《健康》好奇心いろいろ(2)

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

エゴ・レジリエンス(Ego-Resilience:略称エゴレジ)は、日々のストレスに直面してメゲたとき、自我egoを調整しバランスをとって元の元気な自分、少しでも気分のいい感じの自分に戻ろうとする力です。誰もが持っている力ですが、これを高めることで「心のしなやかさ」が身につき、ストレスにうまく対応できるようになります。そのエゴレジ力のキーワードの一つが「好奇心」。

今回も前回と同様、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビューの論文から「5つの好奇心の要素」のお話の続きです。

🔴好奇心の5つの要素と4つの人物タイプ

前回ご紹介したように、この研究論文では、次の「5つの要素」を抽出しています。

類型 説明
①心躍る探求
Joyous Exploration
素晴らしい事物に驚嘆し魅了された、心地よい 状態
②欠落感
Deprivation Sensitivity
足りない知識があり、その知識を身につければ安心
③ストレス耐性
Stress Tolerance
新奇なものへの不安を受け入れ、活かそうとする意思
④周りへの関心
Social Curiosity
話す、聞く、観察を通して他者の思考や行動を 知ろうとする
⑤高揚感の追求
Thrill Seeking
強烈な体験のためなら物理的、社会的、経済的 リスクを厭わない姿勢

①の心躍る探求をしている人は、生きる喜びを感じているように見えます。②の欠落感の好奇心を抱いた人は、問題を解決しようと猛然と努力します。③のストレス耐性が低い人は、情報不足に気づき、なにかに驚嘆し、他者に関心を寄せるかもしれないが、一歩踏み込んで探求を進めようとはしないようです。④の周りへの関心の高い人は、相手の情報を集めるために詮索、立ち聞き、噂話といった手段をとることもあるようです。⑤の高揚感の追求の高い人は、未知の何かに直面するする不安は、抑えるどころか掻き立てるべきものであるようです。

研究チームは、3000人を対象にこの5つの要素を用いたクラスター分析を行っています。その結果、4つの人物タイプを抽出しました。下図に詳しく示されています。

論文では、タイプごとにパーソナリティー因子、価値観、学歴や収入、ソーシャルメディアの使い方まで特徴を分析し、人物像を描くこともしていますが、中から少しだけ説明を抜粋してみます。

. Fascinated(わくわくタイプ)
心躍る探求、ストレス耐性、高揚感の追求の3要素が他のクラスターより高く、逆に欠落感が最も低いという特徴があります。人物像としては、興味の幅が広く交友関係も活発、全般に高学歴で高収入。快楽、社会正義、ロマンスに価値を見出しており、あまりストレスを感じることはない、というイメージです。人生を謳歌しているタイプといえます。

. Problem Solvers(問題解決タイプ)
欠落感とストレス耐性が高く、周りへの関心が低いという特徴があります。クロスワードパズルに熱中している人、というイメージ。日本ですと、クロスワードパズルよりも数独のほうがイメージがわくかもしれませんね。友達とおしゃべりするよりも一人で課題を解いたり情報を探したい、何よりも周りに干渉されないことに価値をおくような人物像です。勤勉とも言えます。わくわくタイプが幅広い分野に興味を持つのとは対照的に、問題解決タイプは特定の領域に集中していく傾向があります。

. Empathizers(共感タイプ)
周りへの関心が高く、ストレス耐性と高揚感の追求が低め、という特徴を持つクラスターです。神経質でストレスを感じやすいと自己評価をし、他者が考えていることや行っていることに興味があります。きちんとしていると周りに思われたいという度合いが他のクラスターに比べて強く、周りからの評価を高めることに価値をおきます。社会正義や環境問題には、わくわくタイプや問題解決タイプほど価値を見出していません。実は受け身です。このクラスターは女性が多いそうです。

. Avoiders(無関心タイプ)
他のクラスターと比べて、多くの要素が低いという特徴があります。特にストレス耐性と高揚感の追求が低い一方で、欠落感が比較的高い。つまり、未知がもたらす緊張感に耐えられないのに、何かを常に探し求めている、という葛藤を抱えているのです。それが、さまざまな社会心理学上の課題につながっている、と論文では分析しています。例えばこのクラスターは、学歴、収入とも低く、約半分がフルタイムの職に就いていないと回答しています。外向性や真面目さに欠けるという自己評価で、分からないことは避ける傾向も見られます。

4つのタイプの人数分布は次の通りとなりました。

どうやら、比較的均等に分布しているようです。

🔴好奇心指数 CQ

この論文と同じく『Harvard Business Review』2014に「好奇心は知能と同じくらい重要だ」というエッセイが掲載され、話題を呼びました。ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のビジネス心理学教授トマス・チャモロ=プレミュージック博士の寄稿によるものです。教授によると、CQCuriosity Quotient(好奇心指数)」の高い人は、ハングリー精神をもち、より探求欲があり、新しい経験に対してオープンである。そして、目新しいものにわくわくするが、決まったルーチン作業には飽きやすい。反体制であるが、独創的なアイディアをたくさん生み出す。複雑性の高まる時代を生き抜くうえで、CQは、IQ=Intelligence Quotient(知能指数)やEQ=Emotional Intelligence Quotient(こころの知能指数)と同じくらい重要だと説かれています。CQの高い人は、回答がすぐに与えられない曖昧な状態にも耐えられる、そして、フォーマルな教育の場以外でも、知的投資を惜しまず、常に知識を得ようとする。CQは複雑な問題に対してシンプルな解決法を導き出す究極のツールだとされています。

エゴレジのキーワードの一つ「好奇心のいろいろ」をご紹介しました。IT革命によって劇的な変化がもたらされている新しい時代において、今、ビジネス、教育、心理学と様々な分野において、「好奇心」が注目を浴び始めています。技術の急速な進歩と生み出される情報の多さに起因する複雑性の時代に対処できる人材の重要な能力なのだと言います。あなたの好奇心はどのタイプでしょう?

 

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次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

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