《健康》アサーティブになろう!

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

あなたの周囲の人との関係で、こんなことが起きていませんか?

「そんなつもりじゃなかったのに、誤解された……」
「態度を変えてほしいけど、どうせ言ってもムリだし」
「本当は気が進まない。でも断わるのもなんだか悪い」
「あんなこと言うなんて、もう許せない!」
「この気持ち、わかってほしい。でもうまく言える自信がない……」

自分の気持ちを率直に言葉にしたり、自分の考えをきちんと伝えることは難しい、しんどい、と感じることはありませんか。また言いすぎてしまった、もっとはっきりものが言えたらいいのに、上手に断れるようになりたい、攻撃的な言い方をやめたい、自信をもって人と接することができるようになりたい… …など。そういう人の道しるべとなってくれるのが「アサーティブ・コミュニケーション」です。 今回は、ストレスをためないコミュニケーション・スキルであるアサーティブ・コミュニケーションのお話です。

🔴アサーティブ・コミュニケーションとは?

アサーティブ・コミュニケーションが表すもの /多くの社会学領域の言葉と同様に、アサーティブ・コミュニケーションという言葉も心理学における認知行動療法からきています。「経営者」対「監査人」となる監査シーンにおいて使われる「アサーション(assertion)=主張」などとは意味が異なり、「自他を尊重した自己主張手法」と言われ、コミュニケーションをより円滑にするスキルの1つと考えられています。

アサーティブ・コミュニケーションの成り立ち /「アサーティブネス」という考えは70年ほど前のアメリカで生みだされ、人種やジェンダーの差別是正を求める活動等において「いかに自己主張をするか」を探る中で発達してきたと言われています。日本においては認知行動療法のトレーニングの1つとして紹介されました。「アサーション」という言葉の日本語の直訳は「主張」や「断言」ですが、「アサーティブネス」や「アサーティブ・コミュニケーション」に該当する日本語がなく、多くの場合そのままカタカナで用いられています。

アサーティブであることは、自分の意見を押し通すことではありません。自分の気持ちや意見を、相手の気持ちも尊重しながら、誠実に、率直に、そして対等に表現することを意味します。

🔴3つのスタイル

アサーティブ・コミュニケーションに関する主な研究を見ると、コミュニケーションスタイルを3つに分類しています。アサーティブ・コミュニケーションと2種類のノン・アサーティブ・コミュニケーション(受身的ノン・アサーティブ・コミュニケーション/攻撃的ノン・アサーティブ・コミュニケーション)です。

出典:Gerraard B,Boniface W,Love B:Interpersonal Skills for Health Professionals,Reston Publishing Co,1980

コミュニケーションの取り方が難しいと感じている人は多いようです。自分の思いを正直に伝えたことでトラブルが発生したりすると、もう言うまいと思ったりします(=非主張的自己表現)。そのような非主張的な態度で自分の気持ちを抑圧することが続くとストレスがたまり、ついには、「堪忍袋の緒が切れ」、感情を爆発させてしまい、かえって気まずくなってしまうことがあります。反対に自分の気持ちばかり主張している人は、自分は楽ですが、まわりの人はきつい思いをしていて、人間関係がぎくしゃくしてきます(=攻撃的自己表現)。

アサーティブ・コミュニケーション
意見が食い違う時は、自分の意見だけを100%通そうと思わずに、相手の要求も取り入れ50%くらい自分の主張を受け入れてもらえばいいと思っていると、相手が譲歩してくれたことに感謝の気持ちを持つことができます。そして自分も相手も大切にされているという思いになり、たとえ意見が一致しなくても、人間関係まで壊れることはなくなるでしょう。そのためには冷静に状況を分析する力も必要になります。

アサーションは、家庭の中でも生かしていきたいスキルです。小さい頃からの親子関係の中で、アサーティブなコミュニケーションの取り方を自然に身につけていれば学校などの集団生活の中でも人間関係を楽しむことができるでしょう。

