります。

◆タイプA行動パターン

フリードマンとローゼンマンタイプによって、A行動パターンは、冠状動脈疾患との関連性が指摘されています。タイプA行動パターンを示す性格特性は、つぎのように定義されています。

自分が定めた目標を達成しようと持続的な強い推進力を持っている。
競争を好み追求する傾向がある。
永続的な功名心を持っている。
時間に追われながら多方面にわたる活動を行っている。
身体的・精神的活動速度を常に速くしようとする習癖がある。
身体的・精神的な著しい過敏性を持っている。

性格は元からの気質もありますが、それがどのような形で行動に現れるかには生まれ育った環境の影響も受けます。これには家庭や人間関係だけではなく、その国の文化も含められます。つまり、フリードマン達が見た「タイプA」と日本人のそれとは異なる点があるということです。
文化的背景として協調や連帯感があるため、日本人のタイプAは「断ることができずに仕事を抱え込む仕事中毒」が多いようです。反面、協調性を保つために敵意や攻撃性は表さないとされます。ただこれは表に出さないだけで、内面的には敵意や攻撃性は発生しており、身体に良くないことには変わりはありません。

◆タイプB行動パターン

タイプB行動パターンは、タイプA行動パターンとは対照的な性格特性であり、「普段からリラックスしている」「神経質ではなく」「寛容的である」「ゆったりとしている」といった特徴を持っています。
こうした性格特性を持っている人は、タイプA行動パターンを示す人に比べて、ストレスを感じにくく、身体的にも健康であると示されています。

◆タイプC行動パターン

アメリカの心理学者リディア・テモショックは、サイエンスライターのヘンリー・ドレイアとの共著で『がん性格 タイプC症候群』(大野裕監修、岩坂彰・本郷豊子訳、創元社 1997年)という本を出版しています。
タイプC行動パターンは、怒りや苛立ち、不安や心配といった感情を抑制し、理性的または合理的な行動をするといった特徴を持つ性格傾向です。
闘争的なタイプAと違っていつも雰囲気が良く、自分を犠牲にしてまで他者を気遣うので他人ともトラブルを起こすことは少なく、「誠実な人」「真面目な人」という印象です。素直な感情を心の奥で抑圧してしまい、解放できないでいるために、ストレスは無意識のうちに蓄積してしまいます。それが身体の免疫機能に影響し、がんのリスクを高めると考えられています。
またタイプCに該当するような性格傾向を持つ方は、これはうつ病になりやすい典型的な性格傾向です。実はタイプCの性格傾向は、うつ病になりやすい性格傾向である「メランコリー親和型」の性格傾向と共通するところが多いのです。

行動を見直そう

日常の振り返りから自分のストレスの傾向が見えてきましたか。自分の性格傾向には、ある疾患にかかりやすくなるというリスクがあるのだということを理解し、その上で、改善できそうなところだけでも少しずつ時間をかけて改善していけばいいのです。無理のない、出来そうな範囲で地道にゆっくりと改善していくことが大切です。

間違えてはいけないのが、タイプAもタイプCも、その性格自体が問題だというわけではありません。

タイプAの人は、仕事の効率を重視し、短い時間にたくさんの仕事をこなそうとします。1日の予定もびっしり詰める傾向があり、他人の遅い行動にもイラつきを隠せません。悪く言えば『せっかち』ですが、『真面目な頑張り屋』とも言えます。現代の向上心の高いビジネスパーソンに多いタイプです。

タイプCは周囲を気遣っているという素晴らしい面があります。いわゆる“いい人”なのですが、突然、心のバランスを大きく崩してしまう危険性があるので注意が必要なのです。問題は性格そのものではなく、その性格が「ストレスを受けやすい」という点です。

まずは自分がどのタイプの行動傾向かを知ることで、どんな時にストレスが発生するのか見えやすくなります。そこから先のストレス発散方法については人によって合うものを選ぶと良いと思いますが、オススメできる発散方法をいくつかご紹介します。自分に合うものを選んでやってみましょう。

健康的な生活習慣3つのR

ストレス対処は自分を知るところから始まります。知らず知らずの間に蓄積していくのがストレス。ストレスに対処するためには、日ごろ感じているストレスに気づくことが不可欠です。臨床的には、行動療法、マインドフルネス、運動療法など様々な方法がありますが、まずは日頃から【3つのR】を意識することで心身の疲弊を防ぎましょう。

1.レスト(Rest)
休息・休養・睡眠を取りましょう。日中は時間を取るのが難しいかもしれませんが、短時間の休憩でも十分に気分転換になります。意識してテレビやスマホ、パソコンなどの使用は控えるだけでもいいのです。

2.レクリエーション(Recreation)
趣味や娯楽、気晴らしになるものを持ちましょう。アクティブに運動や旅行でも良いし、家の中で読書や映画鑑賞など、自分の性格に合わせて行やすいものを選びましょう。好きなことをしている時は、嫌なことを忘れることが出きたり、楽しいことにはワクワクして人はリフレッシュできます。

疲れやストレスの程度によっては、ただ心のおもむくままにゆったりした時間を過ごすだけでも構いません。空っぽの時間を作ることです。計画を立てていたとしても、気分が乗らないようなら無理をしない方がよい場合もあります。人と会いたくなければ家でゆっくり過ごす、何もしたくなければ日がな一日ぼんやりと過ごす、といった休日があっても良いのです。

3・リラックス(Relax)
自分では気づかないうちに多くの緊張を感じがちなのが現代社会です。意識的に緊張を緩める時間を持ちましょう。

気軽にできるものにはストレッチやアロマテラピーなどがありますが、中でも場所を選ばず短時間でできる「腹式呼吸」がおすすめです。

腹式呼吸の手順として、まず体を楽にしておへその下に手をあて、10秒ほどでゆっくりと息を吐きます。お腹の中の空気を全て出しきるイメージで、口をすぼめて息を細く遠くに吐きだしましょう。吐ききったら、今度は出した空気を再びお腹へ取り入れるように3秒ほどかけて鼻から息を吸っていきます。目一杯息を吸いこんだら、少し息を止めて、再び息を吐いていきます。この呼吸をすきま時間で試してみてください。

以上、エゴレジ研究所から、3つの性格タイプ別行動パターンと健康リスクについてご紹介しました。習慣化した思考や行動パターンをいきなり大きく変えることは難しいものです。自分一人で何とかしようと追い込むのではなく、常に心にゆとりを持てるよう、仕事の取り組み方やスケジュールを調整してみませんか。あなたの心と体からの声を聞いてあげてください。意識して出来るところからやってみましょう。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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