代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
|
GM 畑 潮/心理学博士 |
マインドフルネスは、「今この瞬間に、意識的に、価値判断せずに、注意を払うことで生まれる気づき」や「今この瞬間に注意を向けた状態」などと定義されてます。今この瞬間起こっていることに注意を向けてネガティブ感情から心を離し、さまよっていた心を意識的に「今ここ」に戻すことで、さまざまなヘルスケア効果があります。難しいものと思われがちですが、実は毎日の暮らしに簡単に取り入れることが可能です。そこで今回は、心の筋トレ「マインドフルネス」のお話です。
「マインドフルネス」とは
もともとは1970年代にストレス解消法の一種として、マサチューセッツ工科大学の生物学者ジョン・カバット・ジンが、日本の禅の瞑想を元に、宗教色をなくして、一般の医療処置の補完療法として「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」を始めたことが端緒となっています。その後、90年代以降の脳科学の発展と合わせて研究が進み、今や科学的な裏付けがあるものになりました。アメリカ(ハーバード大学やスタンフォード大学など)を中心に研究が進められ、日本でも逆輸入の形で注目されるようになっています。
日本におけるマインドフルネスの第一人者である、マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事の荻野淳也氏は、以下のように説明されています。
マインドフルネスとは、いたってシンプルなもの。「今、ここ」に注意を向けている状態、ということです。つまり、ランニングをしていても、パソコンで作業をしていても、人との会話中でさえも、マインドフルになることはできるのです。
ハーバード大学の研究によると、現代人は仕事時間の47%を「マインドワンダリング」の状態で過ごしているそうです。マインドワンダリングとは、注意散漫で「今、ここ」に注意が向いていない状態です。 マインドワンダリングの状態だと、例えば、「仕事で失敗した」「家族と喧嘩した」といった「過去」を引きずって嫌な気分になったり、「明日のプレゼンがうまくできるか心配だ」などと「未来」を案じたりして、ストレスの増幅を招きます。「今、ここ」に注意を向けたマインドフルの状態だと、これを防げるわけです。 |
マインドフルネスは、誰でも習得できる技術です。座禅などの瞑想と違い、難しいルールもありません。とはいえ、コツはあります。
まず、呼吸を意識すること。「今、吸っている」「今、吐いている」ということを意識するのは、「今、ここ」に注意を向ける入口になります。 姿勢を正して座り、鼻から息を吸って、鼻から吐く、という時間を、毎日5~10分ほど設けて、その間は呼吸だけに集中してみましょう。これが、マインドフルネスの最も簡単な練習法です。 雑念が湧いてきても、「これではいけない」などとジャッジしないこと。雑念が湧いていることを、あるがままに認識できているなら、マインドフルネスの状態になっています。 出典『THE21』2020年2月号 |
●マインドフルネスの基本形 姿勢と呼吸
①: 椅子や床に背筋を伸ばしてゆったり座る
②: 目を閉じる または「半眼」状態にしてぼんやり床の一点を見つめる
③: 鼻からゆっくり息を吸い、鼻からゆっくり息を吐く
④: 自身の呼吸の様子を意識する 呼吸にひたすら集中する
⑤:これらを5〜10分程度続ける
マインドフルネスの効果
マインドフルネスの効果は、世界各国で研究、検証が行われていますが、その効果は大きく分けると次の3つに分類されます。
▼心を整える効果
マインドフルネスの「心を今この瞬間に引き戻す訓練」によって、ストレス源への注意を断ち切る力が向上し、また自分と相手の気持ちを感じ取る力が向上したりすることで、以下の効果が出ることが確認されています。
- 不安や怒り、落ち込みを緩和する
- 気持ちや情緒を安定させる
- 自己肯定力や自己受容力を高める
- うつや無気力を和らげる
- 思いやりや共感力、EQを高める
- 幸福感を向上させる