また、言いづらいことは、「私は〜と感じます」とか「私には〜と思われますが・・」と私メッセージで伝えることで、相手を傷つけずに自分の思いや考えを伝えることができるという方法があります。

出典:『アサーション・トレーニング―さわやかな〈自己表現〉のために』平木典子著 金子書房

✔非主張的(受身的)なノン・アサーティブ・コミュニケーション
受身的なノン・アサーティブ・コミュニケーションとは、自分の意見を伝える場面でも自己主張せず、相手側に不備があったり、相手からの情けがあったときだけうまく自分の主張が通るようなスタイルです。一見相手を思いやっているように見えますが、後になって不満を言っていたり、そもそも意図が伝わっていないなど、結果的に自分にも相手にも不利益をもたらすことになることが多々あります。そしてこのスタイルの人の多くが「自分がしている気遣いは相手も返してくれて当たり前」と思い込んでいて、相手が自分と同等の気遣いを返してくれないと不満に思います。
当然その相手方にはなぜその人が不機嫌になっているのかが伝わらないため、お互いに大きなストレスを生む関係になりがちです。

✔攻撃的なノン・アサーティブ・コミュニケーション
攻撃的なノン・アサーティブ・コミュニケーションは、自分の意見は主張するものの、相手の気持ちや意見を尊重しないために自己中心的に見え、結果的に自分の主張も受け取ってもらえないようなコミュニケーションです。単に「アグレッシブ=攻撃的」と表現されることもあります。相手はその場で黙り込むことが多いため、本人は自分の意見が通って勝利したように思うかもしれませんが、「今後関わりたくない人」と思われて避けられるようになります。
このようなコミュニケーションスタイルが多い人の根底には「自己否定的な感情」があるとも言われます。いわゆる「手負いのケモノ」状態で、自分の弱点を隠そうとして攻撃的な反応をしていると考えられています。

🔴あなたのアサーティブ度は?

出典:平木典子『改訂版アサーション・トレーニング』(株)日本・精神技術研究所

アサーション・トレーニングの日本の第一人者である平木典子先生考案の自分の考え方を知るチェックシートです。回答結果を周囲の人と比べてみると、「自分の考え方≠他の人の考え方」であることが客観的に理解することができると思います。

エゴレジがある人は、アサーティブであることが研究で示されています。

🔴一番必要なのは「自分を大切にすること」

自分の意見をうまく主張する方法として昔から数々のスキルが形にされてきましたが、なかでもこのアサーティブ・コミュニケーションの特徴は「自分の意見を主張するために、自分と相手を大切すること」を伝えている点です。

『自分の意見を主張するために相手の意見を大切にすること』 ここに大きな逆説があるのにお気づきでしょうか。自分の意見を主張するという目的で、相手の意見を大切にすることはできるのでしょうか。アサーティブ・コミュニケーションのトレーニングにおいてはこの逆説に対して、自分自身を大切にすることの大切さを説いています。『相手を大切にしようと思ったら、自分をまず大切にしなければならない』 これの逆説もまた同じです。

✔アサーティブ・コミュニケーション4つの柱
アサーティブなコミュニケーションをとるための心構えとして、大切な4つの柱があります。

それは自分に対しても相手に対しても”誠実“であること、気持ちや要求を伝える時には、相手に”率直“に向き合うこと、相手と向き合う時には、自分も相手も尊重した”対等“な態度をとること、そして、言ったことも、言わずに済ませてしまったことも、すべて”自己責任“として自分で引き受けることです。

いかがでしょう?アサーションとは単に自己主張の方法ではありません。それを理解して実践していくことで、あなたが、人との関係性をどのように捉えているのかを知ることができるでしょう。そして、そこから、よりよい「人との関わり方」「自分との関わり方」を学びます。あなたがエゴレジさんなら、自分のコミュニケーションのタイプ(傾向)を知り、アサーティブな関わり方を実現していきましょう。

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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