《健康》エゴレジと「R.A.I.N.」メソッド

ストレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりするものです。その理由もメカニズムもさまざまです。でも、誰もが持っている力「エゴレジ力」を高めることで、それぞれの状況に応じて自我のバランスをとる力を強化し、メゲたり凹んだりしても、すぐに立ち直る力を養うことが可能なのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、お手伝いします。

今回は、ハーバードビジネスレビューの2019年5月号に、セルフ・コンパッションと合わせて紹介されている「RAIN」メソッドのお話です。

🔴「RAIN」メソッド

日常生活の中で、ストレスに苦しめられて動きがとれなくなる瞬間は、誰にでもあります。対処法を誤ってしまうと、状況をますます悪化させてしまうことになります。以前ご紹介したマインドフルネスな状態をつくり出し、物事に取り組むための集中力を回復させる方法のひとつが、「RAIN」メソッドです。

 

心の中に起きているものを動かす第一歩は、自分の体に何が起きているかを認識することです。たとえば、呼吸が荒くなる、運動もしていないのに鼓動を感じる、いつになく汗をかく、口の中が乾く、体が固まる・・・などのストレス反応があったら、こうした症状を無視せずに、それに注意を向けることです。シンプルですが急にストレスに襲われたときに効果的な方法です。

ストレス要因の受け取り方を、脅威から対処できる問題に変え、冷静になってその問題に立ち向かう、心の中にある力を活性化させてくれます。

RAINメソッドは、Michelle McDonaldが開発したもので、4つのキーワードの頭文字を並べたものです。以下の「RAIN」を念頭に置いておくことで、現在自分が抱えている問題にまつわるあらゆる感情に邪魔されずに、問題そのものに意識を集中させられるようになるという方法です。

🔴R=Recognize(認識する)

自分の体と心に何が起きているかに意識的に気づくこと。例えば、あなたのパートナーや子供、上司や同僚などが発する声のトーンに対して起こる状況です。「口の中がカラカラで胃に穴が空きそうだ」「頭が変になってしまった気がする」などです。こうした感情から生じる反応に身をゆだねるのではなく、1歩下がった視点から自分の様子を観察しましょう。

ただし、細かな事情にまで入り込むのではなく、現在の自分の状況に名前を付けるにとどめておきます。例えば、「イライラ」や「不当な扱いを受けたと思う気持ち」、「身体が火照っている」、「痛い」、「泣きたい」などです。

🔴A=Accept(受け入れる)

自分に起きていることを認め、受け入れる。不愉快な感情であっても、自分が味わっている感情をありのままに認めましょう。喜んで受け入れるわけではないけれども、抵抗することは諦めます。逆説的ですが、起きているストレス反応を抑制する最速の方法です。

そして、自分を批判するのではなく、自分を思いやる気持ちを持ってください。自分を責めたり、つらく当たったり、困難な状況をさらにこじれさせてはいけません。

🔴I=Investitgate(詳細に調べる)

どんな感情や考えが存在するのか、自分はどんなストーリーを語っているのか、自分自身に問いかけてみる。自分の感じていることにあるほかの側面にも目を向けてみましょう。例えば、「怒り」という脆い鎧(防御)の下に隠れた、かすかな「痛み」という感覚などです。この探求は、自分の過去や性格を手がかりとして行ってもかまいません。ただし、自分の精神分析をするのではなく、実際に感じているものに寄り添ってください。

そして、その中に興味、好奇心、オープンな気持ちなどといった態度を探し出してみましょう。知識を使って客観的に分析するのではなく、静かに気持ちを傾けて探求するのです。見つかるものに対する優しさと親しみの感覚をお忘れなく。

🔴N=Not-identify(同一化しない)

ストレス症状を認識し、受け入れ、探求した後、最終段階で現れるのは「これは自分そのものではない」という気づきです。特定の感情や考えなどを持っていても、その感情と自分自身とを同一化しないようにしましょう。自分が感じているものを構成するさまざまな部分は、自分という全体像から見ると、わずかな時間だけ生じた小さな一面に過ぎないという点を意識して、それらと自分自身とを切り離して考えましょう。

自分の心の中に浮かぶ光景や、音、思考などが流れるように変わっていく性質を持っている点に注目しましょう。自分が感じているものを単なる「流れ」として捉えた時に生じる広い視野と、心の平安を感じとりましょう。

ストレスは、私達にバランスの取れた見方を失わせるものです。RAINメソッドは、ものの見方をシフトさせ、自らの内なる力(エゴレジ)と再接続させます。ストレスフルな状態がつくり出すパフォーマンスや健康へのマイナス効果を低減させることができるものです。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

次回はまたエゴレジ関連の話題をご紹介します。

小野寺敦子

エゴレジ研究所代表。心理学博士。目白大学人間学部心理カウンセリング学科教授。同校心理学研究科大学院修士課程教授。同校心理学研究科博士後期課程教授。臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問。
NPO法人こどものくに代表理事。

畑 潮

エゴレジ研究所GM。GCDFキャリアカウンセラー

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP