代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
長期化するコロナ禍のストレス(コロナ疲れ)に加え、一年の中でも気象状況が目まぐるしく変化する春先は、いつも以上にバテやすい時季です。気圧の変化や寒暖差などの気象や生活の変化によって自律神経が乱れてしまうことが「春バテ」を引き起こす要因の一つです。そこで今回は、春バテ対策とそのカギとなる「自律神経」のお話です。
春の不調調査
女性の健康力向上を通した社会の活性化への貢献を目指す『ウーマンウェルネス研究会supported by Kao』(代表:対馬ルリ子/産婦人科医)が、春の不調に関する意識調査を首都圏在住の835人(20代~50代男女)を対象に実施しています。
その結果、季節の変わり目である春(3-5月)に、身体の不調を感じている人が6 割を超え、精神面の不調を2人にひとりが感じていることがわかりました。また、両結果とも男性よりも女性の割合が1割ほど高い結果となりました。
この調査の結果から、春の激しい寒暖差と、コロナ禍で例年以上にストレスを感じやすい状況が、心身に影響を与えていたことが推測されました。一昨年のデータですが、今年もまだまだ同様の状況が推定されます。
現代人の「冷え」や「自律神経」の乱れに関する著書も多い東京有明医療大学教授 川嶋 朗先生は、『長期化したコロナ禍で疲れやストレスを慢性的に溜めている人が多く、春バテ症状の悪化に注意です』とされています。
キーワード「自律神経」とは
運動神経などとは違って自分の意思でコントロールできず、自律して機能することから「自律神経」と名付けられました。自律神経は私たちのフィジカル&メンタルと周りの環境の変化の間を取り持つ「架け橋的存在」です。私たちが無意識でも常に体の「恒常性」を保てるように、血流・ホルモン・呼吸・免疫・排泄・代謝・消化吸収などの活動に働きかけていて、周辺環境だけでなく体調や加齢による体内環境の変化も自律神経の活動に関わってきます。その主な役割は、生命活動を支えること。具体的には、次のような働きです。
✓心臓の動きを調整する
✓発汗を促して体温を調整する
✓血管を広げたり、収縮させたりして血圧や体温を調整する
✓胃腸の働きをコントロールする
自律神経は、交感神経と副交感神経という、2つの相反する働きをする神経によってコントロールされています。
● 交感神経…車の機能に例えるなら、アクセル役。日中に活動する時など、心身が緊張・興奮する際に優位に働きます。
● 副交感神経…車でいえばブレーキ役で、くつろいだり眠ったりする時など、心身がリラックスする際に優位に働きます。
例えば血管でいうならば、交感神経は血管を収縮して心拍数や血圧を上げますが、副交感神経は血管を拡張させて心拍数や血圧を下げようとします。
緊張する状況では交感神経が優位になり、心拍数や血圧は上がりますが、夜間などに副交感神経が優位になると、心拍数や血圧の数値が落ち着き、リラックスした状態になります。
理想的な関係は、両方が同じような高いレベルで働いていて、活動状態の時は交感神経が「やや優位」に、リラックス状態では副交感神経が「やや優位」になる形。それが、心身ともに充実した、最も健康な状態です。心と体の健康状態は、自律神経のバランスによって決まるといっても過言ではありません。
自律神経の4つのタイプを知ろう!
交感神経と副交感神経のバランスは人それぞれ。必ずしもどちらか一方が優位になるわけではなく、両方の働きが高い人もいれば、逆に両方が低い人もいます。
『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(日本文藝社)の著者で、自律神経研究の第一人者である小林弘幸教授によると、人間は、自律神経のパターンによって4つのタイプに分かれるそうです。自分はどれに近いかチェックしてみましょう。
1.「いきいき能力発揮タイプ」:交感神経と副交感神経が両方とも高い
・何事にもやりがいを感じるし、自分には成果や結果を出せる力があると感じる。
・食事の時間になると空腹を感じ、いつも食事がおいしい。
・夜はストンと眠ることができる。
・一晩寝れば疲れがリセットできる。
・冷えを感じることはない。
2.「がんばりすぎタイプ」:交感神経が高く、副交感神経が低い
・仕事や家事、人間関係のストレスで一日中イライラ、ピリピリしている。
・失敗することを考えると不安になるので、集中して物事に取り組んでいる。
・胃もたれや胸やけすることが多い。
・夜、布団に入ってもなかなか寝付けない。
・入浴後も、少し経つと手足が冷えてしまう。
3.「のんびりタイプ」:交感神経が低くて副交感神経が高い
・何をやるにも億劫でやる気が起きない。
・食べてもすぐにお腹が空いてしまう。
・夜しっかり眠ったはずなのに昼間眠くなることがある。
・疲れるとすぐ眠くなり、日中だるいことが多い。
・冷えは感じないが、ポカポカして眠くなることが多い。
4.「ぐったり無気力タイプ」:交感神経と副交感神経が両方とも低い
・やる気や覇気が感じられず、いつもぐったりしている。
・身体がついていかず、仕事がままならない。
・食欲がないor食べるのがやめられない。
・寝つきが悪くて、眠りも浅く、途中で起きることもある。
・手足が冷えて眠れない。顔色も悪い。
自律神経のバランスを乱す要因として、季節性の要因に加え、ストレスや乱れた生活リズム、不規則な食生活、運動不足、喫煙、睡眠不足が挙げられますが、忘れてはならないのが「加齢」です。
実は、交感神経の働きは歳を重ねてもあまり変わらないのですが、副交感神経の働きは年齢とともに低下していくため、交感神経だけが強く働くアンバランスな状態になりやすいのです。
春バテの解消法
春バテによって起こる不調の解決方法には、どのようなものがあるのでしょうか?
深呼吸(腹式呼吸)
横隔膜を大きく動かすので内臓の動きが活発になり、血流がよくなります。しばらく続けていると副交感神経が優位になり、ストレスが軽減されます。
身体を温めるセロトニン、ドーパミンの分泌をアップさせる
身体を温めることで、幸せホルモン「セロトニン」、やる気ホルモン「ドーパミン」の分泌がアップし、血流も改善され全身に運ばれやすくなります。身体を温めるときは、肌に直接貼れる温熱シートを活用したり、炭酸入浴で温浴効果を高めたりしましょう。
炭酸入浴による自律神経トレーニング
就寝前に、ぬるめのお湯(38~40℃)につかりましょう。とくに炭酸入浴は副交感神経が優位になって身体が「リラックスモード」になり、眠りに入りやすくなり、睡眠の質も向上します。また、週5日以上、10~20分程度の炭酸入浴を継続すると、自律神経を鍛えることができます。
適度な運動
適度な運動は、血のめぐりの改善とストレス解消になります。とくに朝起きてから少し散歩をしたり、軽くストレッチをしたりすると、体内時計がリセットされ、規則正しい生活を送りやすくなり、自律神経を整えやすくなります。運動ができない場合でも、朝起きたら天候にかかわらずカーテンを開けて、日光を浴びるだけでも効果があります。
以上、エゴレジ研究所から、春バテ対策とそのカギとなる「自律神経」についてご紹介しました。春バテの対策には、自律神経を整え、交感神経と副交感神経の切り替えを適正かつスムーズに行うことが大切です。ストレスをためずにリラックスを心がけ、服装などで温度調整をすることも忘れずに。日ごろから自律神経を安定させる習慣は、健康と若々しさの大きな助けになるはずです。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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