秋の夜長に「読書」のススメ

代表 小野寺敦子/ 心理学博士

目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
同校 心理学研究科大学院修士課程
スレスフルな社会生活に果敢に立ち向かっている現代人は誰もがメゲたり、凹んだりします。その理由もメカニズムもさまざまです。 「エゴ・レジリエンス」とは、日々のストレスをうまく調整して元気な自分を維持する力、誰もが持っているパーソナリティの弾力的な力です。「エゴ・レジリエンス」を高めることで自我のバランスをとる力が強化され、メゲても凹んでも、すぐに立ち直ることができるのです。
エゴレジ研究所の小野寺と畑が、「エゴ・レジリエンス」関連のお役立ち情報を提供し、あなたの元気をサポートします。

GM 畑 潮/心理学博士

秋の夜長とは、秋が深まるにつれて夜が長くなることを意味しています。秋の深まりを感じる秋分の9月23日頃から立冬(11月7日頃)までの間が「秋の夜長」と表現するようです。ただ季節の変わり目である秋は、なにかと心身の不調を感じやすい時期でもあるといえます。そこで今回は、秋の夜長とストレス解消にもなる〝読書〟についてのお話です。

最も疲労を感じる季節

1年で最も疲れを感じるのは10〜12月という人が最多というデータがあります。確かに年末に向けて仕事が忙しくなってくるし、気温の低下や乾燥で風邪もひきやすくなります。感染予防に加え、猛暑のダメージが蓄積された今年は、例年以上に注意が必要かもしれません。

暑さが落ち着いたころからなんとなくダルいとか疲れを感じるというのは、気温差によって食欲や体調にも関係する自律神経が乱れやすいせいと言われています。自律神経が乱れると心が不安定になり、モヤモヤとした気分が長引いてしまうこともあります。そんな時季はストレスケアを心掛け、心を落ち着かせてリラックスして過ごしたいものです。

ちなみに「読書の秋」という言葉は、「秋は過ごしやすい気候で、ゆっくり読書ができる季節」という意味です。そんな「読書の秋」という慣習は漢詩が関係しているようです。

秋の夜長を有意義に過ごそうと、古代の中国では、「灯火(とうか)親しむべし」という言葉があります。これは、「秋は過ごしやすい季節なので、夜には灯りをともして読書をするのに最適だ」という意味合いです。8世紀、唐時代の中国の詩人、韓愈(かんゆ 768年-824年)が書いた『符読書城南詩(ふ しょを じょうなんに よむ)』という詩に由来しています。

また人間が最も作業効率が上げやすい温度というのが18℃~25℃と言われ、秋の過ごしやすい気候は、ちょうどこの温度帯にもあたります。それゆえ秋の夜長で「読書の秋」なのでしょう。

6分の読書でストレス軽減

読書のリラックス効果は科学的に認められています。英サセックス大学の研究チームは2009年、読書にはストレス解消効果があるとする研究を発表しました。
研究チームは、被験者に対して、運動や試験などストレスがかかる活動をさせた後、ストレスを軽減させると考えられる行動を何種類か行ってもらったところ、

音楽鑑賞が61%、コーヒー・紅茶を飲むことが54%、散歩をすることが42%、ゲームが21%の軽減効果を見せた中、読書は68%とおよそ7割ものひときわ高いストレス軽減効果を持っていることが分かりました。

実験を行ったルイス博士は、「読書に没頭することで、究極のリラックス効果が得られる」とし、本の中の世界に没頭することで、ストレスが和らぐのだと説明されています。つまり、読書がストレス軽減に抜群の効果がある一番の理由は、読書をすることでストレスの原因となる現実のことから気持ちが離れ、本の内容に没頭することができるからです。

人間の脳は、ストレスを受けると扁桃体が興奮し、ネガティブな発想が活発に引き起こされます。しかし、読書によって本の内容に没頭すると、扁桃体の活動が鎮められ、鎮静効果が生まれるのです。