▼身体を整える効果
ストレスが緩和してメンタル状態が改善すると、自律神経のバランスが調整されてきます。また、身体の疲れや痛みなどを客観的かつ大らかにとらえることが上手になり、様々な身体状態が改善すると報告されています。
- 血圧が調整される
- 睡眠障害が改善する
- 痛みが緩和する
- 内臓不調が改善する
- 炎症が抑えられる
▼能力を向上させる効果
心を今この瞬間に引き戻し、ストレス源から注意を引き離す訓練によって、仕事の遂行を妨げる様々なマイナス要素が軽減され、コミュニケーション力の向上なども相まって、様々な能力が向上することが確認されています。
- 集中力や記憶力が向上する
- 仕事の処理スピードがアップする
- 変化への対応力が増す
- 論理的な思考力が向上する
- 相手の話や気持ちを理解する力が増す
- チームへの貢献意欲がアップする
すき間時間で始めるマインドフルネス
前述の荻野氏の著書「心のざわざわ・イライラを消す がんばりすぎない休み方」(文響社 )には、自分を大切にする暮らしのヒントとして「すき間時間で始めるマインドフルネス」が紹介されています。
日常生活の動作の中でマインドフルな瞬間を作るためのコツ64例から、ほんの一例をあげておきます。
①歩く瞑想
1.いつもよりゆっくりとした歩調に変え、ゆっくりと息を吸って息を吐く。1回の呼吸に合わせて一歩前に進む。このとき意識は足に向け、呼吸を足のペースに合わせるイメージでおこないます。
2.呼吸とともに、歩いているときの体を観察する。あげている足、足が地面に近づいていく感覚、地面に足の裏がつきはじめるときの感覚、体の重心が移動している感覚などに注意を向ける。
※手は自然な感じでゆらしていきましょう。歩くことに集中できなくなってしまわないように、手の振り方などは気にしなくても大丈夫です。
②利き手と反対の手で歯を磨く
利き手と逆の手で日常の動作をしてみると、不自由さを始め、いろんな身体感覚に気づきます。たとえば右利きの人は、試しに左手で歯を磨いてみてください。もっと簡単なところでは、パソコンのマウスを使う手を逆にしてみてもいいでしょう。違和感を感じて初めて気づくからだの感覚があります。
③信号待ちは、心を整えるチャンス
信号待ちの間、ゆっくり意識を向けて数回呼吸をしたり、深くゆったりした呼吸を一回だけ丁寧に行ってみてください。こんな小さなすき間時間に心を休ませる練習をしてみましょう。
④エレベーターの中で呼吸の数を数える
エレベーターは、他の人と一緒でも沈黙を保つことができる数少ない場所です。目的階につくまでの間、呼吸の数を数えることで呼吸に集中してみましょう。この時大切なのは、呼吸に意識を集中させつつも、「今、何階だっけ?」と、外側にも注意を向けて乗り過ごさないこと。集中しながらも意識を外側に向け、意識がそれ過ぎたら認知する力を使い、また集中していくことです。
⑤両手でコップを持ち一杯の水を飲む
今この瞬間、水を飲むことだけに集中してみましょう。ペットボトルの水を飲む場合は、持ち上げることろから飲み終わってキャップをしめるところまで。マグカップでも、一方の手を支えにしてもう片方の手もカップに添え、丁寧にいただきましょう。数十秒の動作ですが、たったこれだけなのに、自分の心にものを大事にする丁寧な気持ちが生まれ、カップの温度やのどを水分が通る感覚などさまざまな刺激を味わうことができ、気持ちのリセットになります。
以上、エゴレジ研究所から、心の筋トレ「マインドフルネス」についてご紹介しました。マインドフルネスは「心の筋トレ」と言われるように、続けることでネガティブな感情に気づきやすくなったり、徐々に物事と距離がとれるようになったりすることで、まわりに振り回されにくくなるのです。何が起こっても「私は私で大丈夫」と思える、しなやかな自分に変われます。大切なのは、1日1回でも1分でもよいので毎日続けることです。まずは自分のペースではじめてみることが、健やかな毎日の第一歩になるでしょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
この記事へのコメントはありません。