「空き家」の税金が高くなる?相続登記の義務化や3000万円控除について

山田裕美子
山田税理士事務所 副所長
税理士、相続コンサルタント
EY税理士法人勤務後、独立
税理士歴27年
3世代にわたる感情がもつれた相続を経験したことから、相続専門税理士に。感情や権利関係が込み入った相続が得意。認知症になった親の成年後見や、お一人さまの相続にも精通。

近年、日本では「空き家」が増加しており、2018年の空き家は全国で約849万戸となり、総住宅数に占める空き家の割合は13.6%でした。
(出典:総務省「平成30年住宅・土地統計調査」)

空き家は地方の問題かと思いきや、東京圏でも一人っ子同士が結婚し、子世代は都心マンションに住み、双方の実家が空き家になってしまうなど問題になっています。神楽坂女子世代では、親が元気なものの施設に入居しご実家が無人になったり、亡くなった後の実家の処分にお悩みの方も多いと思います。

そこで今回は「空き家」にまつわる費用や税金、相続した空き家の譲渡所得税についてみていきたいと思います。

空き家にはどんな問題があるの?

① 樹木の手入れをしないと、近隣の景観を損ない、害獣害虫の原因となり、居住者が不在であることが一目瞭然となり、不法侵入や放火による火災の心配がある。手入れをし、火災保険を掛けるなどの管理をしなければならず、費用がかかる。
② 管理をしない場合、老朽化による建物の倒壊、近年猛威を増している台風など自然災害による構築物の飛散による事故の心配がある。(管理責任は所有者にあります)
③ 固定資産税や都市計画税がかかる。

空き家の固定資産税

これまでは、土地の上に家屋があると固定資産税が1/6に減額されてきました。しかしながらこの仕組みが空き家を増やしているのではないかと問題になり、2020年より、「特定の空き家」※については減免を無くすことになりました。(固定資産税が6倍になります)

「特定の空き家」※の具体例

状態 具体例
倒壊等著しく保安上危険となる恐れのある状態 建物が大きく傾いてる、家に穴が開いている
著しく衛生上有害となる恐れのある状態 悪臭が出ている、ごみの放置などで害虫の問題が発生している
適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態 建物の落書きが大きく、汚れたままになっている。窓ガラスが割れたまま放置されている
その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態 立ち木などの枝が道路の通行を妨げている。不特定多数の者が容易に侵入できる状態で放置されている

空き家の3000万円特別控除

空き家の売却を促進させるため、
被相続人の死亡により空き家になった不動産を相続で取得した相続人は、この空き家を売却した際の譲渡所得から3000万円を控除できる仕組みがあります。

① 適用要件
・相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで
・特例の適用期間である2016年(平成28年)4月1日から2023年(令和5年)12月31日までに譲渡すること
② 相続した家屋の要件
・相続開始の直前において被相続人が一人で居住していたものであること
・1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物であること
・相続時から売却時まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと
・相続により土地及び家屋を取得すること
③ 譲渡する際の要件
・譲渡対価の額の合計額が1億円以下(共有で譲渡する場合には合計額が1億円以下)であること
・耐震リフォーム等により、譲渡時において耐震基準に適合することが証明された家屋の売却であること、又は相続人が家屋を取壊して売却すること

適用要件にある
特例の適用期間である2016年(平成28年)4月1日から2023年(令和5年)12月31日までに譲渡すること
が重要ですので、該当する方は早めに動かれることをお勧めいたします。

相続登記の義務化

2024年4月1日から相続登記が義務化されます。
今までは土地を相続しても、登記代や手間がかかるという理由で、登記しない方もいらっしゃいました。そのため日本では所有者不明の土地が増え、2016年には約410万ha(九州本島より大きく)となり、2020年には約720万ha(北海道より少し小さいくらい)となっています。面倒だからと登記をしないでいると、子供や孫などの世代になると相続人が増え、解決するのにさらに多くの時間と費用が掛かり、所有者不明土地は増加する一途をたどっています。

このため相続登記が義務化されることになりました。

① 適用要件
相続の開始及び所有権を取得したと知った日から3年以内
(3年以内に相続登記をしない場合は10万円以下の過料の対象)
② 適用範囲不動産
法改正後に相続したものだけでなく、既に所有し、未登記の不動産も義務化の対象

空き家の活用方法

神楽坂女子世代は、親が資産を管理しきれなくなっている方も多いと思います。
今回は空き家を保有していることのコスト、売却した場合の譲渡所得税の特例、相続登記義務化についてお話ししてきましたが、不動産は活用することもできます。

実家をリフォームして賃貸したり、新しくアパートを建てて経営なさる方もいらっしゃいます。売却して資金化し子供同士で分けるのも良いですが、現金をもらっても優良な投資先を探すのも骨が折れます。また、今後もし通貨の価値が下がると予想するのであれば、現物資産の価値は相対的高くなります。

不動産は面倒なことも多いですが、利益を生む資産でもあります。
総合的考えて、ご家族の皆様にとって、より良い選択ができるといいですね。

プロフィール

EY税理士法人に勤務後、税理士事務所を開業。税理士歴27年。
のべ5000案件以上の会社や個人のお客様の税務問題に関わる。
結婚、出産、仕事と子育ての両立を経て、相続に特化。穏やかな方法で相続の諸問題を解決する税理士として、他士業からの信頼も厚く、全国から相談を受けている。

著書
「会計人12人のアドバイス」清文社
「MBAエッセンシャルズ」東洋経済新報社

早稲田大学オープンカレッジ講師
立教大学講師
東京都税務相談員
商工会議所税務相談員       歴任

ブログ   https://mirai-souzou-souzoku.com/
YouTube  https://www.youtube.com/channel/UCFCb8rOCU9UUWNKGNupzpCQ

 

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP