スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
最近は「radiko」ができて、PCやスマートフォンでラジオを聴くことはすっかり当たり前になり、リモートワークの増加もあって、ラジオが再注目されているそうです。ラジオの最大の特性である「音」「聴覚のみへの訴求」は、リスナーの気持ちにどんな影響を与えているのか、今回はラジオ音声の心理的効果についてのお話です。
脳波計測でリスナーの感情を可視化
ラジオが人の感情に与える影響を調査した結果がウェブ電通報に紹介(2022/8)されています。
調査したのは電通サイエンスジャム社で、20〜40代男女30名が対象。同社が保有する「脳波測定による感性把握技術」を活用した感性評価システム(簡易型脳波計)を使用。タスクを実施しながらリアルタイムに脳波データから感性を把握できるとのこと。
被験者には無音状態とラジオを聴きながらの状態で、PCでタイピングを行ってもらっています。その結果、ながら作業のほうがストレスが低く、リラックスしている状態ということがわかりました。また、有意差はなかったのですが、ながら作業のほうが集中度とワクワク度が高かったようです。
もう一つ、面白い結果があります。
耳から聴くCMで、声優さんの声を活用した2種のCMの比較です。男性の声優さんのみが出演しているものと、男女の声優さんが出演しているものです。どちらのCMでも、男性被験者より女性被験者のほうが好意度とストレス度が高く出ています。
過去の研究で「記憶に残るためには刺激が必要となることから、ストレス度が上がる」というものがあります。女性のリスナーに対しては、声優さんのように声に特徴がある話し手を起用したCMのほうが心に残りやすい可能性が見えてきたと言えるようです。
これらの調査結果から、「音」と一言で言っても、伝え方、タイミング、話す人によって、リスナー側の感じ方も大きく変わることがわかります。
相手に与える印象は「声」が4割
アメリカの心理学者であるアルバート・メラビアン博士の研究をまとめた「メラビアンの法則」によると、話し手が聞き手に与える印象は、「外見(しぐさ・表情)」が約55%、「声の質、大きさ、テンポ」が38%、「言葉の内容」が7%とされています。
注目したいのは、約4割を「声」が占めているということ。それほど声は人の印象を大きく左右するようです。
村松由美子氏(一般社団法人感動ヴォイス協会代表理事)は、次のように解説されています。
最近の報告によると、私たちの話し言葉のうち、「音声」は「言語」より先に脳の大脳辺縁系に到達することがわかりました。どういうことかというと、先に入力された声の印象が、後から入力される言語の受け止め方に影響を与えるということなのです。
大脳辺縁系は、食欲・性欲・睡眠欲などの「本能」を司ります。さらに、入ってきた情報に対して「好き・嫌い」「快・不快」といった感情のレッテルを貼ります。
たとえば、入ってきた音声に対して、大脳辺縁系が「わぁ、よく響くいい声だなぁ」という「好き/快」のレッテルを貼ると、聞き手の脳内では快楽物質ドーパミンなどのホルモンが分泌されます。そのため、聞き手はうっとりした気持ちになり、「この人の言うことを聞いているとワクワクするな〜。ということは、きっと面白い話をしているに違いない!」と認識します。
逆に、入ってきた音声に対して「うーん、聞きづらい。嫌な声だなぁ……」という「嫌い/不快」のレッテルを貼ると、聞き手の脳内では怒りのホルモンであるノルアドレナリンが分泌されます。そのため、「聞いているとイライラする。ということは、つまらない話なんだろうな」と認識します。つまり、声によって聞き手に与える感情や、話の内容の受け止め方まで変えてしまうのです。
脳番地とラジオの聴覚情報の伝達経路図
ラジオは脳に効く?
『ラジオは脳にきく――頭脳を鍛える生活術』(東洋経済新報社)などの著書もある脳神経外科医の板倉徹先生(和歌山県立医科大学名誉教授)によると—
ラジオは情報が音声だけで、映像がありません。そのため、音を聞いたら、頭の中でさまざまなことを想像しなければなりません。いわゆる「場面想像」という働きです。この働きが、脳をより一層活性化させると考えられます。
光トポグラフィの写真を分析すると、ラジオニュースを聞いているときに、創造性などをつかさどる「前頭前野」と呼ばれるところがよく活性化されていることがわかります(光トポグラフィとは、近赤外光を使用して前頭葉の血流量の変化パターンを可視化する検査)。
※ラジオニュースを聞いているときの光トポグラフィ写真。赤い部分(前頭前野)が活性化している
音声コンテンツの心理的影響
MUSIC396.COMのサイトには、音声コンテンツの心理的影響が述べられいます。
✔ 感情的な影響
ラジオ放送の音声コンテンツは、感情的な反応を引き出す強力なツールです。大好きなラジオ司会者の心地よい声、おなじみの歌の心を揺さぶるメロディー、またはラジオ ドラマのサスペンスに満ちた物語など、これらの要素はリスナーの感情状態に大きな影響を与える可能性があります。研究によると、特に音楽には、テンポやメロディーに応じて、懐かしさを呼び起こし、気分を高揚させ、さらにはリラックスや興奮を引き起こす力があることがわかっています。
さらに、ニュースレポートやトークショーなど、ラジオでの話の内容のトーンや伝え方によって、感情的な雰囲気が大きく左右される可能性があります。情報の提示方法と声の抑揚の使用は、コンテンツの信頼性の認識と、それが聴衆に引き起こす感情的な反応に影響を与える可能性があります。
✔ 認知的影響
感情的な反応を超えて、ラジオ放送の音声コンテンツには認知的な意味もあります。魅力的なストーリーテリング、示唆に富むディスカッション、有益なプログラムは、批判的思考、想像力、共感などの認知プロセスを刺激します。ラジオ コンテンツによって呼び起こされる心的イメージは、リスナーを別の世界に連れて行ったり、記憶を呼び起こしたり、新しい視点を考えるよう促したりすることがあります。
さらに、言語レッスン、科学的説明、歴史的物語などの教育コンテンツの送信は、リスナーの認知発達や知識獲得に直接影響を与える可能性があります。ラジオ放送は聴覚媒体を活用することで、独特で影響力のある方法で認知機能に働きかけることができます。
✔メンタルヘルスへの影響
ラジオ放送における音声コンテンツの心理的影響は、精神衛生上の考慮事項にも及びます。多くの人にとって、ラジオは交友関係、慰め、社会的つながりの源として機能します。ラジオの音声の親しみやすさと、リスナーの参加によって育まれるコミュニティ感は、孤独感を軽減し、帰属意識を与えることができます。
さらに、ラジオ コンテンツは精神的なサポートとして機能し、困難に直面しているリスナーに指導や励ましを与えることができます。メンタルヘルスの意識に焦点を当てた音楽療法プログラムやラジオ番組は、心理的問題の偏見をなくし、幸福を促進するのに貢献します。
一方で、ラジオで悲惨なニュースや否定的な内容を常に浴び続けると、精神的健康に悪影響を与える可能性があります。放送局は、コンテンツがリスナーの精神的健康に及ぼす潜在的な影響に留意し、デリケートなトピックを扱う際にサポートのためのリソースを提供することが不可欠です。
以上、エゴレジ研究所からラジオ音声の心理的効果についてご紹介しました。音や音声が人々の心と行動に及ぼす影響を研究する学問が音響心理学です。音響心理学を活用することで、人々の心理的反応を理解し、心理的健康を維持するための効果的な方法を提供します。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
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代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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