マスク着用の化粧行動と心理的影響

スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

5月には「感染症法」上の新型コロナの位置付けが季節性のインフルエンザと同じ「5類」に引き下げられます。加えて3月13日以降は屋内外問わず「マスクの着用は個人の判断」になります。コロナ禍での約3年、マスクの下は化粧をしないという人も少なくありません。そこで今回は、マスク着用の化粧行動の変化や心理的影響についてのお話です。

マスクによる化粧行動の変化

コロナ禍中のマスク着用による化粧行動の変化については、20代から60代の成人女性579名を対象とした鈴木・矢澤 (2021)の研究があります。
そこでは、マスク着用によって化粧行動が変化し、コロナ禍前と比較して、部分的にまたは全体的にメイクが減じていることが確認されています。

それに伴い、「やる気を引き起こしてくれる」「こころが引き締まる」「気合いが入る」「ほっとできる」「リラックスできる」「リフレッシュできる」といったメイク感情や「やる気を引き起こしてくれる」「こころが引き締まる」「気合いが入る」「ほっとできる」「リラックスできる」「リフレッシュできる」といったスキンケア感情がコロナ禍前と比べて減少。そうしたポジティブな感情の低下によって、化粧の満足度が低下し最終的には生活満足感が低下していることが確認されています。

メイクが「しっくりこない」違和感

総合化粧品メーカーの株式会社伊勢半が、2022年12月に実施した20~60代の女性605名を対象とした「マスク着用緩和による化粧品(メイク)の意向」についての調査では、メイクに関して「しっくりこない」違和感に注目しています。

この調査では、愛用している化粧品でもメイクの仕上がりによっては「合わない/しっくりこない」と感じるかという設問で、65%の人が「よくある/たまにある」と回答し、2人に1人は日によってメイクの感じ方が変わるということが分かりました。

違和感の理由の一つ 「顔の変化」
コロナ禍前に比べて自身の顔について変化を感じると回答した方は全体の56%で、コロナ禍におけるこの3年間で半数以上が顔に変化を感じていると回答しました。
特に変化を感じる部位として、最も多かったのは「口元」で142名(42%)という結果になりました。

化粧心理学の阿部先生(東北大学大学院文学研究科教授)によれば、

「コロナ禍で他人の顔を見る機会が減りましたが、自分の顔はいままでと変わらず毎日鏡で見ます。自分の顔の変化に気づいた方はきっと自分への関心が高く、鏡に映ったご自身の顔をよく見ていたので、過去の自分の顔との違いが際立ったのかもしれません。また、マスクで口元を隠す機会が多くなったことで、逆に隠される口元に注意が集まったということもあるかもしれません」とのこと。

コロナ収束後のマスク着用意向

◆NHK世論調査

NHKは、昨年(2022)11月1日から12月6日にかけて全国の18歳以上3600人を対象に郵送法で世論調査を行い、62.9%にあたる2266人から回答を得ています。

感染拡大が収束して屋内や人混みでマスク着用が求められなくなった場合にどうするか訪ねたところ、
◇「感染拡大が起きる前のように外す」と回答した人が23%、
◇「基本的には外すが感染拡大前よりは着ける機会を多くする」が47%、
◇「できるだけ着けたままにする」が27%でした。

男女別にみると男性は
◇「基本的には外すが感染拡大前よりは着ける機会を多くする」が最も多く45%、
◇「感染拡大が起きる前のように外す」が30%、
◇「できるだけ着けたままにする」が23%でした。

女性では
◇「基本的には外すが感染拡大前よりは着ける機会を多くする」が最も多く48%、
◇「できるだけ着けたままにする」が31%、
◇「感染拡大が起きる前のように外す」が16%でした。

▼「着ける機会を多くする」「できるだけ着けたままにする」と回答した人にその理由を訪ねたところ、
◇「感染対策など衛生上の理由から」が90%、
◇「素顔をさらしたくないなど見た目の理由から」が7%でした。

◆第一三共ヘルスケアの調査

第一三共ヘルスケア(東京都中央区)が20~60代の男女600人を対象に実施した「理想の肌に関する意識調査」(2022年9月)でも同じような傾向がうかがえます。

外出時におけるマスク着用意向を尋ねたところ、約8割が「マスク着用意向がある」と回答。女性のマスク着用目的では「化粧をしていないことを隠すことができる」と回答した人が多いことが分かりました。

マスクの心理的効果

先の「マスク着用による化粧行動の変化」についての研究を行った矢澤美香子先生(武蔵野大学人間科学部教授)は、マスク生活が長引いたことが新たな感情を生んでいると話します。

「マスクをしていることを含めた自分自身という自己像が心理的な安心感としてできあがってしまっています。そのためマスクを外すことはバリアーを取るような感じで抵抗感が生まれているのではないでしょうか」。

またカナダのレスブリッジ大学の研究によれば、顔の半分を隠すと魅力が大幅にアップするそうです。それどころか顔については見えない範囲が多いほど魅力的に見えるらしいのです。実験で隠したのは顔の左右で、マスクのように上下ではありませんが、それでも同じように魅力が増すだろうという報道がありました。

人は顔に注意を向ける傾向があり、顔の一部が見えない状況であれば脳が補正してより美しい顔を作り出してしまうといった説もあるようです。いずれにしてもマスクをしていれば、「素顔」よりも美しく見える可能性がありそうです。これもマスクの心理的効果と言えるのかもしれません。

●マスクをつける理由と心理
小顔効果 /コンプレックスを隠し可愛く見える /ニキビ対策 /すっぴん隠し /乾燥防止 /心理的な安心感 /対人恐怖症対策 /人との壁 /口臭対策 /紫外線対策 /寒さ対策 /ウイルス対策・花粉症対策

とはいえ、上記のような理由から本人も気がつかない内にマスク依存症になってしまいっている方もいるようなので、注意も必要です。

以上、エゴレジ研究所からマスク着用の化粧行動の変化や心理的影響についてご紹介しました。コロナ禍中のメイク行動の減少は比較的急に生じた変化であり、感染拡大のために求められたマスク着用によって物理的に化粧の制限が強いられた結果ともいえます。化粧はポジティブな機能を有します。化粧心理学の阿部先生は「化粧は日常生活に組み込まれた感情調整装置である」とも指摘されています。マスクの着用緩和が化粧本来の機能に結びつくことが望まれます。

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

 

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

 

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