この読書のストレス軽減効果は、「ビブリオセラピー(読書療法)」として実用化されています。ビブリオセラピーとは、牧師で人気エッセイストでもあったサミュエル・マッコード・クローザーズ氏が提唱した、読書による心理療法。自分の状態に適した本を読むことで、行動をよい方向に変えたり苦痛を減らしたりする効果が期待できるそうです。英国では、2013年に薬の代わりに本が処方されるシステムも認可されています。

読書のストレス解消の“コツ”

読書によるストレス解消のメカニズムが分かったところで、それを元に効率良くストレスを解消できるコツを考えてみましょう。
大切にしたいのは、

  • 難しすぎず、興味を持てる本
  • 好きなジャンルの本
  • 小説などの感情移入ができる本

読み解くのに時間のかかる難解な「新聞」や「ビジネス書」などよりも、感情移入のできる「小説」等の方がリラックス効果は高いという研究結果があります。
ただし、一見難解そうな「古典」や「漢詩」なども『読み慣れていて、好き』という人にとってはリラックス効果が高いそうなので、結局「好きなものを読むのがいちばん!」ということでしょう。

「小説が良い」という理由は、物語世界に没頭することで効率よく「現実のストレスを忘れ」、「共感作用を最大化」できるからです。
文字だけから情景や世界を想像し、イメージを広げながら読むことになるので、脳が活性化します。新たなシナプスを発達させ、発想力も増進されるのです。ビジネス書や自己啓発本などを読んでスキルアップを狙いたい、という気持ちもあるかもしれませんが、たまにはそれをすっぱりと忘れることも大切なのです。小説のなかの多くの人間関係に触れることで感受性が豊かになり、対人能力が高まるという効果も期待されますし、今までは触れる機会のなかった様々な知識を得ることのできる貴重な機会にもなります。また、「自分の気持ちの状態に合った本を選ぶ」と本に没頭しやすくなります。

「読書」のさまざま効果

精神科医の樺沢紫苑先生によると、読書には、たかぶった神経を落ち着かせリラックス状態を作り出す効果があるのだそうです。一日の終わりに6分でも読書することで、疲れを癒やし、睡眠の質を高めることも期待できるのです。
本の中に描かれた世界に接する「読書」には様々な効果が挙げられています。

  • 気持ちに悪影響を与えやすいネガティブな思考があれば、読書に集中することでそれにストップをかけることができる
  • 認知機能をほぼ全般に動員するという面からも、理想的知的鍛錬の手段になる
  • 模範的な日本語に接することで、語彙が豊かになるなど、言語能力が向上する
  • 本の内容に感動する……など、感情が刺激されることはそれ自体ポジティブなうえ、他人への共感を増すことにもつながる

読書することは、単に楽しみのひとつ、あるいは新しい知識を得るなど実用面に重点を置かれる方も多いかと思います。この秋は、読書の内面にもたらす効果にも注目することで、これまでとは違う新しい「読書の秋」にしてみてください。

以上、エゴレジ研究所から、秋の夜長とストレス解消にもなる〝読書〟についてご紹介しました。ストレスが溜まってしまうと、仕事も勉強も手につかず、何もかもが嫌になってしまうことがあります。 そんなときには物語の世界へお出かけして、ちょっとだけ現実逃避をしてみてはいかがでしょうか。ストレスフリーに読めるファンタジーやフィクションなどのジャンルがおすすめです。非日常感を楽しめる本なら、心を解き放ってくれることでしょう。秋の夜長は『読書』でストレス解消してみませんか?

 

エゴレジ研究所は,生涯発達心理学,パーソナリティ心理学,ポジティブ心理学の領域からの調査研究の成果を活かし,「エゴ・レジリエンス」をキー・コンセプトとして,いきいきと人生を楽しむことができる社会の実現に貢献することを目指しています。

あなたの元気のアドバイザー「エゴレジ研究所」
https://egoresilabo.com/

<プロフィール>

代表 小野寺敦子/ 心理学博士
目白大学 人間学部心理カウンセリング学科教授
・・・・同校 心理学研究科大学院修士課程教授
・・・・同校 心理学研究科博士後期課程教授
臨床発達心理士・三越伊勢丹アポセカリー顧問
NPO法人フレンズスクエア 代表理事

GM 畑 潮/心理学博士
GCDFキャリアカウンセラー
健康リズムカウンセラー

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