相続税申告の前に! 忘れると怖い準確定申告

山田裕美子
山田税理士事務所 副所長
税理士、相続コンサルタント
EY税理士法人勤務後、独立
税理士歴27年
3世代にわたる感情がもつれた相続を経験したことから、相続専門税理士に。感情や権利関係が込み入った相続が得意。認知症になった親の成年後見や、お一人さまの相続にも精通。

亡くなった方の代わりに相続人がする確定申告を「準確定申告」と言います。
確定申告をしたことがある方は想像がつくと思いますが、必要書類収集には時間がかかります。申告期限は4ヶ月なのに遅れると加算税がかかるため、早めに取り掛かることが重要です。

「確定申告なんてやったことがない」という方も多いですし、どこから手を付けていいのか、、、という方もいらっしゃるでしょう。そこで今回は申告期限、必要書類、納税や還付の受け方についてご説明しようと思います。

「準確定申告」が必要な方

① 事業所得・不動産所得がある場合
自営業・フリーランスなどで事業所得があったり、アパートや中駐車場など不動産所得がある場合には、多くのケースにおいて準確定申告が必要です。事業所得や不動産所得(売上から経費を引いたもの)が48万円以上あれば準確定申告の義務が生じることになります。

② 2,000万円を超える給与がある場合
会社から支払われる給与は基本的に会社の年末調整で所得税が計算されるため、確定申告は必要ありませんが、収入が2,000万円を超える場合には必要となります。

③ 複数企業から給料がある場合
会社から給料・退職所得をもらっているほかに、他の会社から給料をもらっている場合、準確定申告が必要です。また20万円を超える額の副業の収入がある場合にも申告することになります。

④ 公的年金が400万円を超える場合
源泉徴収の対象である公的年金の収入が400万円を超える場合には、準確定申告が必要です。また400万円以下でも「公的年金等に係る雑所得以外の所得」が20万円以上ある場合にも申告しなければなりません。生命保険などの満期金や一時金を70万円を超えて受け取っている場合がこれにあたります。

⑤ 給与・退職金以外で20万円を超える収入がある場合
副業などで20万円を超える所得(売上から経費を引いた金額)がある場合、準確定申告が必要になります。

準確定申告の申告期限

通常の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得について翌年の2月16日から3月15日の間に申告を行います。しかし年の途中で亡くなった場合は、1月1日から死亡日までの収入について、亡くなったことを知った日から4ヵ月以内に申告しなければなりません。

申告義務者

準確定申告の申告は「相続人全員が行う」と定められており、相続人が書類に連署し押印することになっています。また、他の相続人等の氏名を付記して各人が別々に提出することもできます。この場合、当該申告書を提出した相続人等は、他の相続人等に申告した内容を通知しなければならないことになっています。

確定申告に必要な資料

① 事業や不動産所得の収支計算書
毎年申告なさっている方であれば、確定申告の「控」が残っていると思うので、「控」を探し、そこに添付されている収支計算書を参考に収支を出します。もし見つからない場合、関与している税理士に尋ねるか、税理士がいない場合、税務署で過年度の申告書を閲覧、コピーすることもできます。

② 被相続人の源泉徴収票
給与や副業収入を支払う会社から交付されるもの

③ 被相続人の控除証明書
民間の生命保険・地震保険の支払証明書
年金・介護保険・健康保険の支払証明書

④ 被相続人の医療費の領収書
医療費控除の対象となるのは、死亡の日までに被相続人が支払った医療費で、死亡後に相続人等が支払ったものを被相続人の準確定申告において医療費控除の対象に含めることはできません。しかし死亡後に支払った医療費は相続税計算の時に債務として引くことが出来ます。

申告等の方法

① 相続人の代表を決定する
相続人が複数いる場合、相続人全員に連署によってまとめて準確定申告をする方法と、相続人一人ひとりが個別に準確定申告をする方法のどちらかを選べます。連署で行う場合は代表者を選び、代表者に必要書類の作成を委任します。
相続人がそれぞれ準確定申告を行う場合は、一人ひとりが必要書類を準備して申告書を作成しなければなりません。またそれぞれの内容を統一しないと、税務署からお尋ねが来ます。準確定申告は短期間で行わなければならないので、バラバラに申告するより、代表者を選出したほうがスムーズです。

②作成するもの
・準確定申告書
給与などの金額を記載し、税額を計算した申告書

・死亡した者の所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表
相続人等の氏名、住所、被相続人との続柄、マイナンバー、還付される税金の振込口座等を記載したもの。また添付書類としてマイナンバーカードや本人確認書類の写しが必要です。もし他の相続人にマイナンバーを知られたくないという場合は、①で説明した、相続人一人ひとりが個別に準確定申告を選択することになります。

・委任状
還付金の受領を相続人の代表者等に委任する場合には、準確定申告書の付表とは別に、還付金の受領に関する委任状が必要となります。

納税

納付金額がある場合、申告書提出期限内に納税も行います。
納税金額は本来亡くなった方が払う税金なので、相続財産から引くことが出来ます。逆に還付があった場合は相続財産に加える必要があります。

以上、準確定申告についてみてまいりました。
税金系のHPは「税金の話は四十九日の頃に」と書いてあることが多いので、ゆっくりしていると間に合わなくなってしまいます。準確定申告が必要な方や、財産が多い方、相続人に認知症の方がいる場合、相続人間での合意形成が難しそうな場合は、お葬式が終わった段階で税理士に相談することをお勧めいたします。

 

プロフィール

EY税理士法人に勤務後、税理士事務所を開業。税理士歴27年。
のべ5000案件以上の会社や個人のお客様の税務問題に関わる。
結婚、出産、仕事と子育ての両立を経て、相続に特化。穏やかな方法で相続の諸問題を解決する税理士として、他士業からの信頼も厚く、全国から相談を受けている。

著書
「会計人12人のアドバイス」清文社
「MBAエッセンシャルズ」東洋経済新報社

早稲田大学オープンカレッジ講師
立教大学講師
東京都税務相談員
商工会議所税務相談員       歴任

ブログ   https://mirai-souzou-souzoku.com/
YouTube  https://www.youtube.com/channel/UCFCb8rOCU9UUWNKGNupzpCQ

 

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