代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 |
夏になると、気になってしまうのがニオイ問題。最近ではスメルハラスメント(略してスメハラ)という言葉も出てくるほどです。ニオイが周囲に与える影響に加えて、身だしなみとして気をつけたいと思っている方も多いでしょう。年齢を重ねていくと、他人だけでなく自分のニオイにも敏感になり、ニオイケアに対する意識も高くなってきます。そこで今回は、ちょっと気になる「ストレス臭」についてのお話です。。
目次
「ストレス臭」とは?
性別や年齢に関係なく、面接・試験、プレゼン、スピーチ、初対面の対話など、心理的に心拍数が上がるような緊張・ストレス状態にあると、硫黄化合物系の特定のニオイを含んだ皮膚ガスが「ストレス臭」として発生することを資生堂がつきとめ、2018年10月に発表しました。
皮膚ガスとは、皮膚表面から放出し、その一部が体臭として認知されるもので、一酸化炭素や水素、メタンなどさまざまな気体が含まれています。皮膚ガスは体調、加齢、情動、食事などを反映して変化します。皮膚ガスの中にはアセトンなどほぼ無臭のガスもありますが、ノネナールや食べた物に由来するニオイのガスもあり、本人や周囲がそのニオイを感じることがあります。
つまり、「ストレス臭」とは、心理的に緊張した状況で全身から発生する特有の皮膚ガスに由来する体臭で、資生堂では、この皮膚ガスに含まれる特徴的なニオイ成分を「STチオジメタン」と命名しています。“緊張状態”とは、具体的には、リラックス時と比べ心拍数が上がり交感神経が優位になっていたり、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールが唾液中に増えていたりする状態です。
資生堂グローバルイノベーションセンターに所属する勝山雅子さん(薬学博士)によれば、「ストレス臭」は硫黄化合物系のニオイで、分子量が小さく軽いので、ふわっと浮いていき、ニオイがあまり残りません。服に残らず、周りに広がりやすい特徴があるそうです。 資生堂が「ストレス臭」を感じたことのある人に行った調査では、職場の自分の机周りで感じた人が全体の6割を超えるという結果もあり、職場での緊張やストレスがニオイの元になることが多いようです。
ストレス臭の強弱には個人差があり、「酸っぱい」「嫌な感じがする」といった印象が共通しているようです。ストレス臭は、特定の性別や年代だけに見られるものではなく、男女問わず幅広い年齢層から検出されています。
ストレス臭の心理的な影響
ストレス臭には、大きな心理的影響が2つあります。
1)周囲の人への不快感
「このニオイは何?」と人に疑問に思われるニオイを漂わせることで、他の人に不快感を与えてしまいます。
2)本人も周囲の人も「疲労」「混乱」が強まる
資生堂によれば、ストレス臭を嗅ぐ前後の心理変化として、ストレス臭を嗅いだ後は「疲労」「混乱」の指標が高まることが確認されています。
これは、ストレス臭と他の体臭の大きな違いといえます。ストレス臭を嗅ぐことで、精神面に悪影響が及ぶ可能性があるのです。
緊張してストレス臭が出た本人は、自分で自分の体臭(ストレス臭)を嗅ぐことで、ますます疲労や混乱が深まり緊張する……という悪循環になります。
さらに、この緊張やストレスが、他の人にも伝染してしまうのが、ストレス臭の大きな問題点です。「緊張は人に伝染する」「緊張している人を見ると自分まで緊張してくる」といわれることがありますが、その一因こそ、ストレス臭の可能性があります。
日常の様々な場面に「ストレス臭」
資生堂が行った意識調査に参加した、首都圏(東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県)在住の20代〜40代の男女 1200人(10歳刻みで男女各200人ずつ)で、ストレス臭を経験した424人に、におった場面を聞くと、「職場」(61.3%)が最も多く、次いで「電車やバスやタクシーのなか」(28.3%)、「社内会議室」(19.1%)、「研修やセミナー会場」(16.0%)などがあげられました。特別な場所や状況だけではなく、むしろ、日常の中に「ストレス臭」を感じる傾向があるようです。「ストレス臭」自覚率の高い30代男性は、職場で「ストレス臭」を感じた割合が74.2%と群を抜いて高くなっています。以下、面接会場(15.1%)、エレベータの中(13.9%)、自宅(12.7%)、駅(10.8%)、イベント会場(5.4%)、デパート・スーパー・コンビニなどの商店(5.0 %)、学校(5.0 %)となっています。
