スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。 エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。 |
一般的に「前向きになれば元気が出る」と考えられていますが、行き過ぎたポジティブ思考にはリスクがあることや、ポジティブ思考はどんな人にもプラスの効果があるわけではないということはあまり知られていません。人によってはポジティブ思考に変えたことで、逆にストレスや不安が生まれて疲れてしまう、というような逆効果が出てしまうことがあります。そこで今回は、ポジティブ思考のワナについてのお話です。
目次
「ポリアンナ症候群」というリスク
ポジティブ思考が強すぎる人は、雑多さや曖昧さを無視して、白黒はっきりさせて考えてしまいがち。「ポジティブ=善、ネガティブ=悪」という極端な二元論に陥り、現実を歪んで認識していると言えます。「オール・オア・ナッシング」は一種の認知の歪みで、完璧主義な人にもこの傾向が見られます。
ポリアンナ症候群は、直面した問題に含まれる微細な良い面だけを見て負の側面から目を逸らすことにより、現実逃避的な自己満足に陥る心的症状のことです。
アメリカの小説家エレナ・ホグマン・ポーターが1913年に発表した子ども向けの小説「Pollyanna」(少女ポリアンナ)に由来してつけられた症状名です。
主人公が超前向きな少女だったことから、ポジティブすぎて問題のある精神状態を「ポリアンナ症候群」と呼ぶようになりました。
◆「ポリアンナ症候群」3つの特徴
1 )「良いこと探し」に終始して問題を解決しない
少々極端な例になりますが、例えば「家の電気系統が全て壊れてしまった」と考えてみましょう。 明かりも付かず、電気器具は一切使えない…不便極まりなく、生活が快適に送れない状態ですよね。 ところが「ポリアンナ症候群」の人の場合、ここで「テレビを観なくなって家族の会話が増えた」「洗濯機を使わないからエコロジーになる」という「良い側面」を探しだしてくるわけです。
一時的にはそのポジティブさは「挫けずにエライ」と捉えられるかもしれません。 しかしポリアンナ症候群の人の場合、その「良い側面」で満足をしてしまい、「電気系統を直す」というそもそもの問題解決に取り組まないのです。
ポリアンナ症候群の一見すると楽天的な姿勢とは、「現実を直視できない」という現実逃避の現れなのです。
2 )「なんとかなる」と対策をしない
ポリアンナ症候群の人は、自分に対する「根拠のない自信」を持っています。 特に過去に運の良さや土壇場での集中力等で成功した体験があると、「次もきっと大丈夫」と考え問題に対する対策を練ろうとしません。
また両親が「才能がある」「やればできる」と過度な賞賛を与え続けてきたことが影響し、実際と見合わない実力の見積もりを起こしているケースもあります。
3 )「◯◯よりはマシ」と相対比較するクセがある
常に現状よりも悪い状況を考え、「それよりは今の方が良い」と現状を肯定しようとするのも、ポリアンナ症候群の特徴のひとつです。
例えば「今の会社は激務だけれど、盆と正月に休めない人よりはマシだ」と考えたり、配偶者からの不遇に耐えかねる状態であっても「独り者になるよりはマシだろう」と考えたりするわけです。常に比較対象とする悪い状況を考え出しやすく、周囲の「自分より悪い状況にある(と思える)人」を無意識に探していることもあります。
◆「ポリアンナ症候群」から脱却するには?
