自由時間とウェルビーイング

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

毎日毎日忙しくて自分の時間がない・・・とつぶやく方は結構多いようです。自分で自由に使える時間がどのくらいあればいいのか、気になるところです。そこで今回は、自由時間とウェルビーイングのお話です。

働く人のウェルビーイング調査

2021年10月に日経BPコンサルティング(東京都港区)は、20~60代のビジネスパーソンを対象にオンライン調査を実施しています。有効回答数は1119件です。

幸福度に影響を与えるものを優先順位とともに聞いたところ、
1番目に影響を与えるものは、収入(29.3%)、健康(25.6%)、家族(20.1%)、自由時間(5.4%)、仕事のやりがい(5.2%)でした。
2番目に影響を与えるものは、健康(21.2%)、収入(19.0%)、家族(12.8%)、仕事のやりがい(12.3%)、趣味(6.6%)、自由時間(6.3%)
3番目に影響を与えるものは、収入(17.8%)、健康(14.3%)、自由時間(10.5%)、仕事のやりがい(9.6%)、家族(9.2%)という結果でした。

幸せを感じるのに必要な自由時間

では、幸せになるためには1日どれくらいの自由時間を必要とするのでしょうか。この疑問に対する研究結果があります。

Journal of Personality and Social Psychology(2021)に、研究グループが発表した論文は、自由時間の不足だけでなく過剰も調べた新しい研究の一つとして報告されました。

この研究は3つの段階に分けて行われました。
1)最初は2012年から2013年の間に2万2000人を対象に実施。
時間の過ごし方を尋ねるアンケートで、内容は過去24時間の過ごし方を細かく報告し、それで得た幸福度を自己判断するものでした。

2)次に、この結果を裏付けるため、1992年から2008年の間に行われた労働力の推移に関する国民調査の結果と照らし合わされました。※この調査は約14,000人のアメリカの就労人口の休み時間を調査したもの。

3)最後は6000人超の参加者に一定の条件付きで仮想の生活を想像してもらう調査です。少ない自由時間(1日15分程度)、中間の自由時間(1日3.5時間)、多くの自由時間(1日7時間)がある暮らしに参加者を分け、与えられた自由時間に基づいて得た満足度を推定してもらうものです。

その結果、自由時間がわずかの群、または多い群では、適度な群と比べてウェルビーイングが低いことが明らかになりました。

自由時間がわずかな群では、適度な群に比べて、ストレスを多く感じていました。しかし、自由時間の増加に伴いウェルビーイングは向上したものの、1日の自由時間が2時間程度になるとその向上が横ばいとなり、5時間を超えると低下し始めることが示されました。

もう一つ興味深い結果は、生産的な方法、例えば、運動や趣味などで自由時間を過ごす人は、自由時間が長くても短くても同じくらいの幸福感を得られるのに対し、非生産的な方法、例えば、ネットやテレビで時間を費やす人は、長い自由時間だと幸福感を得られなくなるということです。
自分が充実感を感じ、自分の可能性を拡げることを楽しめる人は自由時間が長くても幸福感が得られますが、そうでない場合は、長すぎる自由時間は持て余してしまうと言えそうです。

この研究の主要執筆者である米ペンシルベニア大学ウォートン校のマリッサ・シャリフ博士は、
「私たちはよく忙しすぎることに不満を持ち、もっと自分の時間が欲しいと言います。しかし、ただ自由時間を増やすことが幸福につながるとは限りません。この調査の結果から、一日中、全ての時間を自由に過ごせる人はかえって不幸を感じることになることがわかりました」とコメントしています。彼女によると「一日に2時間ほど、やりたいことをかなえるための自由時間を設ける」のが理想だとのこと。

マリッサ・シャリフ博士は幸せに必要な3つの本質的要求を刺激する活動を積極的に行うよう提案しています。その欲求は「独立心」「社会性」「自分の能力の確認」の3つ。
自分だけの時間を持つことで「独立心」を養い、他者と関わることで「社会性」を実現し、自分の行動に目的や意味を加えることによって「自分の能力を培う」ことが可能となる—この3点が人を幸せに導くそうです。

一方で、米ジョージ・メイソン大学ウェルビーイング促進センターのJames Maddux氏は、この研究結果に対し、
「生産的な自由時間が目的のない自由時間と異なるということは、理にかなっている。とはいえ、人にはさまざまな考え方がある。自由時間のために稼ぎを減らすことを望まない人もいれば、たとえ給料が減っても仕事を減らして自分や家族のための時間を増やしたいと考える人もいる。また、“生産的”な活動についても、普遍的な定義はない。読書に意義を見出す人もいれば、それを怠惰な活動と思う人もいる」と述べ、
「この調査結果から、人がどの程度の自由時間を持つべきかについての処方箋を得ることはできない」とも結論づけています。

自由時間とワークライフバランス

もう一つ、イギリス版『ハフィントン・ポスト』(2017)で取り上げられた、イギリスの保険サーヴィスグループ「Direct Line Insurance」が2,000人に対して実施された調査によると、
「幸福を実感するには、どれくらい自由時間が必要か」、完璧なワークライフバランスに必要な最低限の時間は7時間(正確には6時間59分)という結果でしたが、現実の自由時間の長さは平均して、4時間14分だという結果になっています。

「Future Foundation」が発表した別のリポートでは、
「わたしたちは自分たちのキャリアや仕事が情報端末の利用に大きく依存していると感じている。そして電子機器とのかかわりはどんどん深くなっていて、いついかなるときもチェックしなければならないと思っている。このため仕事であろうとなかろうと、わたしたちはより多くの時間を電子機器による業務に捧げて、スポーツや趣味や、家族や友人との時間を削っている。データはイギリスの市民に限られるが、彼らは家族といるときさえも多くの時間をソーシャルネットワークに費やしている。そのうちの47%は、あらゆる状況においてもFacebookにポストしたりTwitterでツイートをしている」と報告しています。

こうした事情から、日々のルーティンから完全に自由である7時間を捻出するのは困難なことがわかるでしょう。とはいえ、家族といるときにスマートフォンの電源を切ったり、自由時間の計画をきちんと立てることは可能ではないか、「Direct Line」の広報、マット・オーウェン氏は
「生活と仕事の完璧なバランスの基礎となるのは、オフィスから出たら情報を遮断することです。多くの人が本当に挑戦しなければならないことはこれだけです」 とコメントしています。

以上、エゴレジ研究所から自由時間とウェルビーイングについてご紹介しました。「自由時間」は個々人の意思で使い方を決めることができるものであり、「自由時間」が充実すると、その「質」に変化が生まれます。個々人の意思で取り組む活動は、仕事とは異なる価値をもたらすかもしれません。自分の時間を使って自らの意思で行う活動は、私たちの人生を豊かにしてくれるでしょう。時が流れに身を任せて日々を過ごすのではなく、自分の時間を使うことにしっかりとした意識を持つことが大事です。この心がけだけで、充実した毎日になる1歩になることでしょう。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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