ほどほどのストレスでウェルビーイング

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

ストレスは、私たちの生活において一定の役割を果たしています。実は、ストレスは必ずしも悪者ではなく、適度なストレスには効果や効用があるのです。そこで今回は、ストレスをどのように捉えるかという視点で、ストレスとの上手なつき合い方についてのお話です。

ストレスをどう捉えるか?

少し前になりますが、日本でもベストセラーになった「スタンフォードの自分を変える教室」の著書ケリー・マクゴニカルさんは、「ストレスと友達になる方法」というテーマのTEDでスピーチされています。

その中で紹介された研究に興味深いものがあります。
8万人を対象に、
「昨年どのくらいストレスを感じたか」
「ストレスは健康に害になると信じているか?」 を聞き、8年間の追跡調査を実施し、死亡リスクを比較。

すると、調査の前年にひどいストレスを受けたと答えた人は、死亡リスクが43%増加。しかし、それは「ストレスは健康の害になる」と信じていた人たちだけに当てはまり、そう思わない人たちのリスクは、ストレスを受けなかった人たちと比べても変わらなかったという結果でした。
つまり、ストレス自体が健康の害になるのではなく、「ストレスを害だと思っていること」が害になるということです。
ケリー・マクゴニカルさんは、「ストレスに対する考えを変えれば、ストレスに対する体の反応を変えることができる」と話されています。
あなた自身は、ストレスをどのようなものと捉えていますか。

適度なストレスは健康にいい

日本大学医学部精神医学系・内山真主任教授が、NIKKEI STYLEの取材に答えています。

「ストレス」について、どう考えたらいいのだろうか?

――内山教授「私たちが『ストレス』と呼んでいるような心の負荷は、うまく乗り越えられた時にこのうえない達成感をもたらします。いわばストレスは『生きる幸せを感じさせてくれるもの』でもあるのです。そう考えると、『ストレスが全くない生活が理想的な心の健康状態』とは言えない気がしてきます。
心の健康とは、ストレスによる疲れと、そこからの回復を行ったり来たりする中で得られる、もっとダイナミックなものだと思います」

――内山教授「私も、困難に対して前向きに対処しようとつい無理をして、うまくいかず苦しい思いをすることがよくあります。確かに、適度なストレスは生きがいにつながりますが、ストレスが過剰だったりストレスにうまく対処できなかったりすると、とても大変。バランスが重要です」

――内山教授「ストレスで疲れることが続いても、私たちには回復する機能があります。『休養』です。私たちは1日の4分の1から3分の1は眠って過ごします。睡眠は休養のうちの『休』の部分として重要です。楽しみを積極的に得る、気分転換をするというのが休養のうちの『養』の部分。

――内山教授「自分で疲労に気付くことが大切。常に100%元気でいるのは、長い目で見ると危険です。心身が疲弊してしまいます。患者さんや知人など、社会で頑張ってきた人たちと話をしていると、『世の中には頑張り屋、優秀な人がたくさんいるけれども、最後は体が丈夫でなくちゃ』という声が目立ちます。つまり、『無理をして頑張り続けたために途中で体を壊してしまい、第一線から遠のいていく人が多かった』というのです。困難やストレスに常に全力で立ち向かい走り続けていくことは、安全弁がうまく働いていないとも考えられるかもしれません」

――内山教授「『疲労を感じる』ということは、心身を守る大切な『安全弁』なのだと思います。疲れると体を休めたくなるし、気持ちの面でも仕事を先延ばしにしたくなる。これが安全弁。疲労がなかったら、本当に体が壊れるまで気づきませんから」

✔ストレスは『生きる幸せを感じさせてくれるもの』
✔安全弁である疲労を感じて休養すれば、回復できる。
✔ストレスと休養による回復のバランスを保つ。
これを繰り返すことが、心の健康につながるということでしょう。

ストレスを感じることは「心の筋トレ」

『イライラ・不安・ストレスがおどろくほど軽くなる本』(明日香出版社)の著者で立正大学客員教授の内藤誼人先生は、ストレスについて次のようにアドバイスされています。 (以下、内藤先生)

ストレスから逃げ続けているだけでは、いつまで経っても耐性はつきません。ワクチン接種と一緒で、弱い形でのストレス経験をしておくと、その後のもっと強いストレスにも耐えられるようになります。
人生においては、いろいろと失敗しておいたほうが、失敗にも慣れてきて、そんなに気分がへこまなくなります。
ほどほどのストレスを経験しておくことは、筋肉を太くするのと同じようなことです。小さなストレスをいくつも乗り越えるうちに、大きなストレスに対しても蚊に刺されたくらいにしか感じなくなります。ですので、弱いストレスなら、どんどん経験することでむしろ自分のストレス耐性を高めたほうがいいのです。

ストレスとうまく付き合う

これらを踏まえて、ストレスとうまく付き合うためには4つのポイントが重要です。

1.ストレスを理解する
まずは、ストレスについて知ること、ストレスをどのように捉えるかも大切なポイント。

2.ストレスレベルを把握する
次に、どのくらいのストレス状態なのか、そのレベルを把握します。ストレスレベルの把握には、その状態を測るためのストレスチェックアセスメントや、次に紹介するストレスサインが一つの目安になります。

3.ストレスサインに気づく
ストレスサインとは、ストレスが過剰になったときに心や体、そして行動に現れる変化のことです。それは心身を守る大切な『安全弁』です。ストレスサインは人によって、現れ方もその種類もさまざまです。自分のストレスサイン気づき、その頻度や程度によって、ストレスレベルもわかるようになります。参考になるのが、次のような行動上の変化です。

攻撃的な行動にでる ・口答えや批判が多くなる
・人のせいにする
・ささいやことに腹をたてる
・歩くスピードや食べるスピードが早くなる など
逃避的な行動にでる ・遅刻や欠勤が増える
・口数が少なくなる
・トイレや休憩の回数が増える
・仕事の能率が下がる など
ライフスタイル ・コーヒー、タバコ、間食の量が増える
・身だしなみが乱れる
・テレビやインターネットを観る時間が長くなる など

4.ストレッサーを知る
何がストレスを引き上げる要因となるのかを知っておくことで、過剰なストレスに対して具体的に対応したり、さらには過剰なストレス状態を予防することができます。
ストレッサーには大きく分けて、次の4つがあります。

✔物理的ストレッサー:暑さ、寒さ、騒音、感情汚染、交通渋滞など
✔化学的ストレッサー:酸素の欠乏、栄養の量や質の過不足など
✔生物学的ストレッサー:ウィルスや病原菌の侵入など
✔社会・精神的ストレッサー:人間関係、経済状況、時間制限、ライフイベンツなど

それが好ましいか、好ましくないかに関わらず、いつもと違うこと(変化)が起きるときには、自分のストレスレベルやサインにいつも以上に注意を向けましょう。

そして、状態を把握できたら対処するべく自分に合った発散法を習慣化しておくことが大事です。ストレスを上手に発散できるように、できるだけたくさん幅広い種類の発散法を準備しておきましょう。

以上、エゴレジ研究所からストレスとの上手なつき合い方についてご紹介しました。ほどほどのストレスは、ウェルビーイングにとって重要です。過度なストレスは健康に悪影響を及ぼす可能性がありますが、適度なストレスは成長や適応力の向上に役立ちます。バランスを保ちながら、ストレスとうまく付き合い、心身の健康をサポートしましょう。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

 

 

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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