化粧とメンタルヘルス

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

働く女性に欠かすことのできないのがメーク。あなたは何のためにメークをしますか?『自分のため』という人もいれば、『マナーや身だしなみだから』という人もいるでしょう。化粧をする目的や理由は人によって様々ですが、実は化粧は外見だけでなくメンタルヘルスにも一役かってくれるってご存じですか?今回は、メンタルヘルスの視点から化粧の効果についてお話します。

化粧(メーク・スキンケア)を行う理由

化粧を、主に日常的に顔を整えるために行うものとした場合、一般的には「スキンケア」と「メーク」の両方を含むようです。

ポーラ文化研究所が、15~64歳の女性1,500人を対象に行った調査(2020年10月30日~11月4日)結果があります。

スキンケアを行う理由をたずねたところ、「エイジング対策として」「肌の悩みをケア・カバーしたいから」「身だしなみ・マナーとして」「紫外線から肌を守りたいから」といった項目が上位に。50代以降のスキンケアは「エイジング対策として」が一番のようです。

一方でメークを行なう理由では、「身だしなみ・マナーとして」が15~24歳では全体より10%以上少なく、55~64歳では10%以上多いという結果。若い年代より年齢を重ねた年代で、「身だしなみ・マナーとして」メークを行う理由に選ぶ人が多いことがわかります。

また、「メークで得たい気持ちや気分」については「自分に自信がもてる」が26%と高く、「明るい気持ちになる」「引きしまった気持ちになる」が約20%と続きました。
ただ、年代が45歳以上では「特にない」とする割合がかなり高くなっていました。

メークの心理的効果に関する研究

化粧に関する心理学的研究は、1980年代から盛んになってきました。化粧は慈しむ化粧(スキンケア)と飾る化粧(メーキャップ・フレグランス)に大別されますが、感情に及ぼす影響に関する研究は、そのいずれもが高揚と鎮静に関するものです。

■化粧は、気を引き締め、適切な対人行動を生む快い緊張感を作り出す(松井・山本・岩男、1983)

■化粧は、生活に対する満足感や自信を高める(余語・浜・津田・鈴木・互、1990)

■化粧は、短期的な気分を改善し、副交感神経を優位にする。と同時に不安の軽減効果や主観的幸福感などの長期的な心理的安寧をもたらす(中幡・吉田、2007)

■化粧の心理的効果には、積極性の向上、気分の高揚、安心感の増加があり、同時に生理的効果として、ストレスの緩和、免疫系の亢進が生じる
また社会的効果として自尊心の維持、社会性の促進が期待できる(拓殖ほか、2000)

■日本メナード化粧品(株) 総合研究所と日本福祉大学 情報社会科学部の行った研究(2006)では、メークアップ前(素顔時)とメークアップ後を比較した結果、メーク後にストレスが軽減されたことがわかりました。
※指標である「唾液中のコルチゾ-ル」は、ストレスを受けた時に増加するホルモン。

さらにメークによって「活気」が向上し、「不安や緊張」が和らぐ方向に推移し、「気分の高揚」や「リラクゼーション効果」といった心理的効果のあることも証明しています。

■化粧行動の目的の研究(2012)では、以下のことを明らかにしています。

  1. 年齢が若いほど、他者を意識して化粧を行う傾向が強く、年齢が上がるにつれリラクセーションを目的に化粧する傾向にある
  2. 未婚女性は、異性への意識や魅力向上を目的として化粧を行う傾向が強い
  3. 化粧をする目的には、公的自意識(身だしなみ、同性への意識・同調、異性への意識・魅力向上など他者から見られる自分を意識する)が関連する
  4. 私的自意識(外から見えない自分を意識する)の面では「気持ちの切り替え「リラクセーション」などが関連する 

以上から化粧のメンタルヘルス効果をザッとまとめると、

✓ポジティブな心理的効果を促す
✓不安を減らす
✓リラックスや安心感が高まる
✓ストレスを軽減する

化粧がもたらす心理的な作用は年代によっても変わり、特に50代の女性の場合はメークがリラクゼーション効果を高めることにつながるようです。

さらに、化粧には「自己防衛」の面もあります。メークによって心を固く結んで「公」の顔をつくって社会に飛び出し、帰宅後にはメークを落とし、スキンケアをすることで心の結び目を解いて「私」の顔に戻る—いうなれば、化粧は日常生活に組み込まれた感情調節装置でもあるのです。

加えて、化粧は視覚・聴覚・嗅覚・触覚を刺激します。また化粧前より化粧後の方が脳の血流が高まり、脳波も正常なパターンに近づくと言われています。

医療や介護の現場では、化粧療法を継続した群は継続しなかった群に比べ、3カ月後の認知機能の低下が抑制されたこともあり、化粧による認知症の症状軽減も期待されています。
※化粧療法はメイクセラピーやコスメティックセラピーとも呼ばれており、高齢者や、病気やケガなどが原因で心に問題を抱えている人に対して行われます。

コロナ禍のメークへの影響

様々な研究によって、メークは外見を美しく整えるだけでなく、心の健康を高め、Well-beingにのぞましい影響を与えるということが明らかになっています。

コロナ禍で仕事がリモートになることが増え、プライベートでも外出を控えることを余儀なくされてきました。コロナ禍でのマスク着用や外出の制限によって

✓全体的にメークをする機会が減っている
✓以前のようにメークを楽しむことができていないと感じている女性が増えていること、
それによって
✓日常生活に満足できる機会が減っていること が調査結果で明らかになっています。

この状態はQOLやメンタルヘルス にも影響を及ぼしかねません。

3月13日からマスク着用については個人判断となり、マスク生活が大きな転換点を迎えました。メークに対する考え方や付き合い方を今一度見直してみるタイミングなのかもしれません。化粧の心理的効果、メンタルヘルスへの影響を考えて、誰か・何かのためにではなく、自分のために「セルフケアとして化粧をする」というのはどうでしょうか。

以上、エゴレジ研究所から、メンタルヘルスの視点から化粧の効果についてご紹介しました。メンタルが不安定なときは、なかなか見た目のことには気がまわりません。気づけば、長らく髪を切っていなかったり、体重が増えていたり、肌が荒れてしまったり・・・。そんな自分の姿を鏡で見て、さらに落ち込む…という悪循環に陥りがちです。メークやスキンケアは気軽に楽しむことができます。マスク生活の転換点を機にセルフケアに取り組んでみませんか。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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