猛暑とメンタルヘルス

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

気象庁の3か月予報では、8月から10月にかけても全国的に気温が高く、40℃に迫る災害級の厳しい暑さが続くようです。最高気温が35度以上の猛暑の影響は至るところに現れます。急激な温暖化で地球が存続の危機にさらされているのは言うまでもないのですが、実は私たちのメンタルヘルスも猛暑の影響を大きく受けています。そこで今回は、猛暑とメンタルヘルスについてのお話です。

猛暑による心のダメージ

猛暑が心にダメージを与えるという現象は、「あらゆる種類のメンタルヘルスについて確認されている」と指摘するのは、マックス・プランク人間開発研究所の研究者であるニック・オブラドヴィッチ氏。
彼は2018年に、気候変動がメンタルヘルスに及ぼすリスクを分析した共同研究を発表しています。精神的な疲労から、攻撃性の亢進、さらには自殺率の上昇まで、メンタルヘルスのさまざまな問題と気温の上昇とのあいだに関連性があることを研究によって明らかにしたのです。

精神医学専門誌『JAMA Psychiatry』に掲載された2022年の研究結果では、アメリカでは猛暑になると、メンタルヘルスの治療で救急外来を訪れる人が増加することを示しています。また、気候変動の社会科学専門誌『Nature Climate Change』掲載の2018年の論文でも、月の平均気温が1℃上がるにつれて自殺率が0.7~2%高くなり、気温が少し上がるだけで、暴行が増えることを示しています。

猛暑に対する脳の反応

気温と気分の密接な関連性について、英オックスフォード大学スミススクール(企業の環境保全・サステナビリティ活動を支援・調査する学際的なハブ)で講師を務めるローレンス・ウェインライト博士の話がウィメンズヘルスで紹介されています。
(以下、「 」はウェインライト博士)

「脳の主要な領域、特に問題解決能力、論理的思考、注意力を使って複雑な認知作業を行うのに必要な領域(認知機能)は、安静時の体温が37℃を超えると低下することが分かっています」

◆猛暑で認知機能が低下する要因

この認知機能の低下の度合いは、体温の上昇率や体の脱水状況、作業の複雑さによって変わると言います。この裏にあるメカニズムは謎に包まれたままですが、このメカニズムに複数の要因が関係しているのは確かで、ここではその要因を5つ。

  1. 体温調節
    「猛暑では、体と脳が体温調節にかかりっきりになります」
    「それで脳に他のことをする余裕がなくなり、認知機能が低下することは十分に考えられます」
  2. 脳の辺縁系
    このメカニズムには情動反応をつかさどる脳の辺縁系も関係しています。
    「これまでの研究結果を見る限り、猛暑による認知機能の低下には、辺縁系も関わっているようです」
  3. 寝不足
    猛暑は睡眠を妨げます。よく眠れなかった日の翌日は、ご存じの通り頭がまともに働きません。
  4. 水分不足
    「体が脱水状態になると、脳は正常に働きません」
    「猛暑で複雑な認知作業を行う能力が低下するのは、このせいだろうとする研究結果も2~3あります」
  5. 神経化学物質
    このメカニズムには、ドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンという神経化学物質の関与も見られる。これらの神経化学物質は喜びを感じたり、注意力やモチベーションを高めたりする上で重要な働きをするだけでなく、体温調節の一翼も担うものです。暑さでこれらの神経化学物質のバランスが崩れれば、認知機能が低下してもおかしくないということです。

◆猛暑によるメンタルヘルスの悪化を防ぐ3つのポイント

メンタルヘルス疾患の症状は人によって大きく違い、熱の影響の受け方も人それぞれ。よって一番よいのは、かかりつけ医や心理療法士、精神科医の助言を聞くこと。でも、一般的には以下の3点を考慮してほしい。

  1. 飲酒を控える
    「お酒は減らすか、やめるか、にしましょう」「アルコールは体内の水分を奪いますし、体が脱水状態に陥ると、大うつ病性障害と全般性不安障害の症状が悪化することも分かっています」。日頃から水をたっぷり飲んで、運動後は失われた電解質をスポーツドリンクで補いましょう。
  2. 睡眠を重視する
    途切れ途切れの睡眠は、大うつ病性障害と全般性不安障害に深刻な影響を与えます。寝室は、扇風機やクーラーで可能な限り涼しくすること。日中も、ブラインドを下げて室温の上昇を防ぐといいでしょう。
  3. 自分を責めない
    自己批判はやめて自分にやさしく。「猛暑は私たちのパフォーマンスに大きな影響を与えるので、“いつもの自分”と比べないようにしてください。『いつもは9時間働けるのに、どうして昨日も今日もダメなの?』なんて思う必要はありません」「猛暑の影響で、可能だったことが不可能になることはあります」

猛暑と自律神経ケア

気温が高い夏は、体温を一定に保つために自律神経が酷使されます。体内の熱を放散するため、発汗を促したり、体表の血管を拡張して血流を増やします。室内と屋外の温度差、強烈な紫外線、暑さによる睡眠不足なども自律神経に負担をかける要因になります。自律神経が疲れ果て、交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまうと心身のさまざまな不調を引き起こします。

脳腸セラピストの桜華純子氏は、健康に過ごすための簡単「自律神経」ケアを紹介されています。

1.朝起きたらコップ1杯の水を飲もう
猛暑は寝ている間もかなりの汗をかくため、朝は脱水症状になりがちで、血流も停滞します。そのため、起きたらコップ1杯の水を飲みましょう。
水分補給のほか、腸への刺激により副交感神経が高まって、その後交感神経に切り替わりやすくなるので、起きがけに水を飲むことは自律神経の切り替えにも役立ちます。
その際、冷え切った水は胃腸に負担をかけるので常温に近い状態で飲むようにしましょう。

2.免疫力アップ+疲労回復効果のある食事
自律神経バランスは、栄養不足によってますます乱れやすくなります。
免疫力アップ、疲労回復に必要な栄養を毎日の食事で取り入れるようにしましょう。
【ミネラルを含んだ食品】 
✓野菜
✓海藻
✓ナッツ
✓小魚    などを偏りがないように食べましょう。

【発酵食品と食物繊維】
善玉菌を増やす効果のある発酵食品と食物繊維の豊富な食品は、自律神経バランスと関係の深い腸の働きを活性化します。
✓納豆
✓キムチ
✓甘酒
✓ぬか漬け
✓海藻
✓根菜  など

【ビタミンB】
疲労回復に特に効果的な栄養素です。中でも、ビタミンB1は肉体疲労にも精神的な疲労にも良い働きをしますので、不足しないようにしてください。
✓きのこ類
✓魚肉
✓ゴマ
✓豆類    などを積極的に食事に取り入れましょう。

また、夜は身体をリラックスさせて、睡眠導入に向けての準備の時間を作りましょう。ヒーリングミュージックや読書、アロマ芳香浴なども効果的です。眠る前には深呼吸を10回ほどしていただくことで、さらに自律神経バランスは整いやすくなります。

以上、エゴレジ研究所から、猛暑とメンタルヘルスについてご紹介しました。猛暑では、暑さから寝苦しくなり十分な睡眠がとれなかったり、食欲が落ちたりなど、身体にも心にも負担がかかります。猛暑でも日々少しのケアを続けて、毎日気分良く過ごせますように!

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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