心の健康とタンパク質

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

心の健康にタンパク質が関係する――そう言われても、ピンとこないかもしれませんが、実は大いに関係があります。タンパク質は心の状態に大きく関わる神経伝達物質の原料にもなっているからです。そこで今回は、心の健康に関係するタンパク質についてのお話です。

タンパク質の役割

タンパク質を表す英語「Protein(プロテイン)」は、ギリシャ語の「第一となるもの」に由来しています。つまり、タンパク質は生命活動の「第一人者」と言っても過言ではなく、不足している場合は、まず一番に増やす必要がある栄養素です。

筋肉や骨、皮膚、臓器、髪の毛などはタンパク質から作られていることは、みなさんもご存知かと思いますが、それだけでなく、血液、代謝酵素、消化酵素、ホルモン、免疫にかかわる抗体などもタンパク質を原料にしています。

血液中で栄養素を運んだり、体内で化学反応の触媒の役目をする代謝酵素となったり、生体のホメオスタシス(恒常性)を維持するホルモン、骨組みを作る繊維状タンパク質になるなど、身体の中で様々な役割を担っています。

このように基本的な生命維持に欠かすことのできないタンパク質ですが、なんと心の健康にも直接的に影響しています。
私たちの脳の6割はタンパク質で構成されていて、そのタンパク質は心の状態に大きく関わる神経伝達物質の原料にもなっています。

神経伝達物質とは、脳内において神経細胞と神経細胞の間の情報伝達を担う物質のことで、心を落ち着かせる働きのある「セロトニン」、喜びを感じさせる「ドーパミン」などの神経伝達物質はタンパク質が足りないと十分に作られません。「抑うつ気分」は、上記の神経伝達物質が不足することで起こりますが、その原因が、実は食事の面(タンパク質不足)にあるということも少なくありません。

松倉知之先生(松倉クリニック表参道 院長)は、
「タンパク質が非常に大事。カルシウムやビタミンC、胃酸やペプシノーゲンの力を借りてタンパク質はアミノ酸に変換される。さらにビタミンB群や鉄分などと結びついて、睡眠に関わるメラトニン、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニン、精神安定に働くGABA、やる気が出るドーパミンなどに変換されます。つまり大本のタンパク質と酵素が不足していたら、メンタルに大きく影響します」と指摘されています。

タンパク質の成分

タンパク質は、アミノ酸が鎖状に多数連結してできた高分子化合物で、生物の重要な構成成分の一つです。
ヒトの身体を作っているタンパク質は、20種類のアミノ酸から構成されています。
たった20種類のアミノ酸が、DNA(遺伝子)に従い、様々な配列(種類、数、順序)で連結することで、体内に必要なタンパク質を約10万種類も作り出しているのです。さらに、この20種類のアミノ酸は、9種類の必須アミノ酸と11種類の非必須アミノ酸に分かれています。

非必須アミノ酸は、体内で他のアミノ酸から合成することができますが、必須アミノ酸は体内での合成ができません。そのため、必須アミノ酸(9種類)は、必ず食べ物から摂取する必要があります。

脳内神経伝達物質は食べ物(栄養素)を材料に直接脳内で生成されますので、食事の内容が脳と心の健康に直接影響しているということが理解できます。

働く女性のタンパク質摂取量

そこで年代別のタンパク質の平均摂取量を見ると、男性はほとんどの年代で目標量の下限に達しておらず、女性は20〜30代や50代での不足が目立ちます。

日本人の食事摂取基準の良好な栄養状態を維持するのに十分な量を示す『目標量』は、性別、年齢、身体活動レベルによって異なり、例えば、デスクワークなどで身体活動レベルが普通の女性の1日のタンパク質摂取目標量は、18〜29歳で65〜100g、30〜49歳で67〜103g、50〜64歳で68〜98gですから、平均摂取量程度では足りないわけです。

出典:たんぱく質の平均摂取量は厚生労働省「国民健康・栄養調査」、目標量は厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」

東北大学名誉教授で、山形県立保健医療大学理事長・学長の上月正博先生は、
「特に、朝食を抜いている人や、卵、肉、魚、大豆製品、乳製品などタンパク質が多い食品を朝食にとっていない人は、タンパク質が不足している可能性が高いと思われます。タンパク質はためておけず、夕食などにまとめて大量にとっても、利用しきれない分は排出されてしまうからです。タンパク質不足を防ぎ、効率良く筋肉を増やしたり体内のタンパク質を働かせたりするためにも、食事は抜いたりせず、朝昼夕毎食20〜30gを目安にタンパク質をとることが重要です」と強調されています。さらに、
「朝食にたんぱく質が豊富な食品をとるようにするだけで、ほとんどの人はたんぱく質不足が解消されるはずです。ただし、昼食がそば、うどん、パスタなど麺類中心の人もたんぱく質不足に陥りやすい面があります。麺類を食べる場合は具に卵、肉、魚介類が入っているものにしたり、おやつにサラダチキンやチーズ、ギリシャヨーグルトを食べたりするなど、たんぱく質を積極的にとるように心がけましょう」とアドバイスされています。

心が弱りがちな人はタンパク質が不足していることが多い傾向にあります。1食あたり手のひら全体に乗るくらいのボリュームのタンパク質を摂りましょう。また、野菜や海藻、きのこ類は、生なら1食あたり両手のひらに乗るくらいたっぷり摂るのが理想的。主食のイチオシは玄米。ボリュームは茶碗に軽めの1杯が目安です。

タンパク質の「種類」も大切です。肉だけ、魚だけ、大豆製品だけ、という偏った種類のタンパク質ばかりを摂り続けると、栄養も偏ってしまい、せっかくの栄養素が体に吸収されにくくなります。また、タンパク質を急にたくさん摂って、お腹がゆるくなったり、お腹が張ったりした時は、消化不良のサイン。
「これが理想量だから」と食べる量を一気に増やすのではなく、30回以上嚙む、細かく刻む、消化を助ける食品と組み合わせる、といった方法を取り入れながら、少しずつ量を増やしていきましょう。

タンパク質には動物性(肉・魚・卵)と植物性(大豆製品)がありますが、それぞれに含まれる栄養素は当然違います。肉なら鶏・豚・牛・ラムなどを、魚は青魚・白身魚・赤身魚を日によってローテーションするなどして、いろいろな種類のタンパク質と栄養素をまんべんなく摂取するよう心がけましょう。

以上、エゴレジ研究所から、心の健康に関係するタンパク質についてご紹介しました。「あれ、なんかいつもの調子と違うな‥?」と不調を感じたときは、普段の食事で自分が何を口にしているか見直してみてください。食生活は、ただ空腹を満たすため、体の機能維持のために何かを口に入れればよい、というものではありません。タンパク質以外にもたくさんの栄養素が私たちの心の働きに大きく関係しています。心の健康のためにも、食生活が大切であることを、ぜひ知っておいてほしいと思います。

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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