ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。
「ありがとう」という感謝の気持ちは、みんなが小さな頃から知っている感情の1つ。その「ありがとう」には私たちを健康に導いてくれる大いなる力があります。
新型コロナウイルスが流行する中、最前線にいる医療従事者らに感謝と敬意を示し、拍手を送る「クラップ・フォー・ケアラーズ」という取り組みやSNSで感謝の気持ちを伝える投稿が、ヨーロッパやアメリカをはじめ日本でも行われています。日々の暮らし中でストレスを多く抱えがちな現代人は、”ありがとう”よりも”怒り”を感じたり、”不安”を感じたりすることのほうが多いのではないかと思います。また、あたりまえのように物や情報が溢れた状況下では、知らず知らずのうちに「感謝する心」に鈍感になってしまっているのではないでしょうか。今回は日常の中にある「感謝する気持ち」について改めて見つめ直してみたいと思います。
🔴『感謝と健康』
感謝をすることは、ただ健全な感情やストレスの管理だけでなく、肉体的にも良い影響があるのです。多くの研究が、感謝を経験し表現することがその人の満足度を高め、活力、希望、そして楽観主義にも影響することを明らかにしました。さらに、感謝はうつ病、不安、妬み、そして仕事に関するストレスなどを軽減させる働きも持っています。
2017年4月に発表された感謝の研究では、感謝を経験し表現する人は肉体的な病気が少なく、睡眠の質も良いと報告しています。また、感謝の効果はすぐに現れることが明らかになった一方、長期的な個人の幸せや良い関係性にも感謝が影響しているという意見もあります。
アメリカ国立衛生研究所の2009年の研究では、感謝を感じる時や利他的な意図を感じる時は視床下部が活性化することが分かりました。視床下部は体の機能を司る脳の一部で食欲や睡眠、体温、代謝、そして成長の機能などを含みます。この研究では「感謝の気持ちがない」とその視床下部の機能が上手く働かないということも発表しています。さらに、感謝には良い意味での中毒性もあるので、優しさや感謝の思いは大量のドーパミンの放出に繋がり、報酬系(動物の適応能力向上を目的として進化したメカニズム)を刺激するのです。
🔴感謝は痛みを緩和する
2012年に発表された「Personality and Individual Differences」(パーソナリティと個人差)の研究では、感謝する人間は痛みの感覚が弱く、他の人よりも健康的に感じるという報告がありました。
ドーパミンは神経伝達物質で痛みのプロセスを担います。感謝はこのドーパミンの放出を促すので、これが肉体の痛みを軽減させます。また、一般の調査によると、感謝の気持ちは、健康を保つことや運動することにより興味を持つ傾向があります。実際に、感謝を頻繁にする人は健康診断の回数も多く、このような習慣や意識は長生きに繋がると言われています。そして、感謝は、血圧を下げたり、免疫システムを改善する力も持っています。さらに、善玉コレステロールのレベルを高め、悪玉コレステロールを減らしてくれます。
感謝と腎臓の機能のチェックに用いられるクレアチニンの値の間には、腎臓の血流から老廃物をろ過する能力を示す繋がりがあると言われています。また、感謝は心臓の炎症や心臓病の原因であるC反応性蛋白のレベルも低下させると言われています。
🔴感謝と睡眠
感謝が感情と肉体の両方の幸せに作用する理由の一つとして、睡眠の質の向上が挙げられます。そして、多くの感謝に関する研究も同じような結論を導きました。感謝は睡眠の質を高め、眠りにつくまでの時間を短くして実際の睡眠時間を長くしてくれます。睡眠は感謝の気持ちで活性化する視床下部が制御している重要な側面の一つです。免疫システムはもちろんのこと、不安やうつ病、痛み、そしてストレスなど多くの身体機能に関連しています。ここでの大きなカギは、私達が眠りにつく時に何が心の中にあるかということです。もし心配ごとがあったり、不安を感じていたら、体のストレスレベルは高くなり、あなたを目覚めさせて睡眠の質が低下します。逆に、もし感謝するようなことを考えていると、あなた自身をリラックスさせて早く眠りにつけるよう促してくれるのです。
🔴感謝とストレス発散
良い睡眠は良い落ち着きを意味しますが、それはストレスを軽減するので、精神的な面だけでなく、心臓や神経系にも効果があります。2007年の高血圧と感謝に関する研究の実験では、対象者の呼吸を1週間に1回計測しました。すると、感謝は収縮期血圧を劇的に下げるという結果が出たのです。また、この研究では「感謝の日記」を付けている人は血圧が10%下がるということも分かりました。別の研究では感謝はストレスホルモンであるコルチゾールの低下にも作用し、健康のステータスでストレスの診断を助ける心拍数の変化にも大きく関係があると発表されたのです。そして、トラウマやストレスの多い出来事への抵抗力にも感謝は作用します。感謝の多い人はトラウマを克服しやすくなるのです。
🔴感謝と不安、うつ
中国の研究者が2012年に行った研究では、感謝は睡眠に多大な影響を与え、不安とうつ病の人に非常にポジティブな効果があることが分かりました。この研究では、睡眠の質と量はうつ病を低下させることに関連せず、感謝の方がうつ病の症状の軽減に関係しているという発見をしました。これは、うつ病の症状を和らげるには感謝をすることが良いということを示すものです。
一方、不安の軽減と睡眠は関連しています。これは健康的な睡眠が不安を和らげるという結論を導き、間接的ではありますが、感謝は良い睡眠に影響するので最終的に感謝は不安の軽減に良いと言われています。
感謝は私達を肉体的にも精神的にも強くしてくれます。そして、健康的で楽観的な考えとエネルギーを私達に与えてくれるのです。ある研究では、感謝を繰り返す人間はエネルギーが高く、落ち着きがある傾向があると発表しました。このような人はより幸せで健康的なのです。
不自由な生活について、みんなこの試練を乗り越えて行かねばなりません。エゴレジ力を発揮するときです。もしあなたが今、毎日にイライラしていたり、ネガティブな感情を抱えているとしたら、この「感謝の気持ち」を取り戻すことであなたの毎日が変化するかもしれません。「ありがとう」の感謝の気持ちにネガティブなものは一切ありません。まずは、懸命に働いてくれている人たちに感謝の気持ちを届けてみませんか?
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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。
小野寺敦子
エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。
畑 潮
エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー
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