1 )自分を過信しない
まずは自分を客観視することから始めてみましょう。一所懸命に頑張ってきた、前向きに取り組んできたという「経過」にばかり囚われず、どれだけ「結果」を出してきたかを考えてみることも大切です。
2 )「ポジティブ=良いことだらけ」という考えを捨てる
ポリアンナ症候群の人は、いつも明るく前向きでいる自分を「善である」と捉えがちです。しかし実際には、人は悩み苦しみながら成長をして進んでいくもの。「ポジティブだし、悩んでいないのだから良い」という考えをまずは一旦捨ててみましょう。
3 )行動を起こしているかを確認する
現状の課題・問題を書き出し、その問題に対する「対策行動」を考えてみましょう。問題解決に対する行動を思いつくには、多少時間がかかるかもしれません。この時にも悩み、苦しむことを回避せず、正面から問題に取り組んでみることが大切です。
ポジティブ思考のワナ
世の中には楽観的で「当たって砕けろ」の精神で成功する人もいれば、「石橋を叩いて渡る」のようにとても慎重な姿勢で挑戦して成功を手にする人もいます。
ポジティブ思考で過度なストレスや不安を抱えて「自分はダメな人間なんだ」と自己否定してしまうと、成功する確率も低くなってしまいます。
ポジティブ思考で不安を感じる人は、「すこし慎重になって、最悪の結果にならないように挑戦してみよう」と考え方を変えることで、ポジティブ思考でなくても目標を達成や成功へとつなげることができるようになります。
ポジティブ思考が自分にあってない人の場合、無理に「失敗を恐れず、楽しんで挑戦しよう」と気合を入れると、逆に不安や緊張が増えしまい行動できなくなったり、いいパフォーマンスが出せなくなります。なぜ不安が増えるのかというと、「挑戦することは絶対楽しいとは思えない」とか、「楽しくやろうと思えば思うほど緊張してしまう」と感じてしまうからです。
もちろん、挑戦することを怖がるのはとても自然な反応です。自分の知らない未知の分野に挑戦すれば、当然失敗して時間やお金をロスする事もありますし、それらの損害を避けたいと思うのは、なにも恥ずかしいことではありません。ポジティブ思考そのものは良い思考法であるのですが、自分の性格や考え方にあってない場合は逆効果になり、パフォーマンスを下げる原因になるということを覚えておきましょう。
「防衛的悲観主義」
では、ポジティブ思考ではなくネガティブ思考でいいパフォーマンスを出せる人とはどういう人なのでしょうか。
ネガティブ思考で成功する人は「挑戦を楽しもう」という気持ちではなく「挑戦したら失敗してしまうだろう…」という気持ちの方が強く出ます。
しかし、そこで落ち込んでしまのではなく「じゃあ失敗しないように、どうすればいいかを考えないと…」というように、挑戦の中で起こりうる失敗やトラブルに対しての対応策をしっかり立てます。
対応策が立てられると失敗への不安が減り、結果として挑戦して成功する確率が上がることになります。このような思考を「防衛的悲観主義」と呼びます。
わかりやすくいうと、「極力ミスをしない」事を重視しているので、これもまた成功しやすい思考となります。
例えば、マラソンの場合、大会を楽しもうと前向きに考えても、「途中で足がつったらどうしよう」「オーバーペースになって中盤で失速したらどうしよう」という悩みのタネが出てきたとします。
その悩みのタネから芽が出ないように、「マラソン中に塩分補給ができるように、ポケットに塩飴を入れておく」「オーバーペースにならないように序盤はつっこまないようにする」などの対策を立てて、大会本番までに余計な緊張をしないようにいい調子を保つことができます。
また、防衛的悲観主義の人は失敗そのものを予見しているので、実際に失敗した場面でもパニックになったり調子を狂わされることを防ぐこともできます。
挑戦する際に、あらかじめ失敗に対するイメージトレーニングが自然とできているので、立ち直りも早いというわけです。
以上、エゴレジ研究所から、ポジティブ思考のワナについてご紹介しました。実は何かで挑戦して成功するためにはポジティブ思考であるか、ネガティブ思考であるかはさほど重要ではありません。大切なのは、挑戦する人が「ポジティブ思考で不安が少ない」のか「ネガティブ思考で不安が少ない」のかという点です。「もしかしてポリアンナ症候群かも…」と思ったら、まずは「自分は今、現実から逃げていないか?」と客観的に振り返ってみましょう。
エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。
あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/
<プロフィール>
代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授 |
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GM 畑 潮/心理学博士 GCDFキャリアカウンセラー 健康リズムカウンセラー |
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