大人の脳だって成長する!

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

近年の研究で、脳の加齢による変化を促進するマイナス要因だけでなく、老化を抑制するプラス要因も存在することが明らかになっています。さらに、(1)脳の一部では年齢を重ねても神経細胞が新たにつくられること、そして(2)脳には外部からの刺激によって変化する力があること、という脳に関する2つの新事実が分かってきました。そこで今回は、大人の脳についてのお話です。

脳はいつまでも成長し続ける

『生命宇宙への旅』(山根一真;1984年、主婦の友社刊)には59年、アメリカの医学者、J・W・スティルが公開した『人の可能性』の図が紹介されています。そのひとつ、「精神的能力のピーク」のグラフでは、通常は60代半ばから「老化退行」が始まるのが、80代まで「精神的能力」が上昇を続ける人がいることを示しています。「脳に知的な新鮮な刺激を与え続けていれば、脳は老いてなお成長するのだろう」と山根氏は語っています。

脳の発達や加齢のメカニズムを明らかにする研究に従事される脳医学者の瀧靖之教授(東北大学加齢医学研究所)は、「生涯健康脳になるコツを教えます!」(廣済堂出版)、「脳はあきらめない! 生涯健康脳で生きる 48の習慣」 (幻冬舎新書)、「脳を本気」にさせる究極の勉強法(文響社)など多くの著書の中で脳の健康についてわかりやすく解説されています。

◆「海馬」はいつも新しい細胞を生み出す

脳のあらゆる細胞は、年齢に応じて右肩下がりで減っていきます。しかし、いつも新しい細胞を生み出している場所があります。それが「海馬」です。海馬は首の裏側あたりの、ちょっと奥まったところにある小指ほどの大きさの器官です。私たちの記憶を担当しています。

従来、脳細胞は、生まれたときをピークに減り続けていくと考えられていたのですが、最新の脳医学研究から、 「海馬だけは、脳細胞を新しく生み出している」ということがわかりました。また、脳には外部からの刺激によって変化する力、すなわち「可塑(かそ)性」が備わっていることも分かってきました。つまり、脳の機能は何歳になっても成長する、大人であっても、脳(海馬)の細胞は日々、新生されているのです。ですから私たち大人に求められる脳との「付き合い方」は、今ある脳の老化を防ぎ、成長を促すことだとわかります。

◆「勉強好き」な人の脳は老化しにくい

勉強好きな人の脳は、なかなか老けることがありません。約400人を対象に8年間にわたって行った私たちの調査では、「知的好奇心」の高い人ほど、認知機能を担当する「側頭 頭頂部」の萎縮が少ないことがわかっています。「知的好奇心」とは、知りたい、学びたい、達成したいといった気持ちのことです。勉強、仕事、ボランティア、趣味などにイキイキと取り組んでいる人ほど、脳は若く保たれていたのです。「脳」への栄養は、知的好奇心なのです。つまり、一言で言えば「人間らしくイキイキと生きるための能力」です。

脳の成長サイクルを促す鍵

瀧教授は、以下のように解説されています。

◆大人は子供より勉強を楽しめる

子供の頃は、勉強も習い事も「やらされ感」の強いものだったはず。知識の内容も、その背景を考えたりせず、丸暗記的な学び方が多かったはずです。実際、子供の脳はそうした機械的な記憶力に長けていると言われています。

大人はその逆。「丸暗記力」は子供の頃より落ちますが、「連合記憶」=関連する他の知識に紐づけて覚えるのが上手になると考えられるのです。

ですから機械的に覚えるのではなく、ストーリー化させたり、馴染みのあるイメージにつなげたりと、関連づけを意識するのがコツと言えます。

大人が連合記憶に長けているのは、子供より人生経験が豊富だからです。これは、大人の何よりの強みです。学ぶ内容を「味わう」ことができます。

歴史上の事件の重大性、英語の長文のメッセージ、音楽の旋律の響き。それらの意味を感じ取る力があるぶん、学ぶことが楽しいものになり得るのです。

この「学ぶ楽しさ」を感じること、すなわち知的好奇心を持つことが、脳を成長させるための最大の秘訣です。

記憶を司る「海馬」の隣には、感情を司る「扁桃体」があり、両者は密に連携すると言われています。楽しい感情を味わいながら経験したことは、記憶に定着しやすいと思われるのです。

楽しみながら学ぶことは、そう難しくありません。会社に言われてしぶしぶ英語を勉強する場合でさえ「話せるようになったらこんなことができる」とイメージすれば楽しくなりますし、「昨日よりできていること」を確認するだけでもポジティブになれるでしょう。

その要領で、少しずつ知識を蓄積すると、徐々に記憶力自体も上がります。その喜びはさらに知的好奇心を刺激し、別分野への興味の広がりをも促進します。この好循環こそ、脳の成長サイクルなのです。

中には「休日も仕事のことで頭がいっぱいで、興味関心のあることに注意を向ける余裕がない」方もいるでしょう。しかし、過度なプレッシャーは、ストレスとなって海馬で行なわれる「神経新生」=神経細胞が新たに生まれることを阻害する可能性が高い。学習能力が落ちるのみならず、認知症のリスク要因にもなり得るのです。

といっても、オンとオフの切り替えがうまくできない方も多いはず。そこでお勧めなのが、「脳のアイドリング」です。脳の9割を興味関心のあることに向け、1割だけ仕事のことを考えます。

このとき、仕事の内容を細分化してTODOリストに落とし込むことが重要です。仕事に対する漠然とした不安が、頭の中で増大してストレスになっていくからです。ストレス要因とその対処法をハッキリさせれば、自ずと興味関心のあることに集中できるでしょう。

◆好奇心を育てる趣味

夢中になれる趣味は脳にとって最強の味方だ、といっても没頭できる趣味がない……。そんな方は、昔楽しんでいたことをもう一度やってみましょう。スポーツでも楽器でも、絵を描くことでも構いません。楽しい記憶がよみがえり、脳が活性化します。

「昔も楽しみを持っていなかった」という方は、友人や配偶者といった親しい人の趣味を一緒にやってみるのがお勧め。登山などスキルの要る趣味も、指導者がいれば安心ですし、経験を共有できる楽しさも格別です。

「そんな親しい人も居ない」という方は……旅行か、料理、園芸などソロ活動をしてみてはどうでしょう。知らない街の散策は好奇心を刺激しますし、「今度はあの街に行ってみよう」と、目標を連鎖的につなげていくこともできます。料理や園芸も、創造性や段取り力を鍛えられるうえに、最後に達成感を味わえる最高の趣味です。

このように、脳を鍛える方法は勉強だけに限りません。何かを学ぶこと以前に楽しみ上手であること──そうした「ハッピーな生き方」こそが、脳をいつまでも成長させるのです。

以上、エゴレジ研究所から大人の脳についてご紹介しました。脳の特性を理解して、エビデンスに基づく生活習慣を実践していけば、生涯にわたって健康な脳を維持することは可能です。脳の加齢による変化は避けられなくても、日頃の心がけや行動次第で、老化による変化のスピードを緩めたり、いくつになっても新たな能力を獲得したりすることはできるのです。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

 

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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