笑顔が幸せを呼び込む理由

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

素敵な笑顔の人は、幸せスキルが高いそうです。幸せスキルが高いというのは、「幸せを感じる感性が高く、小さな幸せを見つけられる」こと。純度の高い幸せは、心の穏やかさにつながり、優しい雰囲気となって自然と周りに伝わるものです。そこで今回は、笑顔と幸せについてのお話です。

感情はどのように生起するのか

◆ジェームズ・ランゲ説(情動の抹消起源説)

1880年代中ごろ、アメリカ合衆国の心理学者ウィリアム・ジェームズとデンマークの心理学者カール・ランゲはそれぞれ別々に、
人は「刺激を受けて情動が変化し、それに伴って身体的変化が起きる」のではなく、「刺激を受けて身体的変化が起き、それに伴って情動が変化する」のではないかという説を唱えました。この2人の説は合わせて「ジェームズ・ランゲ説」と呼ばれました。有名な「悲しいから泣く」のではなく「泣くから悲しい」という仮説です。

◆表情フィードバック仮説

ジェームズ・ランゲ説が唱えられて100年以上を経過しても、心理学の分野において科学的な実験によって検証する動きがあり、表情フィードバック仮説と呼ばれています。
これはトムキンスによって提唱された身体反応と感情に関する理論であり、顔の表情に関連する筋肉の反応を受けて、その後に感情が生起する—–ある感情を表す表情を作ると、ある程度はそういう気持ちになる、というものです。
1988年に行われた実験では「歯でペンをくわえて笑顔を作った被験者は、口をすぼませてペンをくわえた被験者よりもマンガを面白いと評価した」という結果が得られ、表情フィードバック仮説が支持されました。2018年にイスラエルの研究者によって行われた再現実験では、1988年の実験と同様の結果が再現されたそうです。

箸を歯でくわえて口角を上げ、作り笑いをするという実験でも、作り笑いをすることで、意欲や快感の感情を司る「ドーパミン」の分泌が活発になり、抗うつ効果が得られたとも報告されています。つまり、感情が伴っていなくても、笑顔をつくるだけで幸福感を得た時や、楽しいと感じた時と同じ反応が脳に起こることを意味しています。

◆As if(アズイフ)法則

同じように心理学者のリチャード・ワイズマンは、「アズイフの法則」という理論を提唱しています。アズイフ(as if)とは、「〜のように」という意味です。リチャード・ワイズマンは、あらゆる実験結果をもとに、「~のように行動すれば、本当に~になる」という説を唱えました。

「人はあたかもそれを体験したかのように行動しさえすれば、いかなる感情でも望み通りに作り出せるはずである」と。人間の心と身体は密接につながっています。行動することで自分が変わるというのが、 アズイフの法則です。

ほかにも、しかめっ面をすると気分がネガティブになったり、笑顔を作ると気分が上向いたりするということが、数多くの実験によって明らかにされてきました。表情だけでなく、体全体の姿勢や声も心に影響を与えます。つまり、表情を幸せそうにしたり、丸い背中をまっすぐにしたり、楽しそうに話したりといったように態度をポジティブにすると、それが幸福度アップにつながっていくのです。

◆感情労働にあてはまらない?!

ただし、感情に反する作り笑いや愛想笑いは、逆効果になってしまうという実験の結果も報告されています。

✓仕事で一日中笑顔を浮かべなければならないサービス従業員は、仕事後の飲酒量が増えるリスクが高い
✓愛想笑いをしなくてはいけないバス運転手は、本来の感情を長時間抑えることになり、不眠症や、抑うつ的な症状や家族との諍いなどが増えた など

またミシガン州立大学の研究チームによる実験では、一日中作り笑いで接客した従業員は気分が落ち込み、集中力が落ちて、生産性に影響を与えることを示唆されました。

一方、南国での休暇や子供の発表会など、前向きなことを考えた結果笑顔になった従業員は気分が上がり、作り笑いをしたグループより集中力の低下は見られなかったとのこと。

笑顔の効果がプラスとなるかマイナスとなるかは、その笑顔の理由が大きく関わると考えられる研究結果もあります。少なくても無理矢理作った笑顔では幸せになれないケースもあることがわかります。つまり調査対象のバス運転手は、仕事で仕方なく笑顔を作っている側面があります。根本に何かをしたいという心からの願いがなければ、先の仮説や法則は成り立たないと考えることができます。笑顔でいなければならないから笑顔を作るのではなく、目の前の人を楽しい気分にしてあげたいという思いで笑うことが肝要で、それがポジティブな感情を高めると言えるでしょう。

イギリスのラジオの笑顔実験

ラジオというメディアを使って「幸福度」のアンケートを行うという大々的な実験があります。
ラジオ番組のDJは、数千人のリスナーに対して
「自分の現在の幸福度を1から7までの、7段階で表してみてください」と放送で発信しました。その結果、自分の幸福度を5~7までの「概ね幸せだと思う」という人の割合は45%ほどだったそうです。

その後、リスナーには内緒で、ラジオCMやDJの話の内容に意図的に「感謝」という言葉を織り交ぜる放送を行いました。
たとえば、CMの中に「笑顔で感謝の気持ちをもちましょう!」というメッセージを入れたり、「今日も元気な声でありがとう!って言いましょう」というメッセージを放送中に織り交ぜたわけです。
そして数日後、リスナーには実験の意図を隠したまま、前回同様「自分の現在の幸福度を1から7までの、7段階で表してみてください」とアンケートを取りました。その結果、「自分はおおむね幸せだ」という人は7%増えて52%になったのです。

この実験では、笑顔がそのまま「幸せ」という感情に結びつくことが判明したと言えます。

笑わない生活から抜け出そう

一日の中で、声を出して「笑う」こともなければ「ほほ笑む」ことすらしてない人は、結構多いようです。「笑わない生活」をしていると、顔自体が笑わない状態で固まってしまうのです。たるみを引き締めるエクササイズは多種ありますが、表情筋全てを一度に使う笑顔が一番効率よく表情筋を鍛えられます。きれいな笑顔を練習すれば、いつの間にかたるみやしわも改善しているでしょう。
実は笑顔には、ストレスホルモンを減少させる働きもあるのです。ストレス解消の方法はたくさんありますが、今すぐ簡単に始められるのが笑顔です。
さらに笑顔でいる人といつも不機嫌な人では、寿命が平均7年違うといいます。笑うことによって脳が生成する情報伝達物質がプラス作用する物質へと変わり、ナチュラルキラー細胞の表面に付着して活性化させるためです。

笑顔は言葉以上に、コミュニケーションを円滑にする要です。微笑みや満面の笑みといった笑顔は、ポジティブな感情を穏やかに高めます。その変化は小さなものですが、周囲の人との関係をプラスの方向に導き、良い循環が生まれ、その結果としてネガティブ感情の減少とポジティブ感情の増大という大きな恩恵がもたらされます。

以上、エゴレジ研究所から笑顔と幸せについてご紹介しました。一人の時もなるべく微笑を絶やさず、誰かが話しかけてきたら笑顔で対応し、いかにも幸せそうな表情で振る舞いましょう。幸福の上昇スパイラルが生まれて、人との関係をより良好に導き、困難も乗り越えて一層成長していけるようになるはずです。何か楽しいことを想像するなどして、とにかく笑みを浮かべてみることです。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

 

 

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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