「ストレス臭」の元をケアするには
ストレス臭は緊張による心理的ストレスが原因で発生するニオイ。現代社会はストレスと切っても切れない状況ですが、そのストレスを上手にケアする事でストレス臭を軽減させることができるといえます。
資生堂が行った意識調査に参加した人にストレス解消のためにしていることを聞くと、
「しっかりと睡眠をとる」(54.1%)、
「好きなものを食べる」(47.3%)、
「趣味など好きなことに没頭する」(39.5%)などが上位にあげられ、男性よりも女性の方が取り組む割合が高めとなっています。
中でも、「買い物をする」は男性19.2%に対して女性45.7%、
「人と話をする」は男性18.3%に対して女性40.3%、
「お酒を飲む」は男性26.5%に対して女性19.5%など、ストレス発散のための方法に男女差がはっきりと分かれる傾向もみられます。
全体的にみると、女性の方が男性よりもストレスの発散に対して意識が高い傾向にあるようです。
ストレス臭の具体的な対策はまだ解明中ですが、有効と考えられる3つの対策をご紹介します。
◆ストレス源をできるだけ遠ざける
ストレスによって発生するのがストレス臭ですから、その根本的な原因を遠ざけるのが第一です。職場の配置換え、仕事内容の変更、家事育児の負担軽減……など、周囲にヘルプを出して、ストレスを感じている環境を変える勇気を持ちましょう。
とはいえ、「ストレス源を遠ざけたくても、すぐに遠ざけられないのが現実」という方も多いかもしれません。そんなときには、ストレス源のことを考えずに済む時間を少しでも増やしてください。リラックスできる時間を作り、ストレスを感じずに済む時間を長くしていきましょう。
◆ストレスを受けた後は皮膚のニオイをシャワーでリセット
ストレス臭が皮膚に残ったままにしておくと、精神的な混乱や疲労が深まってしまうのです。例えば、会社や家庭で嫌なことがあったとき、その出来事が終わった後でも、ずっと嫌な気持ちを引きずってしまうことはありませんか。ストレスを受けた後は、できるだけ早くシャワーを浴びて、ストレス臭をリセットしましょう。
「お風呂に入るとサッパリする」というのは、気のせいではなく、ストレス臭をリセットしたサッパリ感とも考えられるのです。
◆ストレスに強い心身づくり
ストレスとなる出来事に対面したときに、緊張したり動揺したりしない強い心身づくりに取り組むことが役立ちます。
強い心身づくりに役立つメソッドは、ヨガ、瞑想、座禅、マインドフルネスなど数々あります。自分自身で積極的にメンタルケアを取り入れることで、緊張にも強くなり、ストレス臭を抑えることができるはずです。
ストレスのない生活は理想ではあっても現実ではなかなか難しいものです。そこで、心理的緊張を事前におさえる方法あります。
- 自分にあったリラックス方法を見つけておく
- アロマやお香など好きな(落ち着く)香りを嗅ぐ
- 野菜や食物繊維を多くとるバランスの良い食事を心がける
- ボディシートや消臭効果のあるスプレーを使う
- ハンドマッサージなどでリフレッシュする
【参考】簡単ハンドマッサージ(資生堂)
以上、エゴレジ研究所から気になるニオイ「ストレス臭」についてのお話をご紹介しました。現代社会においてストレスは、頑張る人ほど避けられないことです。だから、「ストレス臭」の発生は体の自然な反応です。大切なのはストレスと上手に付き合っていくこと、そのためにニオイケアをすることで、自分らしくポジティブに過ごせるのではないでしょうか。自分にとって何がストレス源になっているのか、どうしたらストレスを緩和できるかを考えて実践していくことで、「ストレス臭」の軽減にも、生活の質の向上にも繋がります。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事
GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー
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