あなたの中の「無意識のバイアス」

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

自分自身では気づいていない認識や見方のゆがみ、「無意識のバイアス(アンコンシャス・バイアス)」って耳にしたことはありませんか? 働き方の多様化や多様性の理解、ジェンダーの問題などへの取り組みが求められる時代、この「無意識のバイアス」への気づきと対処法が個人にとっても組織にとってもポジティブな効果をもたらすと注目を集めています。そこで今回は、「無意識のバイアス」を取りあげてみました。

「無意識のバイアス – Unconscious Bias -」とは

「無意識のバイアス」は、これまでに経験したことや、見聞きしたことに照らし合わせて、「この人は○○だからこうだろう」「ふつう○○だからこうだろう」というように、いろいろなものを「自分なりに解釈する」という脳の機能によって引き起こされるものです。育つ環境や所属する集団のなかで知らず知らずのうちに脳にきざみこまれ、既成概念、固定観念となっていきます。

バイアスの対象は、学歴や年齢、性別、人種、貧富、民族、宗教などと様々ですが、自覚できないために自制することも難しいのです。

バイアスの典型的パターン

「無意識のバイアス」は、何気ない日々の行動や言動となって現れます。女性や若い人に対して見下したような態度や軽く扱うような言葉を投げかけたり、マイノリティを無視するような心無い発言をしたり、相手の発言に対し、眉をひそめる、腕組みをする。パソコンに目を向けながら話を聞くといった態度をとる。このような小さなしぐさ、言動をマイクロメッセージ(小さなメッセージ)やマイクロインイクイティ(小さな不公平)といいます。

それ自体が直ちに大きな問題とはならなくても、小さなとげとなって相手に刺さり、心を傷つけたり違和感や疎外感を感じさせるのです。

私たちは、「無意識のバイアス」がキッカケとなり、無意識のうちに(知らず知らずのうちに)、相手を傷つけたり、相手を苦しめたりしていることがあります。そういった事に対処するためにも、誰もが知っておいたほうがよいと思われる概念として、「無意識のバイアス 」が注目をあびるようになりました。日本でも組織や個人に偏った視点・見方がないかを見直し、行動変容を生み出すことを目的に「アンコンシャス・バイアス研修」を導入する企業が増えています。

無意識バイアスは誰にでもある

無意識バイアスe-learningツール「ANGLE(アングル)」を提供する株式会社チェンジウェーブ(代表取締役社長:佐々木裕子)が、無意識バイアス測定テスト・IATを使用し、企業の非管理職4517名の無意識バイアスレベルを測定した結果があります。

※ラーニングツールANGLE 一般社員版受講者データ(2020年10月)

0.65以上が「男性=仕事」「女性=家庭」の結びつき、性別バイアスが強いとされているレベルです。わずかですが、男性より女性の方が性別バイアスが強い人が多いという結果が出ました。

アンコンシャス・バイアスは日常にあふれていて、誰にでもあるものです。ただ、あることそのものが悪いわけではありません。問題なのは、気づかないうちに、「決めつけ」たり、「押しつけ」たりしてしまうことなのです。

私たちは「無意識のバイアス」がいつ、どのように現れるかを知ることで、「評価や判断」にあたってその影響を最小限に抑えることが可能です。まずは自分のもつバイアスを知り、まわりにどのような影響を与えているかを自覚する。それが第一歩となります。

「無意識のバイアス」が生まれやすい状況

どのようなときに特にバイアスは生じやすいのでしょうか?バイアスが生まれやすい状況について、次の4つの要因があります。

  1. ステレオタイプとの不一致
  2. 少数派に対する固定観念
  3. 不十分な情報
  4. 認知資源の制約

(出典:Google社による研修資料 Unconscious Bias @ Workより)

まだ詳しく相手のことを知らず十分な情報がない場合に、限られた情報や短時間で判断する必要があったり、互いに向き合う努力が不十分であったりした場合に、「無意識のバイアス」で相手を判断してしまう可能性があるといわれています。無意識のバイアスは、無意識だからこそありふれていてとても厄介なのです。

誰かに指摘されたり、意識するきっかけがなければ、自分がバイアスを持っていることにも、そのバイアスで無意識に人やものごとを判断してしまっていることにも気づくことができません。

もし適切に対処しなければ、気づかぬうちに差別やハラスメントにつながったり、一人ひとりの心身の健康に大きな影響を与えてしまう場合もあるのです。

できることから始めよう!

無意識のバイアスは誰にでも起きるものです。バイアスは言語化されにくく、自分自身だけで気づくことは困難です。そのため、まず無意識のバイアスとは何かを「知った」上で、自身の日頃の行動に潜む無意識のバイアスに「気づく」ことが重要になります。

偏見の存在を認識する

脳科学者の池谷裕二氏が、いみじくもこんな名言をおっしゃっています。

「脳には『自分にはバイアスがない』というバイアスがある」

自分は偏見(バイアス)など持っていない、と思うこと自体が、立派な偏見なのです。ですから、自分では具体的にどんな「無意識のバイアス」なのかわからないけれども、外から見たら明らかに「偏見」と思われる「偏ったものの考え方」を持っているのだ、とまず認識することが第一歩です。

過度な一般化をしない

自分と違う価値観を持つ人に対する偏見に関して、もう1つ大切なのは、「過度な一般化をしない」ことです。よくありがちなことですが、若い人の「根性のない」発言や態度を2、3回目撃しただけで、「近頃の若い者は……」と拡大解釈し、「一般化」していないでしょうか。一度偏見を抱くと、無意識のうちに若者の根性なしの態度ばかりに目が行くようになり、「若者は根性がない」という印象が自分の中でどんどん正当化されていきます。心理学では、これは「確証バイアス」(自分の信念を確証する証拠を探し、そうでない証拠を無視する)と呼んでいます。確証バイアスによって、その偏見は自分にとって正真正銘の「事実」となり、まさに無意識の偏見として凝り固まってしまうのです。

「違う」ことを認める

同じ団体や組織に所属し、同じ釜の飯を食う仲間同士、同じ価値観を共有したい、共有できるのが一番、という気持ちは、多かれ少なかれ誰しも持っているのではないでしょうか。しかし、取り巻く環境の変化のスピードが加速し、入手できる情報量がものすごい勢いで増えていく中、ものの考え方や価値観の多様化は進む一方です。自分が大切にする価値観を曲げる必要はないのです。大切なのは、「自分と違う価値観を持つ人間が、世の中には存在する」と認識し、自分の価値観を相手に無理に押しつけないことです。

以上、エゴレジ研究所から日常に潜む「無意識のバイアス」についてご紹介しました。多様な価値観やライフスタイル、属性の人がかかわる場所では、「無意識のバイアス」は特に重要なテーマとなります。少数派(マイノリティ)の人たちは、自ら声を出しにくく、また大切に扱われていないというメッセージを受け取ることが多くあります。「無意識のバイアス」に気づくアンテナを立て、意識的に多様な人に向き合うことで、少数派(マイノリティ)の人たちも尊重され受容されている、と感じることができる状況が実現されるのではないでしょうか